259 最新作ですよー
2020. 4. 13
ノリノリで正義の味方っぽく間に入ったファナ。そして、速攻で怪しいローブを着た教会関係者は自分たちの影に捕らわれた。
「っ!?」
「ふふ〜ん。五人かあ。まあほどほどだね。ふふっ、最新作の魔術だよん♪」
ファナは影に足を取られて動けなくなっている五人に向けて手を翳す。すると、その影が上に膨らみ、彼らを包んだ。
《また子どもにするのか?》
「ふっふっふっ。それだけじゃないんだな〜♪ 最新作って言ったでしょ♪」
《……楽しそうに……》
ワクワクが止まらないファナを見て、シルヴァは、人臭い様子でため息をつく。呆れていた。
そして、ゆっくりと影が縮み、花が開くようにそこから子どもが出てきた。
《……子どもではないか》
「もうっ、シルヴァってばっ。よく見て! 女の子になってるでしょ?」
《分からんわっ》
「え〜」
五、六歳頃の子ども。髪も女の子らしく少し伸びている。だが、胸が膨らんでいるわけでもなく、これくらいの子どもの体格は男女でそれほど変わらないのだ。シルヴァに区別できないのは仕方のないことだろう。
自分たちの小さくなった手を見て呆然とする教会関係者。ローブはずり落ち、下に着ていたものも肩が出るくらいブカブカになっていることを不思議がる。
そんな彼らにファナは大きめの声をかけた。
「ねえ! ちゃんと女の子になってる?」
「……え……?」
言われて素直に確認する少女たち。そして真っ青になって内股になりへたりこんだ。
「な……ない……っ、ない!?」
「あ、成功みたい。やったね♪」
大成功だと喜ぶファナとは対照的に、少女たちは大混乱していた。
《……相当な衝撃らしいな……》
「っ……ぅっ……ふぅ……ふぇぇぇん」
「ありゃ」
《……どうするのだ? 本気で泣いておるが……》
「え? 知らな〜い。教会に帰ればいいんじゃない?」
「ひぅっ」
《戻れんようだな》
「え〜、いいじゃん。おウチに帰りなよー」
「うぅっ、うわぁぁぁん」
《……酷くなったな……》
身を寄せ合って泣きじゃくっている少女達。だが、ファナは平然としていた。煩いなと思うくらい。街中じゃなくて良かった。近所迷惑だ。
幸い、ここは荒野のど真ん中。見晴らしも最高だ。
そして、そこに庇った二人の男性が近付いてきた。
「あ、あの〜」
「これ……どうなってんの?」
最初の声は若い。見た目は兄のラクトと同じくらいだろう。
二人目がシィルとキィラの父親だ。あのお姉さんにしか見えないリナーティスと並べば親娘だと思う。
「あ、シィルとキィラのお父さんだよね?」
「ん? あ……ああ……シィルとキィラ……そ、そうだ」
それを聞いてファナの目が細まる。責めるような目に、父親は目を泳がせた。
「ちょっと、息子の名前忘れてたの? それ、どうなの?」
「い、いやっ……す、すみません……」
肩を落とす父親。そのせいで背負った荷物にふらついていた。それを青年が慌てて支えている。
「凄い重そうだね。ちょっと軽くなるようにしようか」
「へ?」
ファナは二人の荷物に軽減の魔術をかける。すると、本当に軽くなったことに驚いていた。
「なっ、な、なんっ、ちょっ、し、師匠! 本当に軽いんですけど!!」
「こ、これなら身体強化しなくてもいい! ってか諦めたヤツも入る! 戻らないと!」
どうやら、重さのために諦めた荷物があったようだ。
「お〜い。戻られるのは困るんだけど。寧ろ、家に戻って欲しくて来たんだけど」
「え? 家?」
「そうだよ。シィルが大変なんだからっ」
「シィルが……」
「いいから、早く行くよ!」
引っ張って行こうとしたのだが、そこでファナ以外は未だに泣きじゃくっている少女達に目を向けていた。
「ん?」
「あ、あの子達は……」
「置いて行くのはかわいそうだよ……」
《主よ……》
「え? なんで気になるの? だって、追われてたじゃん」
敵ではなかったのかとファナが不思議がる。
「でも、あれはちょっと……」
青年が痛ましげに見ていた。その時だ。
《おいおい。なに騒いでんだ?》
「へ? あ、神獣?」
それは小さなイリタだった。
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