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能力 ーダソクー2


「待ってないし」

 せっかくカッコつけたのにそんなバッサリ斬らなくても。

「っていうか私一人でいいから引っ込んでなよ。まだ莉乃来てないんでしょ?」

「えー。でも新種には私も興味あるしー。っていうか一応結羽ちゃん部下だから死なせるわけにはいかないしー」

「死なないって」

 そう言って地面を蹴る。私も「ほい」と軽く跳んだ。爪先のすぐ下を図太い身体が通過していく。

 顔も再生しないうちにカフカは尻尾を薙いで周囲の家やら車やらを粉砕しながら私達を狙ってきた。

 着地。

 小さな相手には好戦的だね。親に似たのかな。

 周囲からは家が崩れる音に混じって多数の悲鳴。流石に自業自得とは思えない。不運だ。どんまい。

「流華、こいつの相手は私が一人でするから一般人の救助に行って」

「そういうのって普通班長が言うもんじゃないの?」

「普段も大体莉乃が仕切ってるでしょ」

 ぐうの音も出ない。まぁいいや。一般人の救助優先は当然だしね。

「じゃ、よろしくー」

 そんなやりとりをしている間に倒壊音は止んで、周囲からは唸り声や泣き声が聞こえてきた。

 泣き声優先。もちろん、子供の。

 カフカを警戒しながら声を頼りに倒壊した家に近付いて瓦礫の隙間を覗く。

 あ、早速見っけ。

 うん?

 視界の隅で再びカフカが回転した。さっきと同じように跳ぶ。

 真下では瓦礫が吹き飛ばされて子供の姿が露わになった。っていうか首から上がなくなっていた。今の一撃で吹っ飛んだか粉砕したらしい。どこ露わになっちゃってんだ。チラリと見るとその子の両足は瓦礫の下敷きになって完全に潰れていた。うーん。死んでよかったと言っていいのかねぇ。そこらへんは人によるとしか言えないしなぁ。

 まぁこんなのはよくあることだし次だ次。今の攻撃でまた家が壊されちゃったし。

 瓦礫を撤去して一般人を救助。とりあえず安全地帯にまで運び、怪我人の応急処置は比較的怪我の軽い人達に任せて再び現場へ。それを繰り返していくうちに、僅かにあった違和感が大きくなっていった。

 あのカフカ、大型にしては弱すぎる。攻撃は単調だし、腐化、硬化、再生、どれをとっても徒花の平均以下の速度。もちろん結羽ちゃんが強いっていうのもあるにはあるけど、それを差し引いても雑魚。元が元だから?

 核の場所が分かりづらいからなんとか生き延びてはいるけど、結羽ちゃん一人に対して明らかに劣勢だ。攻撃に硬化も再生も追い付いていない。切断された身体を繋ぎ合わせるのでやっとといった感じ。

 一方の結羽ちゃんは楽しそうに笑っていた。私みたいに違和感を抱いている様子はない。戦いに夢中だからか、あるいはこれがそういうカフカものだってことを知っているからか。

「流華」その声と同時に莉乃が隣に着地した。「大丈夫?」

「うん」

 莉乃と手分けして救助を始めて間もなく、結羽ちゃんの一撃がカフカの身体を切断する。と、断面からヘドロと一緒に白い球体、核が姿を見せた。結羽ちゃんの追撃で核は容易く砕かれて、カフカの身体は蒸発するような音を立てながら崩れていく。

 その後は、ようやく到着した猪坂班と一緒に救助活動を進めた。完全に倒壊した家、部分的に破壊された家はそれぞれ二軒ずつ。重軽傷者の数は十人を越えて、死者は四名。平日の夕方にしては多い理由は、倒壊した家に子供が集まっていたから。カフカに頭を吹っ飛ばされた子もそのうちの一人だったらしい。

