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02

 まずは情報収集だ。

 ここが本当にゲームの世界なのか、それを確かめる必要がある。


『王女エメラダ』がいた場所に落ちているローブを、お借りしますと手を合わせたあと、おもむろに着る。ローブについているフードを被れば、エルフの長い耳がきちんと隠れる。ちょうどよいサイズだった。


 ここがゲームの世界であるならば、この近くに最初の村であるハジ村があるはずだ。ゲームの通りであれば、ハジ村には、ゲームに馴染めるように、初心者プレイヤーが色々な準備をできる村であったはず。なにはともあれ、かつての記憶を頼りにそこまで行ってみることにした。


 周りの景色をひとつひとつ確かめるように確認しながら歩く。前方から男の人が歩いてくるのが見える。おお。これはひとつ挨拶でもして情報を聞き出してみよう。


 まずはすれ違う前に一礼し、それを見た相手も軽く頭を下げる。

 そしてにこやかに挨拶。


 こんにちは。いい天気ですね。


「頭が高いな。地べたを這いずり天を見上げることしかできない糞虫が」


 おっと。心の声と台詞が逆になってしまったね。間違えただけだよ。

 だから何こいつみたいな目で見ないでおくれ。


 町はどちらでしょう。


「糞虫共が傷を嘗めあう不浄の地はどこだ」


 おい!? なんか思った台詞と違う言葉が口から出てくるんですけど!?

 

 え!? なにこれ!? あっなにこの不審者みたいな顔して睨みつけられてるぞ! 弁解しようと声を出そうとしたらすごい速さで走って逃げられた……俺が話そうと思ったことと口から出てくる台詞が違うということか?


 訳が分からず、道の真ん中でぼけっと突っ立っていると、俺に向けて、ごつめの声が飛んでくる。


「おうおうおうそこの旅人さんよぉ! 黙って有り金全部置いていきなぁ!」

「おうおうおうあんちゃんの言う通りにしたほうが身のためだぞぉ」


 二人のいかつい顔をした男二人が、俺の後ろから現れた! 

 げっ! これって山賊とのエンカウントバトルってやつでは!? いくら過去にこのゲームをプレイしていようとも、エルフの初期レベル武器防具なしで、刃物を持った山賊は倒せないのでは!?


「まあいい殺しちまおうぜあんちゃん」

「ああそうだな。死ねぃ!」


 そんなあっさり!? 手に持った剣を振り上げて、山賊の一人が俺に襲い掛かってきた!


 ひいい!

 咄嗟に、腕で頭を守るような体制をとり、恐怖で目を瞑ってしまう。

 

 パキン!

 

 ん?


 確かに剣で腕を斬られたような感触があったのだが、痛みはない。恐る恐る目を開けてみると、山賊の剣が根元から折れており、山賊が目を見開いて驚愕しているのが見て取れた。


「なっ!」

「てめえ一体何を!? くそっ! よくもあんちゃんを!」


 もう一人の山賊が同様に斬りかかってくる。同じ体制で後ずさりしながら、それでも斬りかかられた瞬間には、恐怖で目を瞑ってしまう。


 パキン!


 目を開ければ、そこには先ほどと同様に、折れた剣を握った山賊が、あわわと驚いている。


「なっなんだこいつは!」

「ばっ化け物だぁぁぁ!」


 盗賊たちは一目散に逃げだしていった。

 た、助かった……


 今の状態にかなり混乱している。ハジ村に行く道を引き返し、洞窟へ戻ろうと歩みを進める。何はともあれ、現状分析は必要だ。今、自分がどんな状態なのか、冷静に考えたいのだ。決してテンパってる訳ではない。一旦、一旦落ち着こう。洞窟に戻ってよく考えよう。この世界は、恐ろしく『リアル』なゲーム世界なのだ。


 大丈夫。たかがゲームゲーム……



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