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2018. 6. 25

ラクトには『好いている者はいるか』という王の言葉の意図することがわかった。だから、当然のように反対を表す。それが殺気になってしまったのは、ラクトにとってそれだけの大事だからだ。


可愛い妹であり、前世で一度は亡くした娘なのだから、手放す可能性のあることに敏感だ。


「……ファナにそんな者……いるわけがないだろう……」

「むっ、う、うむ……落ち着け」


殺気とはいえ、王は慣れたもので、ラクトの反応に困惑するだけだ。近衛騎士も動こうとはしない。


首を傾げ続けるファナに、シルヴァが仕方がないと説明する。


《主よ。王は主が恋愛対象として見ている人物がいるのかと聞いているのだ》

「レンアイ……ああ。恋人とか結婚相手ってことね。ふんふん。いないよ?」


ラクトの様子など意に介さず、ファナは王へまっすぐに返事を返す。


「ファっ、ファナっ……いないよなっ。そうだよなっ」

「ウザい」


殺気を吹き消し、ラクトはいつものヘタレに戻る。ファナに対してだけこうなるのだから、奇妙にもほどがある。


これをファナは鬱陶しく思っており、冷めた様子で一切目を向けることなく、こうして一言で切り捨てるのが常だ。


「それで何? なんでそんな話?」

「む……そ、その……な……うちの息子の嫁に来てくれないかと思ってな」

「う〜ん……どんな人かも分かんないし、公式記録では復活したけど、侯爵家の娘としての義務みたいなのは果たす気ないんだよね」


一度捨てられたのだから、問題ないだろうというのがファナの意見だ。もう居ない者として扱って欲しいと思っている。


ラクトがファナが死んだという扱いになっているのが我慢ならずに、公式記録を復活させたのであって、ファナとしては迷惑だった。


もしも侯爵令嬢としての役目を全うしてくれとラクトに言われたならば、すぐにでも山に帰っただろう。しかし、ラクトは貴族の令嬢としての義務さえもファナに強要しなかった。


「だから、命令とかも受け付けないよ。さすがに、兄さんの顔は立てるつもりだから、今回も舞踏会へは参加したけど、これ以上はする気ないんだ。それが必要なことだとも思えないしね」


ファナにとって、ラクトは唯一の肉親だと思っている。それに、口にしたことはないが、何か強いつながりのようなものを感じてもいる。


それが前世からの影響なのではないかとも思えるが、はっきりと確認しようとは思っていない。


そこで、ラクトが飛びついてくる。


「ファナぁっ」

「うっ……暑苦しいっ」


どうやら『兄さんの顔は立てるつもり』という言葉に感激したらしい。いつも素っ気ない態度を取っている反動だろうか。


「ファナがデレたっ……可愛い過ぎるっ。こんな可愛いファナを嫁に!? 絶対ダメだ!」


最後はやはり暴走するのかと呆れる。そんなタイミングで、そばに控えていたユウヤがラクトへ助言する。


「ラクト様。これ以上暴走されますと、ファナ様に嫌われますよ。後五秒以内に離れないと、一週間は口を利かないと見ました」

「っ、離れましたっ」

「ちっ……」


ユウヤの見立ては正しく、もう少ししたらキレて『一週間口を利かない』を実施していただろう。優秀な執事に感謝するべきだ。


「……ラクトはいつもこうなのか?」

「そうですね。大半がこんな感じです」


この場でユウヤが一番話しかけやすいと見た王がそう問いかければ、ユウヤはあっさりと返していた。


「そ、そうか……いや、いつもと違う一面を見られて嬉しいんだがね。ラクトは真面目過ぎるところがあるからな」


それを聞き、ファナは怪訝な顔をする。


「真面目……真面目って、真面目ってこと?」

「……言いたいことはわかるんだが……納得するのは難しそうだな……」


王は気の毒なものを見るような目で一瞬ラクトを見ていた。


「そ、そうだ。本題なのだが、良いだろうか?」

「いいよ。兄さんはもう少ししないと落ち着かないから、続けて」


危うく地獄の一週間が始まるところだったという事実を、ラクトは今重く受け止めていた。深刻な顔でファナとは距離を取っている。時折チラリと視線を向けてくるので、そろそろウザくなってはきたが、それもユウヤが助言して止めてくれていた。


本当に優秀な執事だと感心していると、王が姿勢を正して話を始めた。


「あれから、イスクラ侯爵の動きについて調査を始めた。そこで……あちらの王弟とつながりがあることがわかったのだ」

「王弟? 王様じゃないんだ」

「うむ。王は好戦的で、昔から自らも戦場が好きだと公言していた。先代も同じような性格だったよ。あれは血だろうな。だが……王弟は少し違うらしい。あの王家に始めて生まれたまともな人というべきだろうか……外交もソツなくこなす人物だったよ」


そんな人だからこそ、王家に不満があったのかもしれない。


「その王弟は、よく教会へ行くそうだ」


そこでシルヴァを見る。王は気付いているのだ。シルヴァが神獣であると。おそらく、そこのところは調べてあったのだろう。


ファナも特に今まで隠した覚えはない。本来の姿になれば、いらぬ憶測で面倒なことになると思い、子猫の姿になってもらっているだけで、別段隠してはいないのだ。


「教会って……もしかして、一般的な方じゃなくて、昔からの裏の方?」

「ああ……神の降臨を願っている強硬派の方だ。あの国には、聖女流しの教会がある」

「魔族との戦いの原因になったって言う?」

「そうだ……」


彼らはシルヴァ達、神獣を倒そうとしている。全ての神獣を倒した時、神が天から舞い降りるのだそうだ。


この時、ファナはふと思い当たった。


「もしかして……ボライアークのアレも奴らが……」


それから、後ろにいるユウヤに意識を一度向ける。彼が起こした騒動も、無関係ではないかもしれないと思ったのだ。


読んでくださりありがとうございます◎



ユウキに感謝すべきですね。



次回、一度休ませていただき

月曜9日0時です。

よろしくお願いします◎

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