堕ちた先が異世界です。 ※黒歴史
正直、投稿の仕方とか、HJ文庫の作品投稿とか、よくわかりませんが。よろしくお願いします。
「古より伝えられし魔王よ我が望み通り世界を滅ぼすため………」
フードを被った者が薄気味悪い部屋で詠唱らしきもの唱えている。
部屋一面には魔法陣らしき図が描かれている。
「その姿を現せ‼︎‼︎‼︎‼︎」
最後の詠唱を終えたらしく、魔法陣が光はじめた。
真っ暗な世界に一つの光が希望のように灯る。
「プリプリプリプリ………プリ〜ズナア?」
神々しく光る魔法陣から、驚き慌てている一人の少年が現れた。
何が起こったのかわからないのも無理はないだろう。
「あぁ、魔王様よ。よくぞ現れてくれました」
少年は何を言っているのかわからずに頭の上に?マークを浮かべている。突然のことだから当たり前ではあるが……
そんなことを気にせずフードを被った者は焦ったように話を続けた。
「魔王様。想像したより小さいですが………どうかこの世界を支配している神を倒すためにお力をお貸しいただけないでしょうか」
悲しみに囚われたように一言一言思いを込めて発せられた。
「と…唐突に世界を救えと言われてもなぁ」
少年の反応はなぜか落ち着いている。
状況を理解しているのが些か怪しい。
「お願いします。魔王様しかいないのです。どうかお力を………」
神に祈りを捧げるように指を組み上目で少年を眺めている。
「さっきから魔王様、魔王様いってるけど俺は一般人だぞ」
その一言は衝撃的で雷が走るかのごとくあっさりと放たれた。
一気に空気が変わった。
呆気にとられたらしくフードを被った者は黙ったままだ。
「なんか、期待させて悪かったけど、そういうことだから俺を元の世界に戻してくれない?」
続けて言葉の刃が襲う。
もっとものことを言っているのだがなんて慈悲のない言葉だろう。正直、この少年の心情を疑ってしまうほとである。
さきほどの事実で一発koをくらったフードを被った者はさらにアッパーを食らったように地面に手をついて
「もうだめだ」というかのように落ち込んでいる。
それから少しの沈黙の後に落ち着いたのだろうか。
幽霊のさ⚪︎このように地面からヌルッと起き上がり大きく息を吸った。
「すみません。無理です」
あっさりと否定された。
その声はとても小さかったが少年には聞こえていたらしく、驚きのあまり気絶してしまった。
状況を理解して現実に戻ってきたのは数時間後のこと…。
そんな少年の非日常なお話である………。
アニメというのは最高である。
日本では一般常識であろう。
世界に誇れる唯一無二の財宝だ。
俺こと西園寺神太郎は今日もくだらない日常を過ごしていた。
コンビニの時計を見て、焦ったように呟いた。
「やばい、まずいプリプリが始まっているはやく家に帰らないと」
今日は今季始まっての最高アニメである魔法少女プリプリプリズナアの放送日である。
プリプリプリズアとは、少女が魔法の力で悪を倒すアニメである。突如魔法少女に任命されたプリコが変身して人間社会の闇を払っていく爽快感。
そして、何をいっても可愛い服装。
まるで、天使のような羽を生やし、見た目とは裏腹に駆り出される魔法や、戦いの描写はただのヒーローアニメではないことを物語っている。
急いで、カゴにカプメンを入れてレジに駆け込む。
「いらっしゃいやせ〜。…円になりま〜す。」
ポケットから財布を取り出し値段とぴったりにお金を差し出す。
「ちょうどお預かりしま〜す。」
「ありがとうございました〜またお越しくださいませ〜」
店員のやる気のない挨拶をあとにして家に向かって走った。
もちろんオープニングである「プププリズナア〜ン」を歌いながらである。
それが、今日の出来事でありそれが毎日続くと思っていた。
そんなはずだった…………
「起きてください。起きてください」
耳元から誰か優しい声がする。今まで聞いたことのないその声はなぜだか懐かしい気がする
ぼやけた視界からフードを被った少女がうっすらと見える。
視界がぼやけていてしっかり顔がみれなかった。
彼女はなぜだか悲しい顔をしていたように思えた。
慰めようと手を伸ばすが体が動かない。
意識が朦朧とする。
微かに聞こえた少女の声も今は脳の処理が追いつかずわからなかった。
ぼそぼそと呟いた少女は立ち上がった。
その瞬間あたりが光り出した。
少女の背中から懐かしい面影が脳裏をよぎる。そういえば、前もこんなような出来事があったような気がする。
なぜ思い出せないのだろうか。
都合のいいことに、大事なことは忘れてしまう。
どうでも良いことは鮮明に覚えているのに。
視界がだんだんぼやけてきた。
太陽を見るかのように眩しく瞳が焦げるような輝きがあたりを包む。
輝きだしてから数秒。
元の風景に戻りだしてきていた。
家に着いたのだろうか?それともまたあの暗い部屋に着いたのだろうか?
視力がだんだん戻り始めた。
体の自由は効かないが、あたりを見渡せるくらいまで首を動かすことはできた。
と、次の瞬間。
「ええええええええええええええええええええええええ」
全力で叫んだ。
叫ばずにはいられなかったのだ。
数分じーっとしていたが体の痺れもとれ、歩くくらいまでは回復した。
まわりを確認してもう一度地面に寝転がる。
頬に冷たい風があたる。
決心したように勢いよく立ち上がりため息をひとつ。
「なんで。こうなるのぉぉぉぉぉぉぉぉお」
上手くいかないことが当たり前であろうに、その現実を受け止められないのか抗うかのように叫んだ。
先ほどの驚きのあまりで叫んだにも関わらず続けざまに呻いた。
なぜならば…
知らない森に飛ばされたからであるからだ。
この先が過酷なことになるかのように木々が荒々しく揺れた。
「この森広くないか、まったくいい加減に安心して休めるマイホームに帰りたい」
愚痴を言いながら一層と生い茂る森をあてもなく進む。
見た感じただの樹海のように入り組んでるだけであり、モンスターが出て来たり、盗賊に襲われたりなどといったことは何もない。
ただ、退屈であるとともに、食料がないというのが最悪の問題である。どこか、村を探すのが普通だろうか。
異世界に召喚したのならもう少し丁重なおもてなしがあっていいものなのだが…
このおもてなしは予想外だ。
王宮に召喚されてすごいステータスで魔王を倒すのがお決まりなはずなのだが。
魔王として召喚されて、神を倒せだと無茶ではないだろうか…
ましてや、何か特別な力を持ったのでもなく。間違えて召喚されたあたり少し悲しいのが事実である。
自分の運を憎んでいたせいか、森の奥まで来ていることに気がつかなかった。
「貴様何者だ。ここから先は立ち入り禁止だぞ」
突然の警告に先ほどまで考えていたことが、嘘のように洗い流された。
声のする方に顔を向ける。
門番らしき人物が二人、二つの木の柱の前に立ってこちらに槍を向けて来ている。
どうやら、村に着いたのだろうか。
じっとこらえてみたところ耳が尖っているのがわかる。そして何より、服装が想像していたのと同じで手作り感のある神秘的な様がとってわかる。
「エルフか!」
納得したかのうように、口に出して相手の反応を伺った。もとより異世界である以上、亜人族がいてもおかしくないのだ。
むしろいない方が可笑しいだろう。
そして、お決まりといってはお決まりだが、話は通じるようだ。
翻訳コンニャクを使わなくてもいいのは便利なものだ。まあ、実際そんなものはないのだが……。
「話を聞いていないのか?貴様は何者だといっている。」
怒りに満ちたその言葉はこの状況の空気を一層重くしていった。
お決まりの台詞だ。台本通りか…?
当たり前の反応であるゆえに次に言う言葉は大体決まっている。
「俺は通りすがりの旅人です。」
正直、自分が魔王として召喚されたということを言うのも男として、かっこよかったが無一文であり、ましてや武器もない状態で迂闊に堂々と名乗ることが出来なかった。
それに、一度は言ってみたかった台詞でもある。
「旅人?!人間が何故この森に立ち入れたのだ?」
きょとんとしていた門番たちだったが、一人が気を取り戻し、こちらを睨んでいった。
どうやら、人間と亜人族は仲が悪いのだろうか?それか、旅人であると偽ったのが裏目に出て怪しまれているのだろうか。確かに旅人としては見えない容姿をしているのはわかるが………。それもそのはず召喚されたとき、上下ジャージだったからである。
「突然森に飛ばされてしまい。迷っていまして。」
今ある状況を的確に伝えることによって自分に敵対意思のないことも伝えるという最高の手段をとった。
これで納得してくれないと次に打つ手がない。困るものだ。
「ふむ。人間がこの森に立ち入ることが出来るか、少し待っていろ。」
そういうって門番の一人がまっすぐに立っている柱の中を通っていった。もう一人はこちらに警戒を怠らず槍を突き付けている。物騒だ。
ひとりでに解釈するのはやめていただきたいのだか……
なんか上手くいってくれてることに感謝したい。ありがとう自分、ありがとう世界。
というか、この森に人間が立ち入れないというのはどういうことだろう?
