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087 懐かしのお茶

2016. 12. 19

ファナがラクトのいる談話室に向かう前。メイド達とテーブルを囲む事になっていた。


「えっと……」


シルヴァとドランは、少し離れた場所にある別のテーブルについたバルドの足下に潜り込み、丸くなっている。メイド達の目には入らなかったようだった。


ファナは、一人でメイド達の好奇の目に晒される事になったのだ。


「あぁん、ファナ様……こんなに大きくなられてっ……」

「うっ……」


はっきり言って、こんな目で見られたのは初めてだ。本気でファナはどうすれば良いのかと動揺していた。


そこへ、トミルアートがお茶を持って現れた。そして、ファナの前に赤にも見えるお茶の入ったカップを置いた。


そのカップから漂う香りをゆっくりと吸うと、ぱっと表情を明るくし、トミルアートを見上げて確認した。


「トマっ、これがリートティっ!?」

「あ、あぁ……そうだ」


ファナの勢いに、トミルアートは咄嗟に身を引きながら答えた。


「そっかぁ……うんうんっ、この香りだっ」


長く求めてきた香りに、ファナは感動していた。少々大げさにも見えるが、これも仕方がない。ファナは幾度となく、このお茶の原料を探していた。


薬草に詳しくなったのも、この茶葉を見つけるついでだったのかもしれないと思うほどだ。


「後でこれの元を教えてっ」

「分かった」


トミルアートの了承を得たという事で安心し、ようやく懐かしいの味を堪能する。


「……おいしい……甘い匂いなのに、甘くないんだよね……不思議……」


ファナが頬を赤らめながら嬉しそうに飲む様子を見ていたメイド達も嬉しそうに言った。


「ファナ様は昔からそれがお好きでしたね」

「ラクト様が、ご機嫌取りに淹れてましたわね」

「知ってますか? それには、果実も入っているのですよ?」

「えっ、葉っぱじゃないのっ?」


ファナが驚くのも無理はない。お茶とは、どんなものでも茶葉で淹れるものだ。果実が入ったものなど存在しない。


「だからこんな匂いがするんだっ。そっか、果実かぁ」


謎が解けたと、ファナは喜ぶ。


すると、同じお茶を貰い、啜っていたバルドがファナに尋ねた。


「魔女様でもやらなかったのか? なんか色々知ってそうだが……どんなお茶を淹れてたんだ?」


魔女は異世界からやってきたと伝えられている。だから、変わったお茶もあったのではないかとバルドは思ったのだ。ファナならば、そんなこの世界にはないお茶から、想像できなかったのだろうかと。


「師匠は、紅茶は好かないとかいって、緑色の綺麗なお茶を淹れてた。たまに茶色のもあったけど、甘くなくて、どっちかっていうと香ばしいんだよね。あれも不思議っだった」


魔女が淹れていたのは、この世界にはない煎茶というものだった。葉を蒸したり、炒ったりしていた。


「あ、お茶っぱあるよ。今度淹れたげる」

「おう。楽しみだ」


そんなバルドとの話を聞いていたメイド達は、キョトンとした表情を浮かべていた。


「えっ……魔女様……?」

「ししょうって……師匠?」

「……一緒に暮らしてたの……?」


疑問でいっぱいだが、全て正解だ。


「そうだよ?」


そう言っているじゃないかという表情で答えたファナは、またゆっくりと味わう。


「「「えぇぇぇっ!?」」」


そんなメイド達の声が響いたのだった。




読んでくださりありがとうございます◎



ずっと求めていたものをようやく知る事が出来ました。

ついでに大混乱を引き起こしたファナちゃんです。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


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