表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/285

052 魔術師達も必死でした

2016. 10. 31

ファナはドランを頭に乗せ、ギルドマスターの部屋を出る直前、思い出したように鞄を漁りながらツィンを振り返った。


「良かったらこれ、魔術師達に飲ませてやってください」

「それは?」

「魔力回復薬です。効能が高いんで、薄めて飲んでもらわないといけないんですけど」


受け取るために近付き、手を出したツィンに、次々と瓶を取り出して乗せていく。


「ちょっ、何本あるんだ」

「とりあえず、八本渡しておきます。一本で十人分なんで」

「じゅっ、十人分!?」


魔力回復薬は、薬としては作るのがかなり難しい。シルバーランクでもそうそう出回らない代物なのだ。


しかし、ファナの作る薬は、当然というか、間違いなくプラチナの上のクラウン。飲む量を間違えると、中毒を起こしかねないものになっている。


「一応、鑑定してもらうと分かるんですけど、クラウンなんで、量を間違えないでくださいね。十人分ですよ。コップ一杯の水に二、三滴ほど混ぜればいいです。まぁ、この半分くらいを飲まなければ大丈夫だと思いますけど」

「そ、そうだね……クラウン……クラウン!? き、気を付けるよ……お代はどうしようか」

「予言者の情報と、ボライアークへの攻撃を止めさせるという事で手を打ちましょう」

「そ、そんなものでいいのかい?」


はっきり言って、お金に換算すれば国が一つ、二つ手に入るほどだ。交換条件など成立するはずがない。


「構いません。では、よろしくお願いしますね」

「あ、あぁ……」


ファナはあっさりと部屋を出る。薬なんていくらでも作れるのだ。惜しくはない。それも、半分以上、ファナにとっては暇潰しでしかないのだから。


「さてと、ドラン。行くよ」

《シャァァっ》


ドランも気合いが入っている。ファナも神樹と呼ばれているものへ近付くとなると、覚悟がいる。


未だ、あれがなんなのか分からないのだ。感じる強い悪意。そこに意思がなかったとしても、この場からその存在を感じるだけで震えがくるのだ。


また意識を持っていかれないように気をつけてなくてはならない。


ギルドを出ると、雨は止んでいた。


「どこまで影響があるか分からないけど……飛んで行ったほうが早いね。バルド達が止めてくれてても、急いだ方がいい」


ツィンに止めてくれるように頼んではみたが、通達が行き渡るまでには時間がかかる。その上、ギルドマスターの言葉を、戦士団が聞くとも思えない。


彼らを止めるには、国に掛け合わなくてはならないだろう。ツィンならば、あの魔力回復薬の事もあり、そこまで手を回してくれるはずだ。しかし、それも今すぐにとはいかない。


「急ごう。あの木はどうにかしないと」

《シャ〜っ》


町を出て、すぐにファナは杖で飛んだ。速度は馬の三倍。それほど距離は離れていなかった為、あっという間にその木の全体像が見えた。


「……大きい……」


周りの木々は枯れ果て、所々、大地がむき出しになっている。その為、大きく成長したとしても、邪魔になるものはない。


《シャッ、シャッ、シャッ》

「ん?」


その大きさに圧倒されていたファナは、気付かなかった。ドランが首を伸ばして指す方へと何気なく目を向ければ、そこに松明を持って集まる黒い集団が見えた。


「……魔術師……?」


揃って動くが、足取りが重いようだ。ファナは空高くから地上を見下ろしているのだが、その集団がノロノロと動くのが見えていた。


松明を持った彼らがやろうとしている事はすぐに分かった。


「魔術が使えないから、松明を持ってきたんだ……燃やす気?」


彼らも原因が分かったならば、それを排除しようと考えたのだろう。


切り倒すには太くなり過ぎた幹は歯が立たない。しかし、木ならば燃やせると思ったのだ。


「……そう簡単にいくようには思えないけどね……」


やがて根元近くまで辿り着いた魔術師達は、神樹を取り囲み、松明を木へ投げかけた。


ファナは、これでカタがつけば良し。彼らも怒っているようだし、ここは見届けさせてもらおうと、木の真上ではなく、全体が見える距離で宙に待機していた。


しかし、投げつけられた松明は、木に燃え移らなかった。ファナには一瞬、木が何かしらの力を放出したように感じられた。それによって、松明を跳ね返したのだ。


「あらら……」


そして、それは根元近くにあった枯れ草へ燃え移り、魔術師達を巻き込む勢いで周りを火の海へと変えていく。


慌てた魔術師達は、逃げようとするが、それほど体力が残っていなかったのか、足をもつれさせ倒れるものが続出していた。


「これはダメだね……」


さすがに気の毒過ぎて見ていられなかった。


ファナは次の瞬間、豪雨のようにこの場一帯に水を降らせたのだ。


読んでくださりありがとうございます◎



魔術師は、魔術を使うのが仕事。

それが出来なくなれば困ります。

原因が分かったなら、少々体が悪くても、どうにかしたいですよね。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「ファナはあっさりと部屋を出る。薬なんていくらでも作れるのだ。惜しくはない。それも、半分以上、ファナにとっては暇潰しでしかないのだから。」 惜しくはないでしょうが、金銭感覚を身に着けると言…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