何かこの世界の事情があるのだろうか。
だとしたら……
そんな難しいことを考えながら
もう一人の門番と睨み合っていると、奥から先ほど外れていた門番と長老らしき人物がこちらに向かって来た。
「お主は本当に旅人なのか?召喚された勇者ではないのか?」
髭を生やしたいかにも古代魔法を使えそうな魔道士の容姿から発せられた言葉に少し戸惑った。
いきなし、勇者とか言われてもなぁ。
「この格好が勇者に見えますか?」
それもそのはず、上下ジャージといったいかにも引きこもりを催す格好をしてるあたり、勇者はともかく、旅人にも見えないのは無理もないだろう。
「そういえば。お主はみたことない格好をしているな。まぁ、勇者ではないという確信がもてない限り村に入れることは不可能になってしまうのう。」
そんなこと言われても……
もう少し前もって予告等があったらかっこよい服を着ていたのだろうに。
それに、勇者を嫌う亜人族なんて聞いたこともないな。
しかし、あまり首を突っ込むと殺されてしまうかもしれないし、かといってこの村に入れてもらえないのには、行くあてもなく情報収集もできない…。さてどうするか…
葛藤している中、ふと、過去の出来事が頭をよぎる。
そういえば召喚された時に左肩のあたりに召喚の跡みたいな傷がついていたのだ。
痛みはなかったが、先ほど体のいたるところをみて確かめたかいがあった。
物は試しよう。
召喚されたのが、もしあのような理由ならばならば。この印は魔王を示すもの、勇者ではないというのを明かすには都合が良いだろう。これで捕まって殺されてしまう可能性もあるが、今は試してみるほかないのだ。
「証拠ならあるぜ!」
自信げに笑みをこめた。
そういってジャージのチャックを下ろして左肩にある傷跡を長老たちに見せた。
突然のことにぽかーんとしていたが、傷跡を見せるやいなや表情が一気に凛々しくなったのを感じとった。
そして、自己解釈したのか長老は肩の力を抜いた。
「ほっほっほっなるほどのう。疑ってすまなかったのう。」
長老は和やかに笑った。
笑い方がどことなく誰かに似ている。
そうだ。サンタクロースだ。
クリスマスに現れて、子供達にプレゼントを与えるという伝説のおじいさんだ。
もう、サンタクロースにしか見えない。
てか、もうサンタでよくないか。うん。
そして、流石にこんなに上手くいくとはおもわず驚いていたが、何より驚いていたのは門番たちだ。
「よろしいのですか?長老、人間を村なんかに入れても?」
「そうですよ。長老。見るからに怪しいではありませんか?」
無理もない反応に対して長老は語った。
「このものは人間でありながら人間ではないのだよ 。勇者でもないし問題はないじゃろう」
穏やかな口調ゆえにその一言一言の重みが伝わってはこなかった。
ぽかーんとしていると、長老がこちらに手を振っているのがわかった。
慌てて駆け足で門番の前を通った。
見なくてもわかるくらいの殺気と、睨んでいるのは肌で感じ取った。
これまた物騒である。
これが異世界での日常だと思うと今すぐベットでお寝んねしたいくらいだ。
この場で長老になぜと理由を聞きたかったが、人前にいうことを避けているかのようであり、ましてや口答えしたのかと槍で突かれそうで怖かったので控えた。
「いや〜先ほどはすまなかったのう。うちの若い者は些か野蛮でのう。まあ仕方のないことだからのう。」
やんちゃな孫を紹介するおじいさんのように優しくなぜかどす黒い心までもが浄化されるようなオーラが漂っている。
流石がサンタ。
少し歩いくと、遠くから村が見えた。
とても盛んであり市場のような賑やかさ。
そして、何よりも自然と調和した感じかエルフらしい。
これはもう、ハンモックとかで寝れたりするのだろうか。
少し楽しみである。
「そろそろ、村に着くぞぃ」
隣を歩いているサンタがこちらに向かっていった。
「そういえば、なんで俺を通してくれたの?」
一旦たち止まって、先ほどの疑問を聞く。
村に入る前に聞いておきたかったからである。
幸いここからには人気もなく門番もついてきていないし、聞くには絶好の機会であった。
サンタは驚くこともなく表情を何一つ変えず、声のトーンを少し下げて答えた。
