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第六十五話 魔法についてのあれこれ。

今回は比較的集中して書いた結果、少し長くなりました。

まぁ、文章は相変わらずで、内容も文章の量ほどには進展がないので、流す程度で読んでいただければと。

 師匠を見送った後、俺とみーちゃんはまだアリセルの家にいた。


 しかし、その場所は庭では無く、家の中の一室である。一応アリセルには家の中でメイドに通された場所なら使っても構わないとは言われていたので問題はない。

 そして、俺たちがこの部屋にいるのは、これからここで、みーちゃんが魔法についての講義を行うからであった。


「……では、魔法の特訓を始めます」


 普段は少し眠たげな表情のみーちゃんが、珍しくキリッとした様子でそう宣言した。その目はいつもの1・5倍は大きく見開いている。


「あぁ。よろしく頼むよ、みーちゃん」


「……みーちゃんじゃない。今の私は美弥先生でしょ」


「あのさ。今更なんだけど、なんで『先生』?」


「……ユウ君、こういうのは雰囲気が大事。だから、文句言わない」


 俺の質問に対し、やはりキリッとした表情でみーちゃんが答える。

 まぁ、眠たげな表情よりかはマシだし。先生を演じることでこの表情が保たれるとしたら、それでいいか。


「はい、分かりました。美弥先生」


「……ん。よろしい。それじゃあ、着席」


 そう言ったみーちゃんのご機嫌は良さそうである。


 ちなみに、俺たちがいる部屋の中には椅子と机一セットと、大きめのホワイトボード的な物があった。その光景はまんま、学校の教室だ。


 とりあえず、みーちゃんの指示通り、椅子を引いて着席。

 そんな俺に視線を向けつつ、みーちゃんは喋り始める。美弥先生による魔法講座の開始だ。







 魔法の起源は、人類という存在がこの世界(ユグドラシル)に誕生したのよりも少し後の頃と言われている。

 その頃は現在の「言語」の基礎は誕生していたが、「ステータス」という物は存在していなかった。


 この当時の記録は地球で言うピラミッドの壁画の様なものと同じような形で多数残されているが、そのどれもが、手から火や水、風、土を放っている人物――今で言う「魔法師」――が上位の立場を担っているという事を示していた。

 古代の人物にとって、「魔法」とは未知そのものであり、その頃から存在していたと思われる「魔物」に対抗できる数少ない手段であったのだ。偉い立場に就くのも納得がいく。弱者は強者の元に集うのが世の摂理という物だからだ。


 しかし、この頃の記録に残されている中では、「魔法」に必要不可欠な「詠唱」を発している様子が無い。

 また、使われている魔法の殆どが「火」や「水」「土」と言った、比較的イメージしやすい魔法だった。逆に「空間魔法」「調合魔法」「接続魔法」といったイメージしにくい魔法が行使されている記録は全くと言っても良い程存在していない。


 この事から、当時の「魔法師」はスキル「無詠唱」を所持し、その上想像力豊かな者という、ごく少数の者のみが魔法を扱えていたと考えられている。


 それは、この頃には「魔法詠唱」という概念が存在しないと考えられてるのと同義だが、これにはちゃんと訳がある。


 そもそも、俺の持つスキル「魔法複合」で創造した様なイレギュラーな魔法を除き、魔法詠唱文は外部から得る情報である。一度覚えたら「人体魔法辞典」によって忘れることはないとは言え、内部から魔法詠唱文が沸いてくるわけでは無い。

 更に言ってしまえば、魔法詠唱文とは長い歴史の中で多くの人々の試行錯誤により体系化された一つの技術であり、それその物が精密に構成された一種の芸術品と言っても差支えない。魔法詠唱文という一つの技術が確立したのはここ千年程という比較的最近の出来事だと記録にも残っている。

 人類誕生よりも少し後という、数万年単位の昔にそのような物が存在していたと考える方が無理がある。ほぼ確実に、そんな昔よりも現在の技術が劣っているという事はあり得ないのだから。


