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237 悪巧みなノリで

2019. 6. 10

王は調べがついたら連絡をしてくれるらしい。どこまでも優秀だ。相当、恩に着てくれているのだろう。


「今度、クリスタを連れてくるよ」

「っ、よろしいのですか? しかし……不愉快だと思われないでしょうか……」


王はクリスタが怒っていると思っているようだ。


「クリスタは人が好きなんだよ。あの時の事も、ちょっと遊びに来た程度にしか思ってない。暴れたのだって、ウチの子だったしね」

「そ、そうですか。本当に良い神獣様なのですね」

「この辺りの大地の守護者だからね。この国に住む人たちは、庇護すべき我が子とでも思ってるみたい。だから、何されても怒んないの」


攻撃されたとしても、クリスタにとっては少々じゃれ付かれただけ。寧ろ、関心を示してくれたと喜ぶだろう。


「子どもですか……では尚更、ご挨拶せねばなりません」

「ふふっ。王様みたいな人がここの人で良かったよ」

「お褒めいただいたと解釈しても?」

「クリスタの友人としてお礼を言いたいくらいだけど?」

「光栄です」


本当に良い人のようだ。こういう人には長生きしてほしい。


「ねえ、王様。一つ約束して」

「なんでしょう」

「教会には直接手を出さないで」

「……クリスタ様に手を出すようなら、国として対応せぬわけには参りません。親を子が守ろうとするのは当然でしょう」


ここで王はクリスタを親と言った。そう思ってくれる人だからこそ、教会に目を付けられて欲しくはない。


「今回、連れてきた隣の王様がどうなってたかは報告で聞いてるんでしょう?」

「はい。正常な人の姿ではなかったと」

「天魔石を平気で人に埋め込む狂った奴らだよ。あれは使いようによっては、国一つを容易に滅ぼせるだけの力を持ってる」


そんな石を幾つ所有しているか分からないのだ。標的になってはいけない。


「クリスタのことを理解しようとしてくれる良い隣人は貴重なんだ。だから、滅させるつもりはない」

「……そこまで危険だと?」

「危険だよ。目的のためならあいつらは多分、この大陸に生きる人たちをどれだけ殺しても、尊い犠牲だとでも言って済ませる」

「あるかもしれませんな……」


たった一つの存在を信じる者達だ。その一つのためにならば、多くを犠牲にすることを躊躇わないだろう。


「だから、天魔石の影響を受けない結界を用意する」

「……そんなものが?」

「後は兄さんと相談すれば多分上手く行くと思う。それで城は保護するよ。だから、王様が話ができそうな他の国の王様へ働きかけてくれる? 教会が隣の王様にした事とか、クリスタ達のことを伝えて、教会が良くないものだってことを知らしめて欲しいの」


教会のことで脅威になるのは天魔石と民衆への情報操作能力だ。だが、所詮情報操作は情報操作。嘘が混じっている。真実には勝てない。


「大多数を味方につけるあちらのやり方を使うのですね。王から国民へ発信してもらうと」

「そう。情報操作をしてたっていうのも伝えられれば尚良しだね。そういう証拠も上がってきてるんでしょ?」

「もちろんです。私の民達を騙すなど許せませんのでね」


彼は意外と怒っていたようだ。


「ふふっ。自分達の専売特許が意味をなさなくなるってどう思うだろうね〜」

「ほほほっ。天罰とでも思っていただきましょう」


こうしてふふふ、ほほほと笑い合う様を他の誰かが見たらきっと間違いなく良くない話し合いをしていると思っただろう。


悪巧みにしか見えなかった。


楽しい会見を終えると、ファナは隣の王やテリア達を連れてクリスタの居る山へ向かった。


◆ ◆ ◆


城の中庭にドランが迎えに来てくれたので、それでファナ達は山まで来たのだが、やはりというか、ラクトは堪え性がなかった。


「すぐに教会を滅ぼそう!」

「「「っ……」」」

「ん? なんだこの子どもは」

「教会の人。後付けてきたからお仕置きで子どもにしちゃった☆」

「なるほど」


これで納得なのでラクトは物分かりが良い。


《これっ、怯えておるではないか。こっちへ来るがよい。ジュースがあるでな》

「「「っ……はい……」」」


大人しく子ども達は呼んだクリスタの方へ向かう。今も人化したままのクリスタは人外の美しさを見せている。用意されている長いテーブルや椅子は魔術で作ったものだろう。


毒霧のないこの山の山頂には、果物の実る木もあり、今まではクリスタの大きな体で見えなかったが小さな畑も見えた。


「クリスタ。もしかして料理もするの?」

「ここにいる間、ずっと作ってくれていたぞ」


そう答えたのはノークに頼まれて、ラクトのお目付役としてついて来たバルドだった。


「バルド。なんか……年取った?」

《そこは『疲れている?』と聞くところだと思うぞ、主よ》

「ん? 誰……もしかしてシルヴァ?」


そこには長い白銀の髪を背に垂らした美丈夫がいたのだ。


読んでくださりありがとうございます◎

また一週空きます。

よろしくお願いします◎

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