超初心者でも絶対に成功する魚の塩焼きの方法について
超初心者でも絶対に成功する魚の塩焼きの方法について
みなみのうお
料理初心者には、「生焼けだった」とか「黒焦げになった」とか、火加減・焼き加減が難しく、とっつき難い「魚の塩焼き」ですが、思いっきり手抜きなやり方で、簡単にフックリフワフワの焼き上がりに仕上がる方法が有りますので、ご紹介します。
要点のみを最初に述べれば「ササノハベラのウロコを取らずに焼く」というものです。
簡単ですね。
1.材料
「ササノハベラ」を用意します。
サイズは問いません。大きくても、小さくてもかまいません。
2.下ごしらえ
ササノハベラの体表を水で洗います。直接手で触るのが怖ければ、ボールに入れて水をかけ、水を2~3度換えればOKです。ウロコは取らずにそのまま料理します。
「朝捕れ」「刺身用」の表示のものであれば、次のステップに進んで結構ですが、「煮つけ用」表示のものしか手に入らなかった場合や、内臓の存在が気になる人は、お腹を開いて内臓を取り出します。
内臓を取り出すのは、もちろん素手でやって何の問題もありませんが、ウロコが付いたままのササノハベラはツルツル滑りやすい事もあり、超初心者向けの方法ですから、軍手をはめてトライしてみるのも良いでしょう。
お腹を開くには、普通は包丁を使いますが、切れ味の悪い包丁や果物ナイフしか無ければ、カッターナイフの使用がお勧めです。
まな板代わりの古雑誌の上にササノハベラを置き、右利きの人は左手で魚を押さえ、右手に持ったナイフで腹部を切り開きます。内臓を指でかきだしたら、魚の腹腔内を水洗いします。
使用済み古雑誌と内臓は、生ゴミの袋に入れてしまいましょう。使用済みの軍手は漬け置き洗いにするのが良いでしょう。
3.水気を切り、塩をふる
下ごしらえの済んだササノハベラの水気を切るには、キッチンペーパーで拭くだけで良いのですが、キッチンペーパーが無いとか、魚を触るのが怖いとか、ただひたすら手を抜きたいなどの考慮すべき理由があれば、ザルに入れて5分ほど放置するだけでも問題ありません。
塩焼きに使用する塩は、よくレシピ本などでは粗塩を使うことが奨励されていますが、手元に無ければ精製塩でも食卓塩でも、有るものを使って一向に構いません。
アルプスの岩塩鉱山に出かけたり、海岸で藻塩を焼いたりする必要はありませんから安心して下さい。
さて重要な、塩を振りかける方法ですが、「量も方法も適当」というのがこの料理の特徴です。
「ひとつまみの塩を三十センチ上方から全体に均等になるように」とか「ひれの部分には化粧塩を塗りたくって」などという複雑怪奇な工夫をする積極的な動機が発生しないからです。
したがいまして、手元にある塩をなんとなく振りかけてみて下さい。
実のところ、塩は「かけないならば、かけないで良い」のですが、そう言いきってしまうと完成品が「塩焼き」ではなく「素焼き」という事になり、表題と内容が異なることになってしまいます。
近年、不当表示に対する風当たりが強い世の中ですので、私の名誉のためにも、是非とも幾許かの塩を使用していただきますよう、よろしくお願い致します。
塩を振り終わったら、魚に塩がなじむまでの間、寝かせます。
放置時間は十五分でも、三十秒でも構いません。時間短縮がしたければ、塩を振って直ぐに「焼き」の作業に取り掛かります。
4.焼き作業
それでは、メインの「焼き」イベントです。
ガスレンジの魚焼きスペースを使用するのが簡単ですが、コンロ部分に焼き網を置いて焼いても構いませんし、安物の電気オーブンで焼いてもよいでしょう。
焼き網に魚の身がくっつかない工夫として、あらかじめ焼き網に酢を塗っておくという生活の知恵がありますが、ササノハベラをウロコ付きで焼く場合には、そもそもサンマなどと違って、焼き網にくっつくことが無いので不要です。魚を並べて点火するだけで良いのです。
また、七輪を使うとか、串に刺して強火の遠火でなどと、都市生活を行っている場合、困難な方法にチャレンジする必要はありません。