「お主、本当はわかっているのではないだろうか?まあよいか、お主は魔王として召喚された傷跡を持っているが、さらにお主自体にそれ以上の…………」
「「ドオオオオオオオオオオオオオオン」」
「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオ」」
村の方から地響きと爆発音が聞こえた。
凄まじい音に驚きが隠せない。
サンタが何か大事なことを言おうとしていたがそれは遮られてしまった。
村の中心あたりから煙が立っているのが遠くから見てわかる。
爆発音とともにサンタは走っていった。
今この場を立ち去るのはあまりにも気が引けない。
そう思い長老の後を追った。
村に着くと、人々は突然の出来事に驚き混乱しているのがわかる。
さらに、人間である俺がくればそれはもう頭がこんがらがるのは無理もない。
美しい装飾も今では見るに耐えないものになっている。
「おい、何があったんだ?」
少し遅れてサンタの元について、当然であるかのように状況確認のため原因を聞いた。
ここは村の中心であろうか、建物から煙が立っている。
サンタは困惑しているのだろうか。少しの沈黙の後に息を飲んだ。
「勇者の一角が攻めてきたらしいのじゃ」
その言葉に驚きが隠せなかった。
勇者というのはもともと世界を救うため平和にするために存在しているのにもかかわらず、戦争を起こしている主格というところが腑に落ちなかった。
「これで、お主もだいたいわかったろうに亜人族が人を嫌うのかが。」
納得できるわけがなかった。
魔法少女やヒーロー、勇者は正義の象徴でなくてはならないのだ。
ましてや、争いを望む勇者たちなどいて良いのだろうか。
「「ドューーン」」
辺りが急に激しい風によって薙ぎ払われた。
村の大半は崩壊してしまって人々はさらに混乱しているのがわかる。
幸い死者はでていないのが唯一の救いだろう。
「長老、なぜ人間を連れてきたのですか。勇者たちがついにここの居場所を探り出してしまいました。
もう村は終わりです。今すぐ避難すべきだと思います。」
若いエルフの男が長老に向かっていった。
たくましく凛々しい若いエルフの男はこちらを睨んでいる。
無理もないだろう。この現状をみれば人間を嫌うのもうなづける。
「………」
「そうじゃのう、サイトいますぐ全員を避難させてくれ、わしはできるだけ時間を稼ぐとする」
長老は決心したようでサイトにそう告げて空に向かって詠唱を始めた。
サイトの方はこちらをもう一度睨んだ後振り向いて民衆たちに避難の声を呼びかけている。
まるで、戦争のようだ。
俺は少し立ち止まって、どうしたらいいのか考えた。
「サン…長老俺はここにいてはいないと思う。できる限り離れる。短い時間だがありがとう。世話になった」
長老に一言お礼を言って避難しようとした。
今の自分は何もできないのである。
いるだけで迷惑になるのなら少しでも遠くに避難しようと考えたからである。
その選択がベストなのか、考える余地も時間もなかった。
振り返りサンタを背にし、一歩踏み出そうとした瞬間…
「「ドューーォォォォォオン」」
辺りが一斉に台風に飲み込まれたかのように突風が襲い込んだ。
サンタの詠唱のおかげで運良く長老と俺は巻き込まれなかったが周りが一瞬で地獄絵図とかした。
とっさに防御壁を構えたらしく全体を守ることはできなかったのだろう。
なぜ、こんなことが起きたのか不思議だ。
皆息はあるものの、ぐったりと倒れてしまって身動きが取れない状態である。
「ははははは、なんて滑稽だ。これがエルフだとは思えんな笑えるぞ」
天空から神のように舞い降りてくる一人の男がいた。
緑色の独特な鎧はまさに勇者といっていいだろう。
右手には風をまとった剣をもっていて、今にも振りかざしそうである。
地面に着地すると風がその男のまわりを包んだ。
みた感じでわかる。風の魔法か何かを使うであろうと。
「なんのようだ、勇者ウィンド。貴様たちには我々エルフは協力しない。今すぐ立ち去れ。」
長老は叫ぶように怒りを交えて発した。
勇者ウィンドのほうは予想通りの反応だったらしく肩をすくめた。