 最後の救急車が走り去っていくのを見送る。現場周辺に張られた黄色いテープの向こうにはスマホを構えた人達の姿。今時こんなの珍しい光景でもないだろうに。

 群衆から「流華ー!」という声が聞こえてきた。

「こっち見てー!」

 撮影会じゃないんだけどなぁ。

「笑ってー!」

 笑えるかバカ野郎。こんな状況でそんな表情したら猛バッシングくらう。だからといって完全に無視したらSNSとかにあることないこと書かれたりするし、沈痛な表情のまま声の方を見て軽く目を伏せておいた。頭を下げたら何か不手際があったと邪推されちゃうかもしれないし。

 パシャパシャ鳴るシャッター音。

「流華、行こう」

 莉乃の声に振り向いてワゴン車に乗り込む。運転席にはちはるちゃん、一番後ろの席には猪坂班の三人、私は二列目、結羽ちゃんの隣に乗って、最後に莉乃が助手席に乗り込んだ。

「じゃあ出発します」

 私と奈緒とメグちゃんが返事をしたのに合わせてワゴン車が発進した。外ではフラッシュがたかれている。

 群衆を轢かないように低速で走る車の中は沈黙に包まれている。別に気まずい感じじゃあないけど。

 そんな中で私は隣の結羽ちゃんにチラリと視線を向けた。

 どうしようかな。報告するべきかな。いや、するべきだよね。人をカフカにするとか完全にヤバい感じだし。でも普通、徒花やカフカのヘドロを飲んだところであんなことにはならない筈。となると……。

 後部座席、メグちゃんと奈緒に挟まれて座っている沙良さんに目を向ける。

『鉄壁』。硬化時の強度が格段に高いという沙良さん固有の能力。現時点でそういう力を有しているのは沙良さんだけ。今思えば麗さんの異様な腐化、硬化、再生速度もそれだったのかもしれないけど。

 でも結羽ちゃんのアレが能力だったとして、効果が効果だし沙良さんみたいに祭り上げられることはまずないだろう。人間にとっては百害あって一利なしの能力だし、むしろ危険生物として扱われること間違いなし。大切な人が腐化したらその責任を押し付けようとする人だって現れる筈。

 でも私的には若干有り難く思ってたりもする。なんせデカデブを合法的(?)に消してくれたし。いくら相手がデカデブでも人間を殺すのは徒花わたしたちにとって危険な行為になる。だけど相手がカフカならいくら殺しても大丈夫。あんなに残虐な個体なら尚更だ。

 んー……。そう考えるとまだ使い道がありそう。

 うん、報告はやめておこうかな。

 野次馬の群れを抜けるとちはるちゃんが「ふぅ」と安堵の息を吐いた。

「みんなお疲れ様」

「お疲れ様です」とメグちゃん。「特に空木さんと戸舞さん」

 あ、これはくるな。

「しかし空木さん、あなたは休業中の身ですよね。戸舞さんも紋水寺さんと合流してから現場へ向かうように指示があった筈です」

「だってー、相手新種だし、結羽ちゃん一人だと危ないかなって……」

「空木さんは?」

「別に、言い訳する気もないし必要だとも思わないけど。一人でも殺せそうだから戦っただけ」

「メグちゃん、一般人も襲われてたんだよ? 私だって本当は助けに行きたかったし……」とフォローを入れておく。

「それでも、です。お二人の報告を聞いたところ、そもそも空木さんが現場にいかなければカフカがあれほど暴れることもなかったのでは?」

「だってメグちゃん、あのレベルのカフカが徒花を敵だって認識出来るなんて普通思わないでしょ?」

「相手は大型で、しかも新種です。だからこそ隊長も警戒して能力の高い二班を派遣した。偶然倒せたからいいものの、空木さんが仕留め損なっていたらどれほどの損害が出ていたかーーーー」

