表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/285

060 伝説の?

2016. 11. 11

ファナは、ドランに遥か上空で待機するように指示していた。


お陰で、こちらに気付いたバルドにもドランは見えなかったらしい。


「もしかして……バルド、怪我してるんじゃ……」


地を這いながら、戦士団へ近付いているようにも見えたのだ。しかし、そうする意味が分からない。


そうしてじっと観察した結果、背中に斜めに走る線を見つけたのだ。


これはいけないと、ファナは急降下し、バルドの下へ降り立った。


「バルドっ。傷見せて」

「あ、あぁ……」


ファナは素早くバルドの傷を癒した。これで大丈夫だとラクトへ目を向けたファナは、その異変に気付く。


「兄さん……?」


いつものラクトならば、とっくにファナの方へ来ているはず。しかし、ラクトは真っ直ぐに一人の男を凝視したまま動かない。


じっと、何かを見極めようとでもするかのように、その瞳には強い光が宿っていた。


不思議に思いながらも、ラクトが手にしている剣へファナの視線が釘付けになる。


「あの剣……まさか、白光びゃっこう?」

「白光って、賢者の剣だろう? なんでラクトが持ってるんだ? あいつは魔王なんだろう?」


時に勇者の剣とも言い伝えられていたもので、悪しき者を消し去る力があるらしい。


《魔王のイメージはアレか? 悪の権化とかいうものだろう。あんなものは当てにならん。善と悪など、立場によって変わるからな》

「シルヴァっ!?」


突然傍らに現れたシルヴァにバルドが飛び上がって驚いた。


《驚かせたか? 兄殿の邪魔になりそうだったのでな》


シルヴァは、ラクトが何かしようとしているのを見て、自分が後ろにいては集中できないかもしれないと、気をきかせたらしい。


ちょうどファナが来たので、合流したというわけだ。


「兄さんはこれでも気付かないか……」

《それだ。兄殿は我が動いた事にも気づいていない》

「なんで? ってか、なんか怒ってない?」


ラクトからは怒りの感情を感じている。しかし、ファナにはなぜ怒っているのかが分からなかった。


《バルドが怪我を負った時からだからな。おそらく、あれで敵と認識したのだろう》

「お、俺?」

「へぇ、兄さんって友情とか大事にする人なんだ」


少しばかり見直したと笑う。


「いや、だが、あれは危なくないか?」


バルドが改めてラクトを見る。感じるのはチリチリするほどの鋭い殺気。それは王に向けられているから平気だが、まともに受けたらひとたまりもなさそうだ。


《いつの間にか馬はおらぬしな》

「……本当だ……気付かなかったな……」

《早々に森に逃げたようだ》

「あんな殺気を食らってたら、馬なんて一発で泡吹いて死んじゃうって」


王が乗っていた馬は、王を振り落としたようだが、それは、ラクトが突風を吹かせた時だったのだろう。


微かにバルドとシルヴァは馬の嘶きを聞いたような気がしていた。


「で? これって、なんなの? あの人、何?」


ファナはここへ来て状況を尋ねる。ファナが見たのは、ラクトが男を睨んでいる所だけ。なぜこのような状況になっているのかも、男が何者なのかも知らなかった。


「それに、あの人……正気せいきが感じられないんだけど……」


見た事もない大きな体をしているし、それが通常なのかどうかが分からない。


「ラクトがそういえば、もう死んでるっぽい事を言ってたな……」

「やっぱり死んでる?」

《動かしているのは、あの纏っている黒い何かなようだな》


男の周りは、空間が歪んでいるように見えた。黒くドス黒い何かが渦巻いているのだ。


それを見てファナはハッとする。そして、アイテムボックスから封印の壺を取り出した。


「あれ、これと一緒じゃない?」

《どれどれ……》


シルヴァはファナの手にある壺を見回し、匂いを嗅ぐ。


「なんだ? それは」


バルドが不思議そうに覗き込む。しかし、蓋が開いているわけではないので、中身は当然分からない。そのまま静かにシルヴァの意見を待つ姿勢を取った。


《同じだな。強い憎悪だ。これは……人だな。ここまでの負の感情を育てるとは、何があったのか》


シルヴァはなぜか心底感心していた。それだけ一見人にはあり得ないほどの強い想いだったのだ。


「ねぇ、あの剣なら、あれごと切れると思う?」

「賢者の剣だろう? 悪……あれはどうみてもよくないものだからな……斬れるんじゃないか?」

《兄殿もそのつもりのようだ》

「え?」

「あっ」


その時、ラクトが真っ直ぐに剣を振り下ろす。それは、一瞬で遠く離れている男の場所まで伸び、光の棒となって一直線に大地に線を描いたのだった。


読んでくださりありがとうございます◎



ファナちゃんも、らしくないラクト兄さんに戸惑い中?

やっぱり怒っています。

剣の威力とは?



では次回、一日空けて13日です。

よろしくお願いします◎


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