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165 親バカ極まる

2017. 9. 11

短いですが。

ファルナはランドクィールの元、元気に育った。気付けば十歳となり、できる事もどんどん増えていた。


ただ、ファルナが心配なのは、年月を重ねる毎にランドクィールが過保護になることくらいだ。


「ファナっ、また騎士達と稽古をしたのか? 怪我をしたら危ないから、やめなさいと言っているだろう」


今日もランドクィールはファルナを追いかけながら説教していた。


「大丈夫だって言ってるじゃん。力じゃ敵わないけど、戦略的には負けてないよ」


ファルナは力があるわけではない。それでも戦い方を工夫すれば、騎士の中でも実力者であるナナリアとも互角に戦えることができるようになっていた。


「それでも分からないだろう」

「もうっ、ほら、怪我してないでしょ?」


ランドクィールの目の前で立ち止まり、手を広げて見せる。


手足は伸び、背も出会った頃よりもかなり高くなった。それでも頭の位置はランドクィールの胸の下だ。髪は邪魔だからと伸ばしたがらず、肩口を越えるとすぐに切ってしまう。


子どもの顔から少女の顔へと変わり、ランドクィールの目から見てもかなりの美人だ。肌は白いがそれは病的な白さではなく、美しい。赤すぎない唇は薄く、目は子どもの頃から変わらない煌めきを宿している。


「して……ないっ、がっ、ムキムキになったら困るからやめてくれっ」


そう言って、ランドクィールはファルナを抱きしめる。もちろん、これは親としてのスキンシップだ。そのついでに肌の張りを確認するのは忘れない。


昨日よりも背中の筋肉が強張っている。これは要注意と心に留め置く。


「そこまで鍛えてない……やりたいけど」

「今からあまり鍛えすぎると胸が育たなくなるぞ。ナナリアを見ろ。男とあまり変わらんだろ」

「……それ、ナナちゃんの前でも言えたらやめる」

「……」


可愛い娘のためと思ったのだが、分かってもらえなかった。


「ほら、お仕事戻って。後でお茶持って行くから」

「ああ……」


渋々離れ、執務室へ向かう。ただ、会えなくなる数時間用にその姿を目に焼き付けるのは忘れなかった。


一人執務室に戻り、仕事に取り掛かる。大陸全てを統治するというのは当然大変なことで、毎日のように各地から届く報告書に目を通さなくてはならない。


もちろん、各部署からそれぞれ選別され、最終的に王の決裁が必要となるものだけが上がってくるのだが、それでも少なくない数の書類となって執務室に届けられるのだ。


そうして、今日も積み上がる書類に手を伸ばした。


ランドクィールは別に机仕事が嫌いなわけではない。ただ、何日も何回も問題として上がってくるものに対して、放っておけないのだ。


騎士や兵達の状況も考えた上で、ランドクィールは乗り出す。


今回もその辺りを数日考えているものがあった。ただし、場所が問題だった。


「……船か……」


漁師達がここひと月ほど、何度も不可解な船を見るのだという。魔の海峡と呼ばれる最も危険な海域の向こう側。こちらに来ることはないようだが、何かを窺う様子に、漁師達は気味悪がっているらしい。


「あちらの物となると……対策はしておくか」


この大陸でも、大陸間の戦いの記憶は薄れてきている。危機感などほとんどないだろう。


「何かあってからでは遅いからな……」


何もなければいい。ただ様子を見るだけならば構わない。けれど、そうでないなら対策は必要だ。


こうして、対策案を早急にまとめだしたのだった。




読んでくださりありがとうございます◎



この頃からのようです。



次回、水曜13日0時です。

またお休みをいただくかもしれませんが

よろしくお願いします◎

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