「お前たちに拒否権はない。それとも死に急ぎたいのか?」
なんという悪役っぷりである。
これはこれで様になっているような気がするが…。
ウィンドのこの自信は勇者ゆえなのだろうか。
「好きにしろ、お前らに協力するくらいなら死んだ方がマシじゃ。それが村のエルフの意志じゃ」
男らしい台詞を放つサンタ。
森も意志を読み取ったのかざあざあと木々が揺れる。
なんていうかっこよさだ。渋いな。
もうサンタ、勇者で良くないか。
ウィンドは呆れたようにため息をついた。
右腕に持っている剣を上に降った。
剣に集まるかのように風が吸い寄せられている。
恐る恐るウィンドの方を見た。
サンタに気がいっていたらしく、今更サンタの近くにいる俺と目があった。気づくのが遅い。
「そこにいるのは人間か?ん?どういうことだ。まさか。その人間は……」
振りかざそうとした剣を下ろした。
驚いた様子のウィンドはもう一度こちらをみた。
まるで、いてはいけないものをみるような目つきである。
訳が分からず、ほんの少し見つめあっていると、落ち着いたようでウィンドはこちらにむかった禍々しい風を待っとった剣を振りかざした。
「シューーーーン」
一瞬の出来事だったゆえに反応できずにこちらに襲い掛かってきた風圧を避けることができなかった。
「あぁ、死ぬのか。」と死期を読みっとった。
目を瞑る。
そういえば、なんかあっけない人生だったと少し過去を振り返る。
目を開ければ天界にいるといいな。
そう思いゆっくりと瞼を上げた。
そこに映る光景は誰もが予想しておらず、目を疑う。
なぜなら、先ほどまでウィンドに対して男らしく対抗していたサンタが俺を庇っているからだ。
サンタ自体が防御壁を貼ること自体か簡単なはずだ。しかし、サンタは顔をこちらに向け背中で守るように丸くなっている。
鋭い刃物で切られたかのようにサンタの血が飛び散りった。
血が滴り落ちている。
致命傷で今にも倒れそうに弱っている。
しかし、その表情は穏やかなであった。
いつまでも優しいその姿に心から思いが込み上げてくる。
あったばかりで、まだ時間も経っていないのになぜか大切な人を無くしたように心が張り裂けそいうになった。
サンタはふらふらしながら最後の力を振り絞って一言一言ゆっくりいった。
「こ、の、せ、か、い、を、ど、う、か、お、す、く、い、く、だ、さ、い、」
確実にとどめを刺すようにもう一度ウィンドが剣を振りかざした。
容赦もない。
その瞳からは光が見えない。
サンタはすべてをいいのこしたらしく倒れてしまった。
村は壊滅的であり長老も自分を庇い倒れてしまった。
そして、すぐそこにはウィンドの剣から放たれた風圧が迫り来ている。
絶望だ。もう一巻の終わりである。
俺は歯を食いしばり、ウィンドを睨んだ。
「「「消えろ」」」
その一言で風圧はおろかあたりの残骸すらもなくなり無とかした。
一瞬の出来事であり、ウィンドは呆気にとられている。
息を吸って、もう一度言葉を放った。
「「立ち去れ、悪人」」
途端にあたりから暴風が吹き荒れ、まるで自然が怒り狂っているかのようにウィンドを襲う。
何をされたのかまだわかってない。
無理もないだろう。勇者として名を上げた以上、絶対なる自信があったからである。
ウィンドの風圧があっさりと打ち消され、自分以上の風を操られるとなると、気が狂うだろう。
「貴様、何者だ。それほどの力。もしや…」
焦ったのだろうか剣を振りかざし、ウィンドが何かを言おうとした。
その途端。
「「「無とかせ」」」
天地を焦がすような暴風とともにウィンドのもとに雷が走った。
煙が立っている。
森は先ほどより荒々しく呻っている。
煙がはれ、だんだんと様子がわかってきた。
先ほどまでいたウィンドが消えていた。
消えたというよりかは、いなくなった。存在を消されたかのように無とかした。
残っているのは風をまとった剣だけである。
天空より光が少年に当てられる。
その姿を確認できるのは誰一人いない。
無論、その少年しかできないのである。
誰一人として目視することもままならない。
意識が朦朧とする中で、サンタは呟いた。
「あぁ、神よ」
今思うとずいぶんとネットに飲まれたんだと思います。
お恥ずかしい。