もし、どうしても強行したいのであれば、いっその事、魚と一緒に石ころを焼き、わっぱ汁まで作ってみましょう。そこまでやってこそ、チャレンジャーの栄光を掴めるというものです。
なお、火の使用・後始末には充分注意をお願いします。
電子レンジを使用すると、ササノハベラが爆発してしまう場合があるので、お勧めできません。
5.出来上がり
ササノハベラが、見るも無残な黒焦げになったら、完成です。お皿に盛りつけましょう。通常の塩焼きであれば完全な失敗作ですが、ササノハベラの場合は、これで良いのです。
一見、食欲をそそられない外観ですが、お箸で魚の体表をつまんで引っ張れば、ウロコと皮が一度にペロリと剥け、皮の下からは、美しい白身が湯気を昇らせて登場します。
ササノハベラの丈夫なウロコと皮が、水分を内側に閉じ込め、まるで上品に蒸し上げたかのような食感に仕上がっているはずです。
他魚、例えばアユを使ってこの様な食感に焼きあげようとするならば、まず強火で表面を素早く焼き固め、火力を弱火に落としてから十五分ほどじっくりと熱を通すといった作業が必要となります。文章で書くと簡単そうでありますが、ド素人が実行してみると垂れた脂に引火して火ダルマ、などという阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げる事となります。
さて、それではササノハベラの塩焼きを一口味わってみて下さい。魚の身の味はするけれど、塩味が全然足りないということに気が付くはずです。
その通り。振りかけたはずの塩は、ウロコと表皮を剥いだ時に、全部持って行かれていますから、身の部分に塩味はほとんど付いていないのです。使う塩が何でも良く、塩を振りかける量も方法も適当でよい理由が、正にこれです。
その味で満足いただけるのであれば、そのまま食べていただいて良いのですが、もうちょっと色を付けたいということであれば、身の部分に塩や醤油を追加して下さい。
淡麗・淡白が持ち味の魚ですから、追加する塩や醤油は控えめでお願いします。
補遺1 焼き上がった後に、ウロコを?そうとしても剥がれない場合の対策
①生焼けの場合、剥がれません。焼きを追加して下さい。
②焼き過ぎで、魚全体が内部まで炭化している場合も分離が困難となります。「超初心者でも絶対に成功する」とは書きましたが、完全灰化するまで燃焼させるようなことは、お控えください。
補遺2 ササノハベラの入手について
ここまでササノハベラの塩焼きについて書いてきて、ふと気が付いたのですが、当サイトの掲載作品には「ファンタジー」分野の作品が多いので、『ササノハベラは架空の食材ではないか?』という在らぬ誤解を受けないか、と心配になりました。
確かに、この駄文を読んで下さった方が、明日にでも街中のスーパーに行き「ササノハベラを下さい。」と注文したとします。すると高確率で「ありません。」「置いてないねぇ。」などと言われてしまうことでしょう。
しかし、れっきとした実在の魚です。生息数も多く、レッド・データブックに載るような希少な魚ではありません。
漁港近くの道の駅や、地元客向けの鮮魚店などでは置いてあるかもしれませんし、磯や防波堤ではウンザリするほど釣れる魚です。(釣り人は「磯ベラ」と呼び、外道・雑魚扱いする事が多いのです。お美味しいのに。)
そういう意味では、超初心者でも絶対に成功する魚の塩焼きの、唯一にして最大のボトルネックは「ササノハベラを入手すること」かもしれません。
ササノハベラの代用として、キュウセンという同じベラ科の魚を使用する事が出来ます。関西ではキュウセンはメジャーな食材ですから、ササノハベラより入手難易度が下がるかもしれません。
しかし東日本では、キュウセンもササノハベラと同じく食用魚と認識されていないので、自分で釣る以外には調達が困難かもしれません。
残念ですね。
いっそ魚釣りを始めてみませんか?
なお、同じベラ科の魚でも、コブダイやナポレオンフィッシュは、体長が一メートルを超えるため、ガスレンジで焼くには多少の困難を伴います。
挑戦するのは経験を積んでから!