「偶然じゃないけど」と結羽ちゃんの声が響いた。「言ったでしょ。勝てると思ったから戦った。それで勝った」

「お言葉ですが空木さん。あなたは扇野支部ここに来る前に大型カフカ一体に敗北していますよね。にも拘らず今回は勝てると踏んだ理由が分かりません」

 フォローはしなかった。結羽ちゃんがなんて答えるのか気になったから。

 でもそれに応えたのは助手席から顔を覗かせた莉乃だった。

「休業中ってことは別として、私は結羽の判断が正しかったと思う」

「というと?」

「さっきのカフカ、人をいたぶる行為とか徒花を敵だと認識出来たことを考えると『色付き』ほどじゃないにしてもかなり高い知能を持ってた個体だと思う。最初に捕まった人は家の中にいるところを見られたわけだから、結羽がいかなきゃ手当たり次第に家を破壊してた可能性も低くない。そしたら死者はもっと増えてたはず」

 子供が集まって遊んでいた家が頭に浮かんだ。多分、メグちゃんも同じだと思う。

 車内に沈黙が流れた。メグちゃんはなにか言いたげな表情をしながらも口をつぐんでいて、沙良さんは何を考えてるのか分からない無表情、奈緒は少し居心地悪そうに目を泳がせていた。

「まぁまぁ」とちはるちゃんの明るい声が響く。「そこら辺のことは隊長の前で話し合えばいいんじゃないかな。みんなやれるだけのことはやったと思うよ」

 隊長は多分結羽ちゃんに処分を下せないし、私達はもっと上手いやりかたがあったんじゃないかっていう話をしてるんだけど、ちはるちゃんの言葉に反論する人はいなかった。むしろ有り難い。普通の運転手さんとかよく知らない事務員さんじゃあ見て見ぬふりだろうし。


 隊長への報告は滞りなく進んだ。メグちゃんは車内と同じように結羽ちゃんへ苦言を呈したけど処罰が下ることはなく、予定通り明日から正式に部隊へと復帰することとなった。

「よし、報告はこれでいい。ご苦労だった」隊長は机に両肘をついて指を組んだまま言う。「猪坂班と空木は駐在室に行ってくれ」

「え?」

 思わず口から出た私の声とメグちゃんの「はい」という返事が重なった。

「もしかして私と莉乃は帰っていいの?」

「ここに残れ。スケジュールで確認をしたいことがある」

「ふぅん?」

「それでは失礼します」敬礼するメグちゃん。

「失礼します」ペコリと頭を下げる奈緒。

「ます」ますって沙良さん。

 しかも結羽ちゃんに至っては何も言わずに踵を返した。私でも『ばいばーい』くらい言うのに。

 四人が部屋を出ていくと隊長は私達にソファに座るように言いながら立ち上がった。そして私達の向かいの席に腰を下ろす。

「それでどうしたの? あの四人に聞かれたくない話?」

「まぁそうだな」と隊長は肯定した。

 私達のスケジュールは隊長とマネージャーが連絡をとって管理している。確認なら私達にするよりそっちにした方が早いし確実だ。つまり用事はそれ以外のこと。そしてタイミング的にーーーー

「空木に関することだ」

 だよねー。

「戸舞、以前、空木の部屋から咳き込む声が聞こえたと言っていたそうだな?」

「うん」

「最近はどうだ?」

「んー? そういえば聞こえてこないかも。でも結羽ちゃん、最近よく留守にしてるっぽいしなぁ」

「最近部屋に入ったことは?」

「結羽ちゃんの? ううん、全然ない」

「紋水寺は」

「ない」

「そうか。実は蛍山支部の白水隊長から連絡があった」

 なんちゃって隊長さん? あぁ、そういえば結羽ちゃんと仲がよかったんだっけ? 周りから疎まれている者同士気があったのかな。それともただ傷を舐め合っていただけか。

「六月上旬にこちらへ来た際、空木の部屋から物がなくなっていたらしい。気味が悪いくらいにな」

「いや、そりゃ友達が来るなら片付けくらいするでしょ」

「前まではしてなかったと」

 マジで。ある意味すごい。

「それに整理したわけじゃなく『全て捨てた』と本人は言っていたそうだ」

「あの大量の漫画を?」

「漫画というより家具以外の殆どだそうだ。リビングに置いてあったのはソファとテレビのみ。寝室にはベッドとクローゼット、タンス。キッチンの棚には食器一枚なく、冷蔵庫には二リットルペットボトルが一本だけ」