 ちなみに、魔法詠唱文の誕生と「ステータス」の誕生には深い関係があるのだが、それを話し出すと長くなるので、ここでは割愛とする。


 ――という事を、意外と分かりやすくみーちゃんが解説してくれた。


「へぇ、結構魔法って歴史が長いんだな」


「……そう。そして、その長い歴史の中で、魔法という概念を築き上げてきた先人達には大きな敬意を示さなくちゃいけないと思う」


「そうだな」


 この世界は地球に比べれば劣るとはいえ、それでも便利なのは間違いない。そして、それを支えている魔法の存在というのは、普段意識している以上に大きいのだ。そんな魔法をここまで成長させた、昔の人々の努力の価値は計り知れないだろう。


「……じゃあ、次の話に移る。今までの話が前座なら、これからの話が本番。耳の穴をかっぽじって聞くように」


 そう言い、再び語りだしたみーちゃん。


 その話の内容を分かりやすく説明すれば、『魔法スキルの種類とそれぞれの特徴』についてだ。


 現在、俺が使う「蒸気魔法」「地盤魔法」「回復特化調合魔法」「探知魔法」を除いた魔法スキルの種類は、


「火属性魔法」「水属性魔法」「風属性魔法」「地属性魔法」「光属性魔法」「闇属性魔法」「空間魔法」「回復魔法」「付与魔法」「調合魔法」「召喚魔法」「接続魔法」「契約魔法」の13種類。


 この中でも、「属性」と名の付く魔法は最も基本的な魔法――自然の力を操る魔法として「属性魔法」と称されている。魔法を使える者の中でも、「火」「水」「風」「地」の魔法を使い手は多く、「闇」「光」を使う者も前出の四つに比べれば少し少ない程度にはいる。


 また、当然ながらそれぞれの魔法には特徴があり、それが以下の通り。


「火属性魔法」:全体的に威力が高く、また、効果時間も長い。攻撃に特化した魔法。


「水属性魔法」:主にからめ手を得意とする。また、水を使うという特性故に、隠密性も高い。


「風属性魔法」:射程や効果範囲が広く、連射性や速射性にも優れている。「水」同様、隠密性が高い。


「地属性魔法」:土を使った質量的な攻撃を得意とする。また、防御に優れた魔法が多い。


「闇属性魔法」:暗闇での行使を得意とし、「水」「風」同様に隠密性が高い。また、見た目を変える等、他人を欺くことも可能。


「光属性魔法」:最も身近な「自然」である「光」を操るため、応用性が高いのが特徴。属性魔法の中で唯一、効果は僅かながらも「回復」の魔法を使える。


「空間魔法」:「転移」など、移動性に優れた魔法が多く、一番重要視される魔法の一つ。しかし、使い手が少ないのが現状。


「回復魔法」:生物の「身体的な回復」という一点に特化した魔法。空間魔法と同様に使い手が少なく、特に戦時には重宝される。ストレア王国には回復魔法に特化した「魔法師部隊」も存在するらしい。


「付与魔法」:ステータスの底上げの他、スキルレベルが20以上になれば、自身の持っている魔法スキルを道具に「付与」する事も可能。その汎用性は極めて高く、「魔法剣」等は付与魔法が使える属性魔法師が鍛冶職人と協力して作り上げているらしい。


「調合魔法」:その名の通り、調合の際に使用される魔法。これはどちらかと言えば「補助」的な役割が強く、簡単な調合ならこの魔法を使用せずとも可能である。


「召喚魔法」:空間に裂け目を作り、そこを通して別の場所から様々な物を召喚する魔法。プロセスは「空間魔法」と似ているが、あちらは自分に作用させることができるのに対し、こちらはそれは不可。あくまでも自分以外の物にしか作用しない。その代わり、必要なMP――魔力さえ支払うことができれば、殆どの物を取り寄せることが可能であり、取り寄せた物であれば、取り寄せた時と同じ魔力を支払う事で、召喚した時に「それ」が存在していた場所へと「返却」する事も可能。ちなみに、勇者達を「召喚」したのも、これの特殊派生形とも言われる、ストレア王国王族遺伝の「ユニーク魔法」に類する魔法である。


