251 大陸制覇完了?
2019. 12. 23
ファナは急激に大陸中に広まった『大陸新教』と呼ばれるようになったものについて、少々どころではなく、引いていた。
新教となったそれが崇めるのは大陸に棲まう三体の神獣。それと、何故か魔女だ。この魔女が最初は師匠だと思っていたのだが、どうやら違う。
三体の神獣に認められた魔女として、ファナのことを指しているらしいのだ。寧ろ、どちらかといえば、聖女的なものとして見られているという。ちょっとゾッとした。
「私が聖女とか……あれなの? みんなの認識的には、破壊神的な、暗黒の〜みたいなのが聖女って思ってる?」
「あ〜……」
バルドはコメントし辛そうだ。同じく、ユウヤとノバも口を閉じ、目を絶対合わせないつもりらしい。
「ファナが聖女とはっ……素晴らしい! 良く分かっているではないか!」
「兄さんには聞いてない」
「なぜっ!?」
一緒に行けなかったことを根に持っていたのか、帰ってきてからやたらとテンションが高い。鬱陶しさに磨きがかかっているラクトだ。戻ってきて三日目。そろそろ落ち着いて欲しい。
だが、ファナの思いとは裏腹に、急激に広がった『大陸神教』のせいで、興奮状態が継続中なのだ。
「私の妹であるファナがどれほど素晴らしいか! それをようやく世界が認めたということだろう! ジェイク、教会に寄付を!」
「それは昨日もその前も致しました」
「毎日するに決まっているだろうっ!」
「決まってねえよ、バカ兄貴!」
ちょっと恥ずかしくなって思わず隣に座るラクトを、ファナは殴り飛ばしていた。
「っ……ううっ……」
壁にべタンと顔面から当たり、そこでうずくまると、少しは大人しくなったようだ。
「それで、もうこの辺もその……神教? が主流になったの?」
この問いかけはユウヤに向けたものだ。彼ならば、調べてあるだろう。そういう能力は信用している。彼は期待は裏切らない。
「はい。三日前、山脈側から噂が届きました。それを待っていたのでしょう。各国の王達が動きました。西の神獣様が荒廃していた大地を復活させたという話や、東の神獣様が毒霧を管理しているということは、既に王達はご存知です。そして、中央の神獣様は魔女様と多くの国の関わる問題を解決されたというのも、同時に広がっており、神獣様人気はここ数年、密かに高まっていたのです」
ファナは魔女でありながら、気安く薬を提供していた。それも良かったのだろうという。怖い存在ではなく、敵に回らなければ助けてくれる聖女であると静かに、確実に広まっていたらしい。
そして、ここに来て、教会の企みを知った各国の王達は、その裏にそれぞれの思惑を隠しながらも、何かあった時に確実に敵に回ると判断した結果、今回のことをきっかけに一気に動いたというわけだ。
密かに調べも進めていたらしく、国の重鎮の中にも入り込んでいた教会の間者達も捕らえられていた。
「教会の方も油断していたのでしょう。常に自分たちが優位に立っていると思っていたらしく、あっさり捕まっておりました」
「そこまで国が上手くやったってこと?」
「いいえ。ラクト様が……」
「ああ……」
ファナに敵対した教会を、ラクトが許すわけがないのだ。ラクトは本気で駆除作戦を行った。これにより、隠れていた者も全て把握できた。ただし、全員を捕らえたわけではなさそうだ。
「数人は泳がせ、後を追っておりますが」
「さっすがっ」
「そうだろう、そうだろう!」
「……」
復活していた。ラクトはきっちり隣に戻ってきている。
「ねえ、この国で捕まえたのってどれだけいる?」
「ん? 三十人ほどだったか?」
「はい。正確には三十四人です。他に泳がせている者が三人ですね」
「う〜ん。それくらいなら一気にいけそう」
「何がだ?」
「アレだよ。子どもにするやつ」
「ああ……ん? アレをやるのか?」
「大人のむさい男とか、頑固な女より管理しやすくない? それもきっと心入れ替えちゃうよ?」
「……それは、心折れてってことだよな?」
バルドは正しく理解していた。
「それに、クリスタが気に入ったらしくてね。お土産によさそうでしょう?」
「それはいいな。よしっ、今から行ってやってしまいなさい」
「任せて〜♪ 数人ずつクリスタの所に送ってやるんだからっ」
《……迷惑……ではないと思うが……》
《キシャー!》
《ドランがヤキモチを焼いておるぞ》
《キシャー!!》
「大丈夫だよ、ドラン。クリスタにはドランが一番だからね」
《シャ……シャシャ……っ》
恥ずかしそうに体をクネらすドランはこれで良いとして、ファナは早速王城の牢へ真っ直ぐ向かった。
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