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066 バルドとボライアーク

2016. 11. 20

バルドは、冒険者達と共にボライアークの背に乗り、ファナ達のいる丘を後にした。


最も近いギルドのある町の外で、ボライアークから降りると、冒険者達にギルドへ報告に行ってもらった。


ボライアークは、薬草採取での移動も乗せてくれるつもりらしいので、この場に残る事になる。そうなれば、門から少しばかり離れているという場所なのだ。見た者は驚き、恐怖するだろう。


見た事もない龍という生き物。それもかなり大きい。不安を覚えない者はいない。だが、バルドが傍に居ることで、それも軽減される。


襲う事もなく、触れられるほど傍にいるのだ。安全な生き物だと認識されるだろう。


少なくとも、バルドが襲われないのだ。危害を無闇に加えるようには感じないはずだ。


「こんな所で待たせる事になって申し訳ない」


バルドはボライアークへ思わずそう伝えた。すると、宙に浮いて待機しているボライアークは、頭をバルドの横まで下げ、ふっと優しく息を吐いた。


まるでそれは、構わないと言っているようだと受け取ったバルドは、その優しげな大きな瞳を見て確信する。


「ありがとうございます」


深く頭を下げると、またふっと息を吹きかけられた。


本当に邪龍などというのはとんでもないと思う。これほど慈愛に満ちた瞳をしているのだ。悪しきものなんて口が裂けても言えない。


しばらくすると、門から多くの冒険者達を引き連れ、一人の女性が出てきた。


真っ直ぐにバルドの前まで来る。その表情や雰囲気から、ボライアークに危害を加えようとしている感じはしない。


もしも向かってくるというのならば、バルドが相手をしようと思っていた。しかし、女性がはっきりとボライアークにも聞こえるように声を張り上げて言った。


「状況は彼らから聞きました。ご協力に感謝いたします。この国の戦士団も助けてくださるとか……愚かにも私たちはあなたに危害を加えようとしました。ですが、お許しいただけるであれば、厚かましい事ではありますが、この後もご協力をお願いいたします」


最後に深く頭を下げた女性。それに続き、後ろに従っていた冒険者達も頭を下げた。


バルドはボライアークを見上げる。すると、頷く仕草をし、真っ直ぐにバルドを見つめる。


「……許すんですね」

《っ、っ……》


その瞳から何かが伝わってくる。それは、自然と理解できた。受け取った意思を、冒険者と女性に伝える。


「許すそうです。この後も、薬草採取に付き合ってくださるようですよ」

「ありがとう……っ」


その後、女性はテキパキと冒険者達を割り振る。それに不満を言う事なく従う冒険者達を見て、バルドにはこの女性がギルドマスターなのだと察する事ができた。


半数を馬で先に現場へ向かわせる。その際、薬師を乗せ、製薬に必要となる道具も運ばせ、今あるだけの薬草も運ばせる。


それを見ていたバルドは、ふとある場面を思い出す。


「あ、ま、マスターっ、ここに一抱えほどの大鍋はありませんか?」

「大鍋? 確か……炊き出し用のがあるが?」


思い出したのは、製薬室でフードを被ったファナの横にあった大きな鍋。あの時、明らかに使っていた痕跡が見て取れた。きっとファナには必要なのではないかと思ったのだ。


「それも一緒に運んでください」

「あ、あぁ……分かった」


何故必要なのか、問いかけたそうに見えたが、無理やり納得し、ギルドマスターは冒険者達に指示を出した。


そうして、半数はバルドと共にボライアークに乗って薬草採取に向かったのだ。


薬草を一通り集め終わる頃になって、バルドは、ファナが残った事に対して不意に不審に思った。


「そういえばファナの奴……なんで俺らに全部任せたんだ……?」


ファナならば、杖で飛び、薬草もすぐに見分けをつけてそれほど時間をかけずに製薬にまで持っていけたはずだ。


特にファナの性格が理解できるようになったバルドは、こんな時、ファナはわざわざ時間がかかると分かっている他人の手を借りるような性格ではないと感じていた。


それは恐らく正しい。


バルドに頼むよりも、ファナ一人で駆け回った方が効率が良い事ぐらい分かる。それをしなかったという事はそれよりも重要な何かがある。それもファナでなくてはならないものがあの場にあるのだ。


「まさか……ラクトに何か……」


ファナは直感や勘が鋭いように思う。バルド達では対処出来ない何かが起こる予感がしていたのではないかと思った。


「これは急いだ方が良さそうだな」


ボライアークが薬草が揃いやすい場所へ運んでくれた事もあり、採取は順調だ。これならば、夜半には全て用意する事が出来る。


「採り過ぎないように注意してください」


ついて来た薬師達が冒険者達に指示を出す。正しい薬草を量も鑑みながら、確実に指示してくれるので、はっきりいって有難い。


バルドだけでは確実な判断は出来なかっただろう。


「もう後、半分です。皆さん、よろしくお願いします」

「おぉっ」

「任せろ!」

「うっし、気合い入れろっ」


ボライアークは、集まった薬草を少しずつ薬師と共にファナの所へ運んでいる。戻って来た時の様子では、まだ事は起きていないようだと判断できた。


「もう少しだ……間に合ってくれよ」


ファナが対応しなくてはならないと思っている事態。その時に何が出来るかは分からないが、バルドは少しでも役に立てるならばと、それに間に合わせる為にも一層気合いを入れたのだった。


読んでくださりありがとうございます◎



バルドも勘が鋭いです。

嫌な予感がしているのでしょう。

人海戦術です。

これならばすぐにファナちゃん達の所へ戻れそうですね。

間に合うといいのですが。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


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