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244 調べはつきました

2019. 9. 16

本館に戻ったファナとバルドは、王宮から戻ってきたラクトに合流した。


そこには、ファナの弟子である薬師のトミルアートとノークもいた。彼らには王宮に戻った第一王女セシアの往診を頼んでいたのだ。


王への報告を行なっていたラクトと帰りに一緒になったらしい。ファナが来るだろうと思い、ここで待っていたのだ。


「お帰り。セシアさんはどうだった?」


ファナが真っ先に顔を向けたのはトミルアートとノークの方。挨拶待ちをしていたラクトは肩透かしを食らってソファで丸くなっていた。


それを慰めにシルヴァとドランが近づいていくのを目の端に置いておいて、ファナは二人に歩み寄った。


「おかしな所は見られませんでした。ビズ殿からも問題ないと。ただ、体調が悪いどころか、前よりも良いと言っておられましたが」

「どうやら、出戻りということで側室達からの嫌がらせもないようだ」


セシアは幼い頃から王の側室達から日常的に命を狙われていた。単にこれは正妃である彼女の母親への嫌がらせだ。第一王位継承権を持つフレッドをどうこうすることはできない。ならばせめてと思ったのだろう。


これによって、セシアはよく体を壊していた。毒によって弱っていたのだ。しかし、ファナが治療したことにより、それらの不調も全て解消されてしまった。


ちょっとした風邪さえ引かない正常な体になったのだ。


「侯爵と接触は?」

「周りがかなり固められていた。接触はない」


セシアの叔父であるイスクラ侯爵。彼によって、天魔石がもたらされた。セシアを害そうとしていたのか。何を考えているのか分からないのだ。


ただ、ファナやラクトの両親達とも気が合ったと聞いている。絶対にロクな人間じゃないというのがファナの見解だ。


その侯爵の調べはラクトが行なっていたらしい。ソファで落ち込んでいたラクトが口を開いた。


「アレは教会に踊らされただけの道化だったようだ。ただ、魔女殿の弟子であるファナのことも調べていたらしくてな……」

「へえ。まあ、教会が直で調べるより、確実に情報が入るかもね。うちが普通の貴族なら」

「そういうことだ」


ニヤリとラクトが笑う。同じ侯爵。家の力は同じなのだから、調べられないこともなかっただろう。だが、ファナのことはこの家でもトップシークレット。


王でさえ容易に手を出せないものになっている。そこをまったく関係を持たない教会が突けるはずはない。


「どんなことを調べてた?」

「薬師としての腕だな。ファナが魔女殿の弟子だという確かな証拠が欲しかったのだろう。それと、シルヴァだ」

《愚かなことだ。人の子が我を調べるなど不可能に近い》

「断言しないの?」

《好物など、そういった存在以外のことならば調べられよう?》

「それくらいしか無理ってことね」


客観的に見たシルヴァを知ることはできても、存在の仕方などを知ることはできないだろう。捕まえたとしても不可能だ。


「なら、特に警戒するほどの相手でもないか。王様は侯爵をどうするって?」

「教会との癒着の証拠を揃えた後に、警告するとは言っていたな。あの天魔石のこともある。あれを王宮へ持ってきたというだけで、王家を滅ぼそうとしたと取られてもおかしくはない」


天魔石は、本来の力を発揮していれば、一年もかからずして王家を根絶やしにできただろう。それだけの危険物を王宮に入れた時点で有罪だ。


「けど……そうなると教会は元から侯爵を切る気満々だったとか?」

「あり得るな。あれが天魔石だとバレる可能性は低いが、見る者が見れば気づく」

「うん。微かだけどオズじいちゃんも力を感じてたみたいだからね。アレって、存在感すごいもん」

「だな……」


そうして、気付ける可能性のあったのがラクトやファナだ。まんまとセシアをそのまま嫁がせることが出来ていたが、調べれば侯爵が関わっていることはすぐにわかっただろう。それは、セシアが亡くなっていたとしても変わらない。


今回は色々と偶然が重なって、彼らの予定よりも早く発覚してしまったが、上手くバレることなく回収までできていたとしても、侯爵はいずれ切られる運命であるように思えた。


「お嬢様の予想は正しいかと」


答えたのは部屋にお茶を持ってきたユウヤだ。


「それは、侯爵を教会が使い捨てしようとしていたってこと?」

「はい。何度か教会から侯爵のお屋敷に暗殺者が仕向けられておりました」


物騒な話をしながら、お茶をそれぞれの前に置いていく。


「止めてくれたんだ?」

「後々使えるかと思いましたので」

「やるねえ」

「お嬢様のコレクションに加える可能性を考慮した結果です」

「さすがっ。そこ重要!」

「恐れいります」


本当に有能だ。


「ユウヤ……コレクションってアレじゃねえよな……」


バルドが顔色を悪くしながら確認する。先ほどバルドはそのコレクションらしきものを見たばかりだ。


「そうですね。バルド様のおっしゃるものが歪な形の瓶の中身ならば合っていますが?」

「っ、こいつっ、そういや魔女様と同郷だったっ」


膝を突いたバルドに視線が集まる。


「ん? どうしたんだ?」


ラクトが不思議そうに見るが、実は彼はファナのコレクションを知らない。


「ファナは何か集めているのか? よかったら手伝うぞ?」

「いや、いいよ。アレは私じゃないと捕まえられないし。それより、侯爵を殺させないでよね。それだけで教会への嫌がらせになる♪」

「勿論だ。色々と吐かせねばならんしな。準備は整った」


侯爵捕縛作戦が決行されようとしていた。

読んでくださりありがとうございます◎

一週空きます。

よろしくお願いします◎

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