「接続魔法」:異なる二つの物体を繋ぎ合わせる魔法。よく「契約魔法」と混同されがちだが、「契約魔法」が「主従」の関係だとすれば、こちらは「同調」といった方が近い。主な魔法は自然との親和率を高めて「属性魔法」の威力を上げる「シンクロ」といった、他の魔法の威力を上げる物。ちなみに、これは「付与魔法」のように他者にかけることも可能である。また、「付与魔法」を用いて「魔法道具」を制作する際にも良く使われる。


「契約魔法」:「接続魔法」との関係性は前述のとおり。ミコイルでよく使われている「奴隷契約」や自分の実力よりも下位の魔物を隷属させる「隷属契約」といった魔法も「契約魔法」スキル。ストレア王国では「奴隷契約」を使う事は固く禁じられている。


「……基本となる魔法13種類はとりあえずこんな所」


「ちなみに、美弥先生は何を良く使うの?」


「……一番は風属性」


「その心は?」


「……攻撃の時は隠密性が高い。少し威力が低いという所も、急所を確実に狙う事でカバーできる。あと、『ウィンドシールド』は優秀。盾魔法でありながら、視界が確保できるのが一番有難い」


「なるほどね……」


 そう言えば、俺が助けられた時も、その魔法を使ってたっけ。今度試してみようかな。


「……それじゃあ、次が最後」


「うん」


 みーちゃんの言葉に、気を引き締める。


「……ユウ君は、MPが無くなった後、魔法を発動させようとした経験ってある?」


「え……あ、あぁ。ある」


「じゃあ、その時は魔法は発動した?」


「いいや。しなかったけど」


 少し意外な質問に肩透かしを食らった気分になる。

 この質問に何の意味があるかは分からないけど、きっと理由があるんだろう。

 そう思っておくことにした。


「……その時、何か感じたことは?」


 感じたこと……ね。

 思い出せ。確か、俺がMPを枯渇させた時に魔法を発動させようとしたのは――アリセルがブラックドラゴンの攻撃を食らった時……だよな。あの時は連続で回復魔法を発動させ続けて、MPが切れたことに気が付かなかったんだ。


 で、その時に感じたことと言えば――


「少し、体がだるく感じた事ぐらい……かな?」


 まぁ、その感覚も、MPポーションを服用すれば比較的すぐに消えたので特に気にはしなかったんだが。


 なので、軽い調子で答えた俺。


 しかし、そんな俺とは正反対の様子を見せたのがみーちゃんだ。

 何故か、如何にも安心したと言ったようで溜め息さえはいている。

 そして、俺を真っ直ぐと見つめ、みーちゃんはこう言った。


「……ユウ君、まず言うと、魔法はMPが枯渇した状態でも発動できる」


「……えっ?」


 最初、俺はみーちゃんが何と言ったのかよく分からなかった。

 ――いや、意味が分からなかった。と言った方が最適だ。


 魔法はMPを消費して撃つ物。それが俺の中での常識だったから。


「……マジ?」


「……うん。マジ」


 だが、みーちゃんはこれが事実だと、俺の質問に肯定を返した。

 それで俺もこれが事実だと理解する。そもそも、この世界は俺にとって未知が多い。一つや二つ、思っていたことと違う事があっても、何も可笑しくはないのだから。


 さらにみーちゃんの言葉は続く。


「……人は、自分の中にあるMP――魔力が枯渇しても、特別なスキルを有していない限りは睡眠以外では魔力は回復させられない。でも、体内じゃなくても、意外と身近な所に魔力は存在する――それは、『空気』」


 そういえば、そうだったな。

 確か、その空気中の魔力が偏って多く存在する所でダンジョンを作ったりすることが出来るって、ニーナが言ってたような気がする。

 あとは、薬草の分布や魔物の生息域にも深くかかわってたりするって聞いたことがある。


「……そして、その空気中に存在している魔力を取り込んで、自分にあった魔力の波動に変換させることで、私たちはMPを回復させることが出来る。普通の人はこれを睡眠中にやっている」


「なるほどな……だから、睡眠中にしかMPが回復しないんだな」


「……ん。そういう事。で、普通はそうやって自分に合った魔力(MP)を使って魔法を放つんだけど、MPを枯渇した状態で魔法を使おうとした時に限って、体は空気中に存在する、自分に合わない魔力を使って魔法を放とうとするの」


