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100 捕らえました

2017. 1. 13

ラクトは、本当に迷惑そうだった。


そんな目を向ければ、相手を怒らせるだけだろう。思った通り、様子が変わった。


「基礎も何もないな……」

「子どもだな」

「もう、ヤケクソって感じ?」


今はもう、敵は剣を振り回しているようにしか見えない。ヤケを起こしているのでは、ラクトに当てる事はもちろん、掠る事もないだろう。


バルドとノークは、ラクトの余裕な様子に、ホッとしたようだ。これならば負けるはずはないと確信したのだろう。


ファナは最初から、ラクトが圧勝だと思っていた。だから、もう目を向ける事すらしない。


「ねぇ、クリスタ。あいつで間違いないんだよね?」

《そうじゃのぉ。うむ。間違いない》

「なら、捕まえて責任取らせればいいって事じゃない?」

《そうじゃな》


クリスタとファナは頷き合うと、揃って敵を睨みつけ、ラクトへ言った。


「兄さん。そいつ逃さないで」

《捕まえるのじゃ!》


ラクトはこれを受けて、俄然ヤル気が出たようだ。先ほどまでは攻撃を避けている事もつまらなさそうだったが、その顔が変わったのだ。


「兄さんに任せなさいっ」

「うん。だから任せてる」


どうやら、ファナに頼りにされている事が、嬉しいらしい。それを見て、クリスタは妙な感心をする。


《これはアレか? 魔女殿が言っていたシスコンというヤツではないのか……初の出逢いじゃ……》

「……やっぱ、珍しいんだ……」


なんだか微妙な気分になるファナだ。


そんな珍しい思考の持ち主は、先ほどよりも精力的に動き回り、突然敵の腹を蹴り飛ばした。


「おいおい……」

「乱暴だ……」


バルドとノークはもう呆れながらラクトを見守っていたのだ。そのあんまりな決着の仕方に、ため息しか出ないのだろう。


敵は無様に離れた場所に倒れていた。ラクトの数歩前から地面に何度も体を擦りながら転がっていったのだ。


「兄さん。死んじゃったらどうするのっ」

「これくらい平気だろう。さぁ、檻でも作るか」

《気を失ったか。兄殿。死なれぬように出来るか?》

「できるぞ?」


シルヴァは完全に他人事のように離れた所で寝そべって見ていたのだが、のそりと立ち上がると、倒れた敵に近付き、その顔を確認しに行く。


《まだ若い男だな。主と同じぐらいだろう》

「何っ!? ファナと同じだと!! 羨ましいっ……」

「兄さん……」


何を悔しがっているのか分からない。そんなラクトに、バルドが言う。


「同じ年だったら、兄貴じゃなくなるぞ」

「はっ……ファナ。『兄さん』ともう一度呼んでくれっ」


本気でこの兄が分からなくなっていた。


「……いいよ。一回でいいんだね。今後一切呼ばないから、そのつもりで『兄さん』」

「っ!?」


衝撃を受けたラクトは、そのまま膝をつくと、絶望し、それでも地面についた手で魔力を練り上げ、少年を土で出来た檻で囲む。


俯き、今にも粉々に崩折れてしまいそうなラクトの両脇に屈みこんで背中を叩くのは、バルドとノークだ。


「お、おい、ラクト……」

「不用意な言葉は慎めと、昔も言っただろう?」


ただでさえ『妹』の話をする時は暴走気味だったのだ。ファナを目の前にしている分、気を付けなくてはならないと忠告していた。


《よ、良いのか? もの凄い落ち込み具合だぞよ……》


クリスタまで心配になってしまうほどだった。だが、ファナにしてみれば大した事ではない。


「そのうち復活するでしょ。それより……」


ファナはゆっくりと檻に閉じ込められている少年に近付いた。そして、ファナは少年に魔女から教わった世界の言葉で話し掛けたのだ。




読んでくださりありがとうございます◎



残念なお兄さんですが、一応強いはずです。



では次回、月曜16日の0時です。

よろしくお願いします◎


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