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110 ちゃんと見なさい

2017. 2. 6

ドランは下にいる兵達を踏み潰そうとするように一歩ずつ動き始めている。


それを止める為、ファナはシルヴァに乗って駆けていた。


《ドランのやつ、なぜあれほど怒っているのか……》


シルヴァは、ドランが怒っているのは分かるが、なぜ怒っているのかは理解できないらしい。


「そうだねぇ。武装した兵に囲まれるのが嫌いなのか……クリスタを攻撃したのが気に入らなかったのか……まぁ、どちらにしても、あいつらをどうにかしちゃえば良いって事だもんね」

《……主は相変わらず大雑把だな……》


ここで勝手に推測するのは面倒だ。根本的な問題を無くしてしまえば良いと考える。確かに大雑把だった。


シルヴァは、また口を開けて光線を出そうとするドランの下へ一息で駆けた。


逃げようとする兵達を、ファナとシルヴァは風を操り大通りの遥か先まで吹き飛ばす。


兵達の中には、道を外れて家の陰に隠れる者もいた。そこで、ファナはシルヴァから飛び降りる。


シルヴァは路地に小さな竜巻を発生させ、隠れていた兵達を大通りの方へ巻き上げ、引き寄せる。


見つけた者達を片っ端からファナは体を捻る最大級の威力で蹴り飛ばし、先に行った兵達へ合流させていった。


「邪魔」

《あと何人だ?》


兵達は素早く処理される。そうしている間にもドランは空へ威嚇するように光線を吐いていた。どうやら少しは冷静になったかと思いきや、ドランはまた無事だった家の屋根を光線で消しとばした。


《危ないな》

「家の中の人が無事みたいで良かったよ。さて、これで最後っ」


体全体で回転を加えた蹴りは、人をあり得ない威力で吹き飛ばす。


最後の一人も遠くへやった所で、ファナはシルヴァに再び跨る。


そして、奇跡的にドランの前に残された家の屋根へ登り、そこから声を張り上げた。


「ドラ、ラド、ランっ! そこまで!!」


それと同時に、ドランの目の前に空気大きな玉を出現させ、大きな音をさせて割った。これによってドランはハッと我にかえる。


《グっ、グラァ?》


ポスっと次に吐こうと思っていた光線の熱量を息と共に吹き出す。そして、三つの首は揃って少し曲げ、自分達の頭よりも遥かに低い所にいるファナとシルヴァを正面から捉える。


「ほら、うっとおしいのはあっちの方へ捨てたから、落ち着きなさい!」

《グル……?》


そういえば敵はどこへ行ったのかと、それぞれの首が左右や下に動く。


その後、自分の体をあちこち見回していた。


《あやつ、まさか本来の大きさになった事に気付いておらんかったのか……》

「そんな事ある?」

《あの様子はそれだろう》


シルヴァの指摘に、改めて見てみると、確かにそうだと思えた。


「……何で怒ったか、確認しておいてくれる……?」

《そうしよう。今後また、町中で突然暴れられては困るからな》


そう今後の為の対策を決めると、ファナはシルヴァから下りる。それから、ドランをいつもの小さなサイズへ変えた。


無理やりドランが封印を解いた事によって、ファナは一気に大量の魔力を失っていた。その時は、気が遠くなるような感覚と抑えている何かが弾けるような痛みを伴う。


今は何ともないが、あの感覚は嫌なものだった。それを思い出し、ファナは小さくなって飛んでくるドランに向けて言った。


「まったく、あんな雑魚相手に怒んないのっ。イラっとしたら、尻に噛み付いてやんなさい」

《シャ?》


ドランがシルヴァの背に乗るのを確認してから、町の人々が無事だったかを確認しようと、今いる家の屋根からフワリと魔術を使って飛び降りた。


ゆっくり左右を見ながら、気配を探る。ファナは感覚を研ぎ澄まし、血の匂いを嗅ぎ分け、怪我人がいないかを慎重に見て回った。


幸い、町人の誰にも被害はなかったようだ。最後に兵達が無様に転がっている場所に辿り着く。


「ひっ」

「っ……!」


なぜかとても怯えられた。


「なによ。そういえば、あんた達。何しに来たのさ」


そう尋ねると、怯えながらも隊長らしき年長の者が口を開いた。


「我らは、毒霧を広めるドラゴンを退治する為、国から派遣されたのだ……」


予想通りすぎて笑えるとはこのことだ。


「バカ? クリスタは毒霧を町にいかないように何百年と食い止めてくれてるんだよ? それが分かんなくても、毒霧をまとめてくれてたの見えなかったの?」

「え……あ、そういえば……」


クリスタのシルヴァは、フッと時折息を吐くような動作で山から降りてくる毒霧を空中へ送り、丸い玉にしていた。


それは、今も続いている。


ドランが暴走しても、クリスタは構わず毒霧を巻いていたのだ。


兵達はその様子を見る。遠くても、クリスタは大きいので、距離感が掴みにくい。だからこそ、その様子がちゃんと見えていた。


「あのねぇ、もちろん、国兵である以上、国の命令通りに動くのは正しいよ? けど、現場で動くのはあんた達なんだからさぁ。上手く考えなよ。アレ、攻撃すべき?」


クリスタの方を指差して答えを求める。すると、隊長らしき男は小刻みに首を横に振る。


「いいえ……我々が攻撃しなければ、町もこうなる事はなかったかと……」

「良く分かってるじゃん。国を守る兵であるあんた達のせいでこうなった。首になる覚悟ぐらいして上にちゃんと説明しな」

「はい……」


そしてこの後、兵達に協力させ、町の片付けをさせるのだった。




読んでくださりありがとうございます◎



お説教もしました。

後は……。



では次回、水曜8日の0時です。

よろしくお願いします◎


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