132 闇の気配
2017. 4. 24
毎回、読んでくださっている方々。
申し訳ございません。
ドクターストップにより、5月3日まで休載させていただきます。
これに伴いまして、今回は少しだけですが、どうぞ。
一歩踏み出せば、そこは暗い森の中だった。
振り返れば丘の傾斜。けれど、先ほどまでの光に溢れ、力に満ちていた場所は見る影もない。
「戻って来た……」
「もう日が沈んでいたなんて……」
バルトロークとノバは、この場所へ無事に戻ってこられた事にホッとした。しかし、森の中心部に夜の闇の中立っている事は不安で仕方がないのだろう。少し怯えた様子を見せている。
一方、ランドクィールは冷静にこの状況を分析していた。
「なるほど。空間を作り出す歪みから、時間の経過に違いが出るのか……となると……」
顎に手をやり、思案するように振り返って置いてきた騎士達のことを考える。
「あれらが干からびるのも時間の問題だな」
この言葉を正確に理解したノバとバルトロークは焦る。
「……ら、ラク様?」
「うむ」
「なんの納得ですかっ。あいつら、早くこっちに連れて来ないとっ」
自分の分析が正しいだろうと満足気なランドクィール。しかし、それでは死んでしまうではないかとバルトローク達は大慌てだ。
そして、こんな時はいつでも温度差がある。
「死ぬ前にこっちを片付ければ良いのだろう? だいたい、コレがここに現れるモノから守る為に、あの空間へ逃しているのだぞ? あんな前後不確かな者達をこの場に放り出してどうする」
「……」
いつだって、ランドクィールが言う事は正しい。
《コレ言うなよ……》
「ならば、なんと呼ばれたいのだ? 主様か?」
《う〜ん……君にそう呼ばれるのは気持ち悪い……『ひと角』って呼んで》
「ひと角……いいだろう。では、ひと角。影というのはアレでいいのか?」
《ん?》
ランドクィールが指差した先。そこにのそりと姿を現したのは奇妙な黒い獣。
ゆらゆらと揺らめく輪郭。折れたらしい黒い角。モサモサとして瞳の見えない長い体毛。狼のような顔に見える。
《うわぁッ、気持ち悪い!》
「気持ち悪いとは……お前の影なのだろうに……」
《違うもん! そ、そうだけど違うよっ。全然似てない!》
「似てる、似てないの問題ではないだろう。気配はよく似ている。少しスパイス多めと言った所だな」
《上手く言ったつもりだろうけど、納得できない!》
「これだから子どもは……」
そんな会話を続けるランドクィールと、ひと角の後ろで、ノバとバルトロークはその圧倒的なまでの闇の力に怯えて固まっていた。
「……こんなの……どうするんだよ……」
「っ……」
歯の根が合わないという状況を、初めて経験していた。
読んでくださりありがとうございます◎
では次回、水曜3日の0時となります。
よろしくお願いします◎