「ふえー。必要最低限の生活だね。そういうのなんていうんだっけ」

「ミニマリスト」莉乃がサラッと答える。

「それそれ。私は絶対無理なやつ。あ、隊長なんかミニマリストっぽい」

「というか家に帰らんからな。物を置く必要がない」

 ただの仕事人間だった。

「私としても散らかっているよりかいいとは思うが、生活環境の変化というのは心の変化の表れだ。それが極端なものであるなら尚更な。そして生活環境が改善されたからといって、心の変化が良いものとは限らない」

「結羽ちゃんに何か変わった様子はないか、ってこと?」

「そうだ。心当たりはあるか?」

「んー……」

 そりゃあありまくるけど。ていうかすごい遠回しに聞いてるけど、隊長も最近の結羽ちゃんの大活躍を怪しく思ってるんだろうなぁ。結羽ちゃんの部屋のことだって、なんちゃって隊長さんから六月上旬のことを今更言ってくるのもおかしな話だし、多分連絡したのは類家こっちの隊長から。私の軽口に多少とはいえ付き合ってくれたところを見るとなんとしても証拠となりうるもの、あるいはそれに繋がるものを手に入れたいらしい。ってことは疑惑はかなり高いレベルだねぇ。結羽ちゃんヤバいかも。

「ないかなぁ。っていうか最近全然話してないし……」

「今日のカフカ出現時は何をしていた?」

「え? 知らない」

「空木じゃなくて戸舞だ」

「私? 部屋にいたよ。っていうか隊長も知ってるでしょ?」

 ま、本当に聞きたいのは言葉通り『部屋で何をしていたか』なんだろうけど。でもここは嘘を吐くよりそもそも質問の意図を理解していないふりをした方がいい。

「そうだな。隣の部屋に空木がいたかは分かるか?」

「え? さっきいたって報告してたじゃん。それに私もいたと思うよ」

「何故そう思う」

「だからさっきも言ったじゃん。警報が鳴った後、窓からカフカを観察してたら隣の部屋から結羽ちゃんが飛び出してきたんだって」

「そうだったな」

「結羽ちゃんのことなんか疑ってる?」

「あぁ」

 隊長はあっさり答えた。まぁここまで踏み込んだ質問をしたんだ。誤魔化せるとは思ってないだろう。

「空木の近頃の活躍は異常だ。そしてそれが始まったのは私が休業を言い渡した当日から」

「うんうん」

「休業命令を不服に思った空木が激しい怒りを見せたことは知っているか?」

「初耳」

 隊長の視線が一瞬だけ私の隣に向いた。莉乃は知ってたらしい。

「そうか。まぁその怒りの大きさは帰り道でスマートフォンを踏み砕いたことを考えれば大体分かるだろう」

 本当に子供みたいなことするなぁ。

「あの時の怒りが引き金となり、空木が何らかの能力を得たものだと私は考えている」

「能力? 沙良さんみたいな?」

「あぁ。公表しているのはアイツと常陸院ひたちいんアンリだけだな」

「やっぱ他にもいたんだ」

「数名な。そしてその中に一人だけ毛色の違う能力を得た徒花がいた」

「毛色の違う? ってどういうこと?」

川那子かわなごにしろ常陸院にしろ他の者にしろ、能力によって強化されるのは腐化、硬化、再生、あるいは身体能力だが、その徒花ーー君塚きみづか加菜恵かなえに至ってはその限りではない」

