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086 妹命なので

2016. 12. 18

先代夫婦はラクトが自分達を殺そうとしていたのだと知って怯えていた。


その為、その後に続いたファナの話は、聞こえていなかったようだ。元々、父母はファナが生きている事を知らない。寧ろ、存在さえ忘れていた。


ラクトの殺気は、今も父母に向けられていた。しかし、父親にも意地がある。


「……なぜだ……っ、お前は、家など継がないとずっと言ってきたではないかっ。それを、なぜ今更……っ」


突然ラクトに、家督を継ぐから今直ぐ明渡せと言われたのだ。


初め、何を分けの分からない事を言っているんだと呆れていた。ラクトには、たまに理解できない行動や言動があった。


侯爵家の継嗣としては相応しくないものだ。それを何度も父母は注意してきた。


その時もそんな理解不能なものだと思ったのだ。だから、もういい加減にしろと思い告げた。


『勝手にしろ』


相手にするのも諦め、適当にあしらおうとしたその言葉はラクトの行動を加速させる事になった。


その言動からものの一時間ほどで、侯爵家を乗っ取ったのだ。


この屋敷を追い出され、別邸に向かう馬車の中で、その時の事を考えていたのだ。


考えれば考えるほど、ラクトが事前にこれを計画し、家令をはじめとした使用人達を全て抱き込んでいたのだろうと思えた。


「理由など、聞いて何になる」

「っ……!」


高圧的な態度と言葉。それは、恐ろしいともいえるものだった。


父母が怯える様子を見て、ラクトは、情けないと思わず言いそうになった。そして、再びゆっくりとソファに腰掛ける。足を高く組み、少し体を傾けると、肘掛に乗せた腕を立てて頬杖をつく。


「はじめから、貴様らには未来はなかったのだ。数日前まで、私はいつか、この侯爵家を潰す気でいたのだからな」

「なっ!?」


床にへたり込み震える母親は息さえ止まりそうに短い呼吸を繰り返している。一方の父親は、一音発した後、息を止めたのだ。


そんな二人を見るともなしにラクトは言った。


「こんな家、私には未練も何もない。ファナが居なくなってから、何度消してやろうかと思ったか」


これがラクトの偽らざる本音だ。最後は父母から目をそらし、舌打ちする。その表情は、さっさと消しておけば良かったと言っていた。


「ファナと暮らせる場所。ここは、それでしかなかった。その存在意義を消したのは貴様らだろう……」


なんでこんな奴らの相手をせなばならないのかと大きく溜息をつくラクト。それが気に入らなかったのだろう。正気を取り戻した父親が言い訳じみた言葉を吐いた。


「ファナ……あ、アレを追い出したのは、全て、この侯爵家の為っ……継嗣であるお前の為だったのだぞっ!」

「ふざけた事を……っ」


家の為、ラクトの為だったのだと言う父親を、ラクトはキッと睨みつけた。


そうして、馬鹿な事をと怒鳴り付けようと、ラクトが大きく息を吸った時だった。



バンッ!!



外側に開かれていた扉に手を叩きつけながら、体を扉へ預けるような姿勢で、この場にいる全員の目に映ったのは、ファナだった。




読んでくださりありがとうございます◎



ファナちゃんの事を忘れていた夫婦。

大変なおバカさん達です。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


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