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102 魔王の座

2017. 1. 18


少し短いです……。

男は、この世界でも魔王という存在になろうとした。それは、もちろん勇者召喚を促す為だった。


残念ながら、この世界には異世界から勇者を召喚するという発想はない。だが、そんな事を男は知る由もなかった。


彼は、この世界に来てしばらく、どこを拠点とするかを考えながら見て回っていたらしい。


そこで魔族の国と呼んでいる大陸がある事。人々が魔族を恐れている事を知った。


「魔王になる為、俺はあちらの大陸へと渡った」


今の魔王を倒してでもその席に座ろうと思っていた。勇者として召喚された男にはその力がある。


「だが、魔王の席は、魔王が生まれ変わって再び国へ戻ってくるのを待つ為に空いていると聞いた。それならば、俺がその間だけでも魔王になればいいと思ったんだ……」


しかし、魔族の者達は誰一人頷かなかった。男が異世界から来た者だと知っても、それを良しとしなかったのだ。


そこまで聞いて、ファナは何となく今迄のこの男の行動の理由が分かった。


「もしかして、魔王にするしかない状況を作ろうとしてた? 魔族の国を攻めようとするように持って行こうって考えたとか?」


ボライアークの件も、クリスタのいるこの山の毒霧の件も、魔族がやった事だと言えば計画は達成されただろう。


「そうだ。それなのに、もう少しという所で、お前達がやって来た。あの地下に棲む龍も、あのドラゴンも弱らせて俺の支配下に置こうと思っていたのにっ……」


ファナ達がそのチャンスを消してしまったようだ。


「何なんだあの国はっ! 玉座を空けてまで、なぜお前を待つ!」


男は悔しかったのだ。何一つ思い通りにはならず、居場所のない自分。それなのに、自分の企みを邪魔し、帰ってくる事を待っていてもらえるラクト。


なぜだという思いが湧き上がってくるのを止められない。


「人違いだ」


此の期に及んで、ラクトはとぼけてみせる。どうやら、男の相手をいつまでもファナにさせているのにイラついたようだ。


ファナを横抱きにし、男の側から離すように背を向けるラクト。その背中に男が檻の中から叫ぶように言った。


「お前の魔力だった! 間違いない。俺は、魔力で人を察知する事が出来る。どれだけ距離があっても分かる!」


ファナはラクトの顔を見上げ、言い逃れ

無理だろうと目で訴える。


「お前を倒して魔王になる。それが出来ないなら……俺を魔王にすると言え! それならばあいつらも頷くだろう」


ラクトを倒す事は出来ないだろう。既にラクトの術で捕らえられてしまったのだ。この後、男が死ぬも生きるもラクト次第と言えた。


そして、ラクトは振り向く事なくこれに答えた。


「断る」

「っ、なんだとっ!?」


あっさり断ったラクト。提案した男は納得がいかないと更に叫ぶ。ファナもその理由が気になった。ラクトはファナといられるのならば、あの国に戻る気はないだろうと思ったのだ。


そして、ファナと男の視線を受けてラクトが答えたのは、ふざけたものだった。


「私が頷いた所で、妻達が許さんからだ」

「は?」

「に、兄さん?」


真面目な顔で答えた理由は妻。それも妻達と言った。


「アレらは、魔王である私しか夫にしないのだから、仕方がない」

「……」

「なんだ? ファナ。アレか? 兄さんを取られると思ったか? 可愛いなぁ」


ファナの目は据わっていた。抱きかかえられている体を捻りながら、足でラクトを蹴り飛ばす。


「思ってねぇよ……離せ、変態」

「グフっ……」


そうして、一発で変態魔王は倒れたのだ。


読んでくださりありがとうございます◎



大変な事実が判明しました。

妻は一人ではなかったようです。

どうでもいいですか?



では次回、金曜20日の0時です。

よろしくお願いします◎


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