「自分に合わない魔力を使うと……どうなるんだ?」


「……体と脳に大きな負担がかかる。そして、何度もそれをやっていると――最悪は死ぬ」


「……まさか、俺があの時に体にだるさを感じたのって――」


「……ん。多分、無理やり体に合わない魔力を使おうとして、体に負担がかかったせいだと思う」


 そのみーちゃんの言葉に、俺は絶句した。

 もしかしたら、俺はあの時に死んでいたかもしれない。そう思ったら、少し体が震えた。

 だけど、そこでみーちゃんが優しく俺の肩に触れる。


「……あの時、ユウ君が無事で本当に良かった」


 俺の眼を見ながら、そうみーちゃんは言った。

 すると、今度はさっきとは違う意味で体が震える。心の奥底で、また熱い何かが震える。

 そんな俺の様子を見て、俺が泣いているとでも思ったのだろうか、みーちゃんが俺の頭を優しく撫でた。

 少し照れくさい。だけど、何故かこの手を振り払いたくない。


「……大丈夫」


「……あぁ」


 二人の間を、穏やかな空気が流れる。

 静かな部屋の中、頭を撫でるみーちゃんの手の感触だけが感じられた。

 その状態のまま数分後、みーちゃんは俺の頭から手を離す。

 俺の心も、波風一つないくらいに落ち着いていた。

 みーちゃんはそんな俺の様子を見て、大丈夫だと判断したらしい。


「……これで、講義で教えなくちゃいけない所は教えた。後は実戦あるのみ……だよ?」


「そうだな」


「……それじゃあ、次は外で練習しよっか」


 そのみーちゃんの言葉で、俺たち二人は、庭の方へと戻った。







 ――で、現在。


「『グランドウォール』!」


 ―――――――――――!!!!


「―――――っ?!」


 俺は、こちらに向かって飛んできた『ファイヤーボール』を初級地属性魔法のグランドウォールを盾にする事で相殺。しかし、殺せたのは勢いだけで、丸く凝縮された火が一気に土の壁を包み込んだ。熱せられた空気が頬を強く撫でた。

 火に巻かれないよう、慌ててその場から退避。


 そして、


「『マッドショット』!」


 初級地盤魔法で、『ファイヤーボール』を撃ってきた相手――戦闘用の服に身を固めたみーちゃんに攻撃を加える。

 こげ茶色の泥が、俺の右手の小杖(ワンド)からみーちゃんの顔に向かって発射される。狙っているのは勿論、みーちゃんの視界を塞ぐことだ。


 『魔法師』というのは「イメージ」を大きな材料として魔法を行使している。その為、視界を塞ぐだけでも大きな効果が生まれる。――まぁ、そもそも、戦闘中に視界を塞がれたら、大抵の生き物には大きな打撃なのだが。


