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055 作戦?

2016. 11. 4

ラクトは名案を思い付いたと、意地の悪い笑みを浮かべる。


「バルド、あれらの中で一番偉いのはどいつだと思う」

「ん? あの中で……一番なぁ……難しいぞ……偉いやつじゃなきゃダメなのか?」


戦士団の中で偉いといえば、団長だが、ラクトが言うのは、全ての戦士団の中でというものだった。


団長達の中で、この場を指揮している人物。それを特定するのは難しい。


「その辺の雑魚に聞いても意味がない。指揮官クラスでなければ話を聞いた所で、本当の出撃理由など分からんからな」


下の者達は、ただ命令を聞いて動くだけの兵隊だ。それが何の為で、どうしてそうしなくてはならないのか。それらを知らずに動く。


その行動が必要だと考え、決定したのは国の上の者で、多くの情報を握っている。他に知られてはマズイ情報も握り込んでいるものだ。


全てを知る為には、その上層部の少数の者を見つけなくてはならない。


「引かせるにしても、そいつに判断させなくてはならん。特定しておいて損はない」

「なるほど……けどなぁ……」


こう遠くてはよく関係性も見えない。そうバルドが戦士団を見回していた時だった。


「ん? あの顔……」

「知ってる奴でもいたか?」


ラクトがそれとなく目を向けた方向。そこに、少々毛色の違う服装の男がいた。


《弾力のありそうな腹だな》

「そこは感心する所なのか?」

「そうだな。あの丸いフォルムは転がし甲斐がありそうだ」

「……」


微妙に貶しているようだが、はっきりと太っていると言わない辺り、嫌味が入っている。


「よし、あれが恐らく何番目かの頭だ。バルド、拉致って来い」

「…………は?」


ビシッと指をさし、そう言ったラクトに、バルドは目が点になった。


「は? ではない。さっさと連れて来い。この森を抜けた所に岩場があっただろう。そこで待っている」


そう言って、ラクトはさっさと背を向けていた。


「はぁ?」


指示を受けたたバルドは動揺していた。


《仕方がない。やるぞ。アレを攫えばよいのだろう……重そうだな……》

「こ、転がせばいいのか?」

《成る程。それでいこう》


完全にバルドの判断力はどうかしていた。


なぜかラクトの指示には従わなくてはならないという思いと、その指示を遂行したらきっとこの場の収拾がつかなくなるだろうという予想。それらが複雑にせめぎ合い、整理が付かぬ間にバルドの体は動き出していた。


何より、シルヴァがやる気だったのだ。


《乗れ》


言われて反射的にバルドは、いつの間にか本来の姿に戻ったシルヴァの背に乗る。


これによって誘拐犯として責められるのは目に見えているが、なぜかそれも仕方がないと思ってしまった。だが、冷静な部分は少しだけ残っている。


「一度話が聞きたいと提案してみよう。それで、来てくれるなら良し、ダメならそのまま攫う」

《分かった。威嚇してやろうか?》

「気絶したら面倒だから控えてくれ」

《よかろう》


シルヴァはこの提案に納得して頷く。いかにも気が弱そうなのだ。まさに後ろでふんぞり返りながら指示を出す指揮官らしいといえばらしい。


バルドが乗ったのを確認したシルヴァは、一気に加速する。


姿勢を低く落として乗るバルドは慣れたものだ。しかし、戦士団の者達は、一瞬で風のように駆け抜けたシルヴァを見送り、呆然と立ち尽くす。


その人の前で充分距離を置いてシルヴァが止まった。


「指揮官殿とお見受けする。この度の出陣の理由をお聞きしたい」

「なっ、何者だっ! 無礼なっ。あの者を捕らえよ!!」


シルヴァは威嚇してはいない。しかし、やはりというか、気が弱かったのだろう。信じられない程動揺している。


《あれは、言い慣れているな》


普段口にし慣れている言葉が思わず出ているといった様子に見えた。


「最初から無理だったかもしれん……」


これでラクトの所へ連れて行ったとしても、話すかどうか怪しい。しかし、ここはその方針に決まっているのだ。考える余地はない。


「行くか」

《うむ。方向はあちらだな。そうなれば……》

「お、おい。シルヴァ?」

《問題ない。伊達に主と暮らしてはおらんからな》

「いや、意味が分からんのだが……」


シルヴァには何やら作戦があるのかもしれないと、とりあえずバルドは従ってみる事にした。


《入射角良し、力加減が難しいが……障害物が多いからな……うむ。これは経験がものをいうな》

「シルヴァ? 早くしないと、来てるぞ」


戦士団の者達は、命令を受けて反射的に動き出した。まだシルヴァを見た衝撃から立ち直ってはいないはずなのだが、体はもう命令に従ってしまうのだろう。


徐々に向かってくる戦士団の者達に、バルドがどうするのかとシルヴァにしがみつく。


《しっかり摑まっておれよ》

「わ、分かった」


その返事を聞くと、シルヴァは向かってくる者達の間をすり抜け、一瞬の後には、その男の目前に迫っていた。


「ひっ」


みっともなくも尻餅をついたその男を、シルヴァはあろうことか思い切りよく突き飛ばしたのだった。



読んでくださりありがとうございます◎



雑な作戦です。

ですが、一応言い分は聞いてやっても良いかなと。

礼儀もそれなりに尽くしましょう。

そして、豪快にゴロゴロ?



では次回、一日空けて6日です。

よろしくお願いします◎


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