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074 東のドラゴンの役目

2016. 12. 1

ファナ達はボライアークの一件が片付いた次の日、改めてオズライルを訪ねた。


朝食も済ませ、クエスト完了の手続きも終わらせてからにしたのは、寝不足であろうオズライルを気遣ってだった。


部屋に行くと、オズライルは待っていたとでもいうように、ソファに腰掛け、手招いた。


「それで? 今後の予定は?」


そう、オズライルから切り出す。話が早いと、ラクトが答える。


「これから屋敷に帰るのだ」

「クルトーバへ?」

「その向こうのミスト山に行くついでです」


ついでと聞いてラクトは気落ちしたらしい。だが、来てくれるなら良いかと気持ちを切り替える。


「ミスト山って、本気?」

「本気ですよ? クリスタに会いに行くの」

「クリスタ?」


オズライルも聞いたことのない名前らしいクリスタという言葉。バルドもラクトも顔をしかめていた。


これに答えたのはシルヴァだった。


《あの山の山頂に棲むドラゴンの事だ》

「ドラゴン……居るかもという話はあっても、実際に会った者はおりませんぞ?」


危険な場所に分け入る事もある冒険者でさえ、誰もその山の中腹から山頂へ向かって進めた者はいない。


なぜなら、中腹から上には毒の霧が立ち込めているのだ。


「でも居るよ? ドランを紹介したいんだ。挨拶するのが礼儀でしょ?」

《キシャっ、シャっ》


ドランも会いたがっているようだ。


クリスタという名を持つドラゴンは、この世界で唯一の存在だ。違う世界の生き物ではあるが、同じ種として会うのも悪くないだろう。


「あの山に入るには、結界を何重かにしたり、ちょっと考えないとダメなんだよね〜」


そう言えば、オズライルが目を丸くしていた。


「なにそれ。そんな事、知らないよ?」


聞いた事も試した事もないらしい。魔女に聞けばあるいは教えてもらえたかもしれないが、ミスト山に登ろうなどと考えもしなかったのだ。


そこで、静かにファナの話を聞いていたバルドが不思議そうに首を首を傾げた。


「そのドラゴンに近付くのも危なくないのか? 伝説だとあの毒霧は、ドラゴンが吐いたって事になっていたはずだぞ?」


ドラゴンを見た者や、居るという確信を得なくても、ミスト山にはドラゴンの伝説があった。


その昔、ドラゴンが死に場所を求めて辿り着き、誰にもその死を見られないように毒を吐き、誰も近付けなくしたのだと伝えられている。


「吐いてないよ。だいたい、毒を吐く生き物なんてこの世界にはいないって師匠が言ってたよ? 昨日のあの人はもう死んでたし? クリスタはむしろ、あの毒霧の元となってるのを他に広げないようにしてくれてるんだけど」

「元? 何なんだ? それは」


誰も知らない、クリスタがそこに棲んでいる理由だった。


「大昔に突然変異でおかしな植物が生まれたんだって。その植物が、毒霧を発生させるんだよ。クリスタは、その植物の種を中腹より下に飛ばさせないようにしてくれてるしね」


増殖させないように、クリスタが管理してくれているのだ。


「もしかして、原因となっている植物を燃やすなりなんなりして消す事が簡単に出来ないという事か?」


ラクトは腕を組み、ファナの話を冷静に聞いていた。そこで不審に思ったのだろう。


「そうだ。植物なら燃やせるんじゃないか? なんでそうしない?」


バルドも不思議に思ったようだ。もちろん理由はある。


「すっごい高温じゃなきゃ燃やせないみたいなんだよ」


これにシルヴァが続ける。


《黒のは、丸一年ほど焔を吐かない事でそれを消し炭にするだけの強い火力を出せるらしいのだ》

「なら、一年に一つしかその植物を消せないのか? そうなると、増える一方のように思うけどなぁ」


バルドが考え込むようにしてそう言う。


その植物が多くあるのなら、それは気の遠くなるような年月が必要になる。


「だから、種をすぐに消すんだよ。種が一つ出来るのにも一年くらいかかるみたいだから。見つけ次第それ以上増えないように種を燃やすんだ。種はそんなに高温じゃなくても燃えるみたいでさ」


ただ、その一つを処分するのに焔を使うと、数日分、余分に焔の威力を高める為に時間をかけなくてはならなくなるのだ。


実際は、一年で一つ消すというわけにはいかない現状だった。


「それは手伝ってやれないのかな?」


オズライルは、一つでもその植物を冒険者達で消せないかと考えていたようだ。しかし、これも難しい。


「魔力じゃ、火力が足りないんだよ。師匠も手伝おうとしたみたいなんだけど、師匠の最大火力でもダメだったんだって」

「……魔女様でもダメって……」


クリスタでなければ無理なのだ。バルドとオズライルは、残念だと肩を落としたのだった。


読んでくださりありがとうございます◎



こっちも良いドラゴンさんみたいです。

大変な事をしています。

少しでも手伝えればとは思いますが……。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


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