092 メンバーは?
2016. 12. 26
ジェイクが慌てて書き付けたらしいその紙には『東の土地に異変あり』と書かれていた。
「オズライル様からの伝言だと、ギルドの方がいらしたのです」
「東って言ったら、クリスタに何かあったかな? どう思う? シルヴァ」
シルヴァは、すでに喋る猫として屋敷の者達に認識されており、その側にいるドランも、小さなドラゴンと正しく認識されていた。
《アレが倒れたという事はないはずだ。再生の時期でもない。特に変わった感じはしないな》
「シルヴァが言うなら、間違いないか……他に何が?」
首を捻り、他の可能性を考えるファナ。それらを聞いていたラクトが何かを思い出したように言った。
「そういえば、端から届くはずのワインが届いていないな?」
これを受け、ジェイクが報告する。
「はい。もう届いてもおかしくないと連絡をしているのですが、未だに返事が来ておりません。申し訳ありません……」
「いや、急いでいる訳ではないからな。だが、何かあったのかもしれん……」
頼んでいる場所は、東の端にある農園だ。ラクトにしてみれば、懐かしい魔族の国でのワインと同じ味がしたのだ。
魔族の国では、西の端にワインの産地があった。気候と風土が似ているのだろう。その気に入りのワインを頼めば、この時期ならばとっくに届けに来ているはずなのだ。
在庫は持っているが、毎年頼んでいるので、心待ちにしていた。
「そこって、山に近い?」
「麓がかろうじて見えるという距離だったはずだ」
「そっか……なら、クリスタに異変があったんじゃなくて、環境が変わったとか?」
そう首を傾げていると、バルドがここで予想を立てた。
「問題の霧が麓まで降りてきたって事はないのか?」
「……クリスタが追いつかないような状況になった?」
《あり得ない事ではないな。今までになく活発に動いているように感じられる》
シルヴァは意識を集中し、クリスタの今の状況を感じ取ったらしい。
「それなら急がなきゃ」
《うむ。件の毒が広がるのは厄介だ》
山だけに止まっていたから大きな問題にならなかった。人では対処できない毒なのだから、麓に降りてきたらどうにも出来ない。
「早く行こう」
《そうだな》
立ち上がるファナとシルヴァ。
「俺も行くぞ」
そうバルドが言うと、当然、この人は黙っていられない。
「ファナを危険な場所へ一人で行かせられるわけがないだろう」
「一人じゃないじゃん。 バルドもシルヴァもドランもいるよ?」
ファナが一人なはずがないのだが、ラクトの中では、彼らは数に含まれていないようだ。
「私も行く。お前達には任せられん。シルヴァ達は平気かもしれんだろう。バルドは鈍感な所があるからな。毒に気づくかどうか……」
それを聞いて、バルドが胡乱げな目をラクトに向ける。
「ラクト……前から思ってたが、俺をバカだと思ってんだろ……」
「体力バカだとは思っている。頭がバカだとは言っていないぞ」
「納得できねぇ……」
ラクトはバルドより年下だ。しかし、大きな態度と知識力、純粋な力が、時折それを忘れさせるようだ。
「まぁまぁ、落ち着いて。でも兄さんが行くのはな……良いの? って、ジェイクどこ行ったの?」
キョロキョロと見回すが、部屋の中にジェイクがいなかった。
その時、ジェイクが誰かを伴って部屋に戻ってきたのだ。
読んでくださりありがとうございます◎
ようやく東へ。
異変は広がっているのかもしれません。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎




