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040 反省しているようです

2016. 10. 14

ファナとラクトが去っていった部屋で、ノークが深く反省していた。


「あの時は、周りが見えていなかったんだ……」


いつもならば、後片付けを無理やり他人にさせるなんて事も、ましてや、製薬室を使っていた者を追い出してしまう事もしたりはしない。


「非常事態だったってぇのは、俺も分かる。ファナだって分かってると思うんだが、どうも貴族とか、見下したような高慢な態度が嫌いらしいからな。そういう所、ラクトと似ている」

「妹か……気付かなかったな……」


ノークは、ラクトとファナの姿を思い出し苦笑する。


「もっとちゃんと見るんだった」

「目元は似てるぞ? 謝ったら、見てみるといい」

「あぁ。だが、あの様子だ。許してくれるかどうか……」


ファナが部屋を出る前に浮かべた笑みは、とても好戦的なものだった。きっと、本気で殴るつもりだったのだろう。


「土下座ぐらいしなきゃなぁ。だいたい、事情を知ったらラクトも怒りそうだ」

「そうか。そうだな。昔のあの妹への思いを考えると、きっと俺がした事を知ったら怒るだろうな」

「間違いなくな」

「ははっ……墓の用意を頼む……」

「……いや、うん……覚悟は必要か……」


二人して暗い影を落とす。それほど、ラクトの妹の可愛がりようは昔から凄かったのだ。


「あの頃。実際に妹に対しての態度を見てなくても、分かったもんな……」

「会う度に『私の妹は世界一可愛い』と豪語していたよな……」


懐かしい情景は、心温まるもの半分と、馬鹿みたいに妹自慢をするラクトの笑顔で彩られている。


「あっ、あと、大事な事を伝えてなかった」

「何だ?」


バルドは、ラクトの妹である事がファナの正体と説明するつもりはなかったのだが、必然的にそうなってしまったのだ。


しかし、これだけは言っておかなくてはとラクトのせいで緩んだ気持ちを立て直す。


「ファナは、渡りの魔女様の弟子なんだそうだ」

「……魔女様の……?」


言われても、ノークはピンとこなかったようだ。普通、そんな事を言われてもすぐには信じられないだろう。


それだけ、魔女自体も出会う確率の低い。伝説の人なのだから。


「冗談か?」

「いいや。その証拠が……シルヴァ」

《無事に目が覚めたようだな》

「あ、あの獅子……」


シルヴァは分かりやすいようにと、本来の姿で現れた。背中には小さなドランが乗っている。


ノークは、ユズルの町からバルド達がこの姿のシルヴァに乗って出て行くところを見ていたのだ。その時は、追わなくてはという意思ばかりで、それが何者で、どんな獣なのかを考える余裕はほとんどなかった。


「……っ」


ようやく顔色が戻ってきた所だったのだが、シルヴァの姿に圧倒され、再び顔色をなくすノークを見て、バルドがシルヴァへ視線を投げる。


その意味を汲み取り、シルヴァはいつもの子猫の姿に変わった。尻尾が二本あるだけの、少しばかり普通とは違う真っ白で上品に見える子猫だ。


「変わったっ?」

「さっきのが本来の姿だけどな。大きさもあるが威厳がなぁ」

《王たるもの、威厳なくしてどうする》

「人には刺激が強い」

《ふむ……なるほど、魔女殿や主を基準にしてはいかんという事だな》

「そういう事だ」

「……主……」


魔女という言葉よりも、シルヴァが主と呼ぶ方が気になったらしい。


ノークは、まさかバルドではないよなと、交互に見比べる。これにバルドは弱った顔をしながら答えた。


「シルヴァの主はファナだ。それと、ついでにそこのドラゴンもファナが連れている」

「ドラゴン……」

《シャァァっ》

「っ!?」


シルヴァもそうだが、ドランにも驚くだろう。ドラゴンなど、存在を噂されていても、見たものなどいないのだから。


「ドラゴンは……三つも首があるのか?」


見た事がなければ、知る由もない。


《ドランは特殊だ。気にするな。そういえば、我も気になっていることがあるのだが》

「な、なんだろうか……」


すっかり気が弱っているノークに、シルヴァが尋ねる。


《その着込みすぎなくらい服を着ている理由は……ピンクか?》

「ピンク?」


なんの事だとバルドがシルヴァを見た後、そういえばとノークを見る。


確かにいつもよりも着込んでいるように感じた。この仮眠室に運んだのはバルドだ。あまりにも憔悴した様子だったので寝かせる事を優先したのだが、改めて見れば、首下まで詰めた布が異様だ。


手首も見えず、足首も見えない。野宿をする旅人の中には、常に暖が取れるようにと厚着する者はいる。だが、これは異常だ。


「はっ! ピンクかっ」


ふとフラッシュバックした光景。それは、ファナが投げた物でピンクに染まったノークの姿。


《顔や頭についていなくて良かったな》

「……あぁ……その、何とかならないだろうか……水でも落ちないんだが……」

《主に頭を下げるのだな》

「……はい……」


どのみち頭を下げなければならないようだと、うな垂れたノークだった。



読んでくださりありがとうございます◎



体はピンクだそうです。

走ってくる間は忘れられていたかもしれませんね。

情けなさ倍増中です。



では次回、一日空けて16日です。

よろしくお願いします◎


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