109 暴走中です?
2017. 2. 3
ドランが怒っている事は、誰にでも分かった。
《グゥゥっ!!》
三対の鋭い目は、全て足下の兵達に向けられている。
「……本物……」
男が呆然と呟く意味は分からないが、ファナは体勢を元に戻すと、どうすべきかと悩んでいた。
「完全にキレてるなぁ。あれで世界の半分を焼き尽くしたって言われてるんだよね〜。火を吐いたら、この辺の町は丸ごと消えるね」
「それはマズイな。バルドとノークが危ない」
「二人だけじゃないだろうっ!」
ファナは内心焦ってはいるが、それが表には出ていなかった。戦ったファナだから分かる。ドランの実力ならば、本当に世界の半分なんてあっという間に焼き尽くせるだろうと確信が持てた。
そんな力を正確に感じ取っているラクトは、それでもバルドとノークが無事なら、町の一つや二つ消えても問題ないと思っている節がある。
こんな二人だからこそ、男は本気で焦っていた。
「大丈夫だよ。一応、シルヴァもいるし……?」
「本当か!?」
少し自信がないのだが、男は信じようと必死だ。ハラハラとドランを見ている。しかし、それはあっさり裏切られた。
「あ」
「え?」
ファナが何かを予感したように声を上げる。それに、どうしたのかと男が振り向いたその時、チカっと夜闇に稲妻が走った。
《グガッ》
ドランの真ん中。ラドの口がパカっと開いた。そして、そこから青白い光線が地面に向けて照射されたのだ。
ドガッ!!
兵達が塵のように飛んでいく。一瞬のその一撃によって、地面は抉られ、爆風が町を駆ける。
「あ〜あ……吐いちゃったか」
「なっ、なっ、だ、大丈夫なのかっ!?」
指をさして叫ぶように言う男とは目を合わせない。堪えきれなかったかと、ファナは眉を下げただけだ。その隣のラクトは表情を変えなかった。
ファナは呆れた様子で言う。
「敵うはずないじゃん。師匠でも封印して放置だったんだからさぁ。さっさと逃げればいいのに、本当にバカ」
そして、今度は町の大通りを真っ直ぐ光線でなぞった。
「あ、バルドとノークは……良かった」
「危なかったな。シルヴァか」
「……っ」
呑気な兄妹は、バルドとノークをシルヴァが背に乗せているのを見つけ、問題はもうなくなったと思っている。
「ど、どうするんだ!?」
男だけ慌て過ぎて滑稽に見えると口にする者がいないのは救いだろう。
「どうしよっかなぁ」
「来たか」
どうしたものかと首を捻っていれば、ラクトの視線の先に、シルヴァがバルドとノークを連れて、こちらに向かって来ているのが見えた。
「二人とも〜、無事で良かったぁ」
そう二人に向けてファナが笑顔で手を振りながら言う。しかし、シルヴァがもう後一歩で到着するという時、二人はファナの顔を見て叫んだ。
「「どうするんだ!!」」
「あれ?」
責められた。
「大丈夫だって。クリスタもいるし〜」
そう言った直後、ドランの三つの頭がそれぞれ光線を吐く。それらは、建物の屋根を吹き飛ばしていった。
「あれ? もしかして、ちょっとダメな感じ?」
「ダメダメだろうっ!! 何とかしろっ!」
バルドが思わず怒鳴ってしまう。山にも掠ったらしく、上の方で毒霧が散ったようだ。
これはさすがにマズイかと、ファナはドランを宥める為に仕方なくシルヴァに乗った。
「ちょっと行ってくる」
「気をつけるんだぞ」
過保護なラクトが珍しく一人で行ってこいという。不思議に思いながらも、ファナを乗せたシルヴァが駆け出したのだ。
読んでくださりありがとうございます◎
我を忘れ中でしょうか。
では次回、月曜6日の0時です。
よろしくお願いします◎
体の調子が戻るのにまだまだかかるらしいので、このペースのまま行きます。




