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085 先代夫妻のお帰り

2016. 12. 16

メイドの三人にファナが椅子を勧められている頃、屋敷に先代であるファナの父と母が到着していた。


「ラクトっ、ラクトはどこにいる!」

「お待ちください。先代様っ」

「先代だとっ? 私はそれを承知した覚えはない!!」


ジェイクが止めるのも聞かず、大股で入ってきた先代夫婦。


「ラクト! ラクトっ!」


大きな声で呼びながら、向かうのは執務室だ。ラクトがいると確信して進む。


しかし、ラクトがいたのは、その二つ手前の談話室だった。


「騒々しいですね」

「ラクト!?」


扉を開け放していた為、そこを通り過ぎようとする先代が見えたのだ。


「なっ、お前はっ、何をしているっ!」

「何とは? お茶をしているだけですが?」

「ふっ、ふざけるなっ! お前は侯爵としての仕事を何だと思っているっ!」


怒鳴り散らす先代に、ラクトは鼻を鳴らす。


「先ほど、大声で私を当主として認めていないと言っていたようですが、認めているようですね」

「っ!?」


ラクトは、父親の馬鹿さ加減に呆れていた。そこに、今まで黙っていた母親が口を挟む。


「ラクト。失礼ですよっ。お父様に謝りなさい」


こんなお約束な言葉は無視だ。


「ラクト、聞いているのですかっ!?」

「あまり大声を出すと、皺が増えますよ」

「なっ……」


ラクトは新たに淹れられたお茶を優雅に飲む。


それは、父と母を馬鹿にしている事に他ならない。


「ラクトっ!」


再び怒鳴りつける父親。そんな父の姿に目を向ける事はない。そしてラクトは、わざと大げさに溜息をついてみせた。


当然、これは父母の勘に触る。すかさず声を出そうとする二人よりも早く、ラクトが言った。


「いいかげん、口を閉じてもらおうか」

「っ……」

「なんて事を……っ、親に向かってっ……」


母親は、酸欠になりそうなぐらい口をパクパクとして言った。


こうした態度や言葉遣いは、家督を譲れと迫った時と、不在中にファナを追い出した時しかなかった。


それまで、ラクトは愚かな父母と思いながらも、上手くあしらってきたのだ。


「『当主の意に背くな』というのが、我が家のルールではなかったか?」

「なっ、何をぬけぬけとっ。私から無理矢理家督を奪ったくせに!」

「そちらこそ、何を言っているのだ? 正式に国からも認められた事だというのに」

「くっ! 貴様ぁっ!!」


熱くなる父親とは反対に、ラクトは冷静になっていく。


「あなた方は、理解していないようだ。私が、何のために、別邸へ移住させたのか」


カップをテーブルに優雅な所作で置き、ラクトは立ち上がる。そして、まるで親の仇でも見るように両親を睨みつける。


「っ……」

「っ……なに……?」


ラクトから確実に二人だけに向かって放たれる殺気。それに当てられた母親は、立っていられなくなった。


父親は、何とか立っているようだが、青い顔で、脂汗をかいていた。


「これ以上、その顔を見ていれば、殺してしまうかもしれんと思ったからだ」

「ひっ……!」

「あ……っ」


ガタガタと目に見えて震えだした二人を睨みつけながら続ける。


「親を殺すのは、この世では倫理に反する行いだ。それに、血に汚れた手で、ファナを抱きしめる事はできんっ」


きっぱり、そう言い切ったラクトだった。



読んでくださりありがとうございます◎



本気で鬱陶しいのでしょうね。

兄さんは今まで我慢していました。



では次回、一日空けて18日です。

よろしくお願いします◎


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