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044 特別クエストの依頼

2016. 10. 20

昼前、ノークはイクシュバを出て行った。


これでようやく動けるとファナは今後の事を考える。


「やっぱりここから東に向かって……」

「ファナっ、一度でいいから屋敷にっ」

《兄殿……めげぬな……》


なぜここまで拘るのか。そう聞こうと思った時だった。


「ファナさん。マスターが至急、来て欲しいと」

「私に? 何かしたかな?」


ギルドマスターであるオズライルはファナの後見人なのだ。呼び出されるような事に心当たりがあるような気もする。


《ユズルのギルドで暴れた事か?》

「あれは喧嘩を売ってきた奴らが悪いじゃん。王子様と宴会した事じゃない?」

《それならば、兄殿が呼ばれるべきだろう》

「確かに……」


オズライルの待つ部屋に向かいながらも色々考えてみたのだが、どれもピンと来なかった。


呼ばれたのはファナだけだったのだが、心配なのかバルドもラクトもついてきている。それならばと、最も可能性のある呼び出しの理由については、ラクトが率先してやらかした事だと言ってやろうと決めた。


大きな扉の前まで来たファナは、落ち着いてノックする。


「ファナです」

「入って〜」


少し高いオズライルの声を確認して、扉を開けた。


「おや。予想通り若様までついてきたねぇ」

「捨ててくる?」

「ファナっ!?」

「なるだけ遠くに頼めるかなぁ」

「おいっ! ふざけるなっ」


ラクトが本気でツッコミを入れてくる。


「冗談のつもりないけどねぇ」

「マスター……ラクトも落ち着け」

「まったく、食えないじぃさんだ」

「若様はからかい甲斐があるよ」


これは、オズライルの愛情表現みたいなものらしい。侯爵の子息に、冗談を言って笑みを浮かべる所は、本当に食えない人だと感じる。


「それでマスター。私に何のご用?」


ファナはさっさとオズライルの腰掛けたソファの向かいに座り、要件を尋ねた。ラクトをネタにしたのはファナであったはずなのに、既にそんな事、忘却の彼方だ。


「うん。ちょっと特別クエストをお願いしたくてねぇ」

「特別クエスト?」


首を傾げるファナに差し出したのは、黒い縁取りのされた依頼書だった。


「黒?」

「ちょっ、マスターっ。国からの依頼をファナにっ?」


その黒い縁取りのされた紙を見て目を剥いたバルドが慌てた様子で言う。


「何? 国だと?」


ラクトは眉を寄せ、責めるような目をオズライルへ向けた。


「うん。そんなに睨まないでよ。僕だってね、あんまりファナちゃんを国に知られたくないんだよ?」

「ならばなぜだ?」


弱った顔で頬を掻くオズライルに、ラクトが更に責め立てる。


「だってねぇ。どの国の冒険者もお手上げだったんだもん」

「へ?」


これにはファナも顔を顰めずにはいられなかった。


「ま、マスター……どの国のと言うと……?」


バルドが嫌な予感を感じながらも確認の為に尋ねた。


「どの国って、この大陸全てのって事だよ。この依頼は、この国だけじゃなくて、この大陸にある国全部からの依頼なんだよね〜」

「はいっ?」


そんな規模の依頼など、バルドでも聞いた事がないと、声を挙げる。


未だ混乱するファナ達に構わず、オズライルは話を進めていく。


「大丈夫だよ。内容は調査だからねぇ。ただ、フレアラント山脈を越えてもらわないといけないんだけどねぇ」

「……」


もはやバルドは声が出ないようだ。


「山脈を越える? 私のファナをどこへ向かわせる気だ?」


ラクトは依頼内容以前に、ファナを向かわせる場所が気になるようだ。


「えっとね〜。西側ではあるんだけど、それ以上は、調査して向かうべき場所を調べてもらわないといけないんだ」

「あの、マスター? 一体何を調査するの?」


ファナがいまいち要領を得ないと困った顔で尋ねた。すると突然、部屋の窓がカタカタと鳴ったのだ。



読んでくださりありがとうございます◎



お兄ちゃんもついて来そうです。

移動には困らないかもしれません。

ここからようやく始動でしょうか。



では次回、また明日です。

よろしくお願いします◎


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