「君塚加菜恵」

 聞いたことのない名前。死んじゃってはいるんだろうけど有名人なら名字くらいは覚えてるはずだし異名持ちではなさそう。

「自身を中心に周囲三百メートルに及ぶ広範囲の感知能力。それが君塚加菜恵の力だった」

「へぇー」

「他の徒花がいう『気配』とは一線を画すものだ。私達は空気の流れや微小な音に無意識のうちに反応しているに過ぎない。いうなれば察知。対して君塚加菜恵は感知。言葉通り直感的に存在を感じ取ることが出来た」

「それってカフカ限定?」

「いや、人間、徒花、他の生物も全長が三十センチを越えるものであれば感知出来たとされている」

「なるほどねぇ。確かに沙良さんとかの能力と比べたら異質かもね。あ、もしかして結羽ちゃんも同じような能力を得たかもってこと?」

「あぁ。そうでなければ、部隊の到着はおろか警報が鳴るよりも先に現場に駆け付けることなど出来はしまい」

「まぁ確かにそだよねー。最近の結羽ちゃん活躍し過ぎだし」

 なるほど、感知能力。そんな前例があるならそう考えてしまうのは仕方ない。本当はもっと異質でヤバい感じの能力だけど。

「本人に訊いたところで正直に答えるとは思えない。能力を得た徒花というのは不安定な精神状態から無茶な行動が増えるものだ。そうでなくとも無茶ばかりしていた奴だから尚更な」

「えーと、無茶しないように見張っとけってこと?」

「いや、空木が本当に感知能力をーーそれも君塚加菜恵と同等のものを持っているとしたらそういった動きすら看破するだろう。不信感は与えたくない。今まで通りに過ごしつつも気にかけるくらいでいい」

「りょーかい」

「了解」

「では頼む」

 話は終わりらしい。隊長は机に両手をついて立ち上がる。

 ふと、最近話題になってるニュースを思い出して、「あ」という声が漏れた。

「なんだ?」

 隊長は立ち上がった状態で私に目を向ける。

「一ヶ月くらい前に蛍山支部の徒花ひとが神眼教の信者に殺されたでしょ? えーと、名前なんだっけ」

雨森あまもり美海みなみ。容疑者のことを言っているのなら石崎いしざきたかし河部かわべ美智子みちこだ」

「そうそう、雨森さん。その人が死んじゃってショックだったんじゃないの、結羽ちゃん」

「それは私も考えたが、白水隊長曰く二人の関係はいいものではなかったようだ。雨森隊員は空木の命令違反をキツく咎めていた人物で、激しいものではないが口論している姿が度々目撃されていたらしい」

「ふぅん」

 全くの無関心だった、ってわけじゃないんだ。結羽ちゃんは私と違って外面とか世間体を全然気にしないから、本当に嫌いな相手ならそもそも関わろうとしないと思うんだけど。

 しかも雨森美海を殺したのも、結羽ちゃんが(おそらく)カフカにして殺したのも神眼教信者。これで無関係だって思う方が難しい。まぁ能力を得たタイミングが、雨森美海の死を耳にした時か、それとも隊長が言ったみたいに休業命令が出た時なのかは不明だし、本人だって多分分かってないだろう。沙良さん曰く、能力はいつの間にか得ているものらしいし。

 隊長室を出て廊下を歩く。

 復縁を迫ってくる元カレを消してもらうのはやめておいた方がよさそう。デカデブみたいにストーカー紛いのことをしてくれれば言い訳が立つんだけど、あそこまでおかしな人達じゃないし。普通にウザいってだけで。

「流華?」

 顔を上げると隣を歩く莉乃が前傾姿勢になって私を覗き込んでいた。

「んー? なに?」

「なんか変な顔してた」

「え、嘘」

 両手で頬に触れる。

「私の気のせいかも」

 莉乃は気にする様子もなく前に向き直った。

 変な顔?

 どんな顔だろ。



 

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