「水よ、万物を貫け『ウォーターショット』!」


 みーちゃんの、洗礼された高速詠唱。二行のみの詠唱とは言え、瞬きの時間もかけずに魔法を完成させる。

 そして、俺の女の子に対してするような物では無い攻撃を、初級水属性魔法でみーちゃんが迎え撃つ。

 みーちゃんが掲げた長杖(ワンド)の先で水が生成され、勢いよく射出。それは俺の放った泥を真正面から包み込み、更にはそれさえも取り込んで俺へと向かってきた。


 ただの水――と、侮ってはいけない。

 水は確かに液体。それ単体なら、それほど脅威にはならない。だが、そんな水に莫大な移動エネルギーが加われば、それは十分な凶器だ。

 高度から人が水に落ちれば、その人の骨を粉々にすることだって可能なのである。


「『グランドウォー――――」


「大地よ、拘束の足枷となれ『マッドプール』!」


「―――っ?!」


 水の狙撃から身を守ろうと再び「グランドウォール」を発動させようとした所で、みーちゃんからの妨害。


 俺が先ほど伝授した、「地盤魔法」の「マッドプール」で、丁度「グランドウォール」を発動させようとしていた場所の地面を泥沼へと変えられる。


「グランドウォール」は自分の足元の地面を隆起させて、巨大な壁とする魔法だ。

 そして、その地面は泥沼に変えられている。


 その結果。

 魔法で隆起した地面は壁の形を取らずに、盛り上がった傍からドロドロに流れていく。


 で、最終的には。


「ぐおぉぉっ?!」


 俺のどてっ腹に水の狙撃が命中。思ったよりも衝撃は少なかったものの、腹にトンカチで打撃を受けたような感覚を覚える。

 そのまま蹲る俺。ある意味で拷問っぽい感じである。


「……あ、ゴメン。力加減間違えた」


「ぐ、うぅ……だ、大丈夫だから」


 俺の様子を見て、心配そうな表情で駆け寄ってくるみーちゃんを片手で制す俺。


「……本当に大丈夫?」


「本当に大丈夫!」


「……赤ちゃんの素も――」


「大丈夫だからっ!? てか、何の心配をしてるの?!」


「……ん。冗談」


 俺のツッコミに、相変わらず分かりにくい無表情で返すみーちゃん。しかしその頬は少し赤くなっているように見える。そんなに恥ずかしいなら、破廉恥なことは言わないでください。俺も恥ずかしくなっちゃうから!

 あーもう、意識しだしたら、股間も痛くなってきた気がする!

 まぁ、そんなこんなやり取りをして数分で何とか痛みは回復。その場に立ち上がった。


「……で、どうだった?」


 俺がみーちゃんに質問をぶつける。


 どうだった、とは勿論、今の「模擬戦」の事だ。


 そもそも、この模擬戦はみーちゃんからやろうと言い出した事である。

 その理由は、近距離の方が得意だからと言って、遠距離を疎かにするのは良くない。という事らしい。


 その時のみーちゃんのニヤニヤ笑いとか、ポツリと聞こえてきた「ポロリ……膝枕」とか、やけにウキウキした様子からは何となく嫌な感じを覚えたのだが……理由は理にかなっていたので、結局は遠距離攻撃――魔法のみでの模擬戦を行う事にしたのである。


 まぁ、その結果はご覧のとおり、みーちゃんのポロリが起こる前に俺のノックダウンで終わってしまったのだが……べ、別に、期待してたわけじゃないけどな!


 ――おっと、そんなアホな事を考えている場合じゃなかった。みーちゃんの話に集中しなくては。


「……『地盤魔法』。中々使いやすい」


「そっちじゃないよ?!」


 いや、そっちも結構重要だけどさ!


 ちなみに、みーちゃんは俺が「魔法複合」で取得した魔法全てを使えるようになっていた。あれかな。「魔法才能全」が影響してるんだろうか。

 まぁ、それは今はどうでもいいか。


「……冗談。これからちゃんと話す」


「頼む」


 俺の念を押すような言葉に、みーちゃんは「……ん」と頷き、まず、と言葉を続けた。


「……ユウ君は遠距離の時、あっさりとやられ過ぎ」


「ぐっ―――」


「……それじゃあ、戦いだと真っ先に殺られちゃうよ」


 いきなり痛い所を突かれた。

 確かに、俺は遠くからの攻撃に弱い。


 ――というのも、現在、俺が近距離で攻撃を防ぐ時は、敵から発せられた「害意」に無意識に体が反応して、殆どオートの状態で任せているような感覚なのだ。


 だが、遠距離の攻撃に対処するときは――本来なら近距離でもそうなのだが――何でもかんでも無意識でというのはまず通用しない。特に魔法師を相手にするのならば当然だ。

 相手は殺気をぶつけてきた方向以外からも攻撃を加えることが出来るのだから。

 そうなれば、害意を感じ取れるというアドバンテージも殆ど意味を成さない。

 精々、相手が攻撃を仕掛けてくるタイミングをある程度予測できるぐらいだろう。直接攻撃を防ぐ手立てになる訳じゃない。


 それに、魔法による攻撃は、躱して対処する。というのがとても難しい。面制圧でもされれば、躱すことなどほぼ不可能だからだ。

 なので、魔法に対しては、自分も魔法を撃って相殺を狙うか、盾や鎧で受け止めるか、武器で弾くかの三択になることが多い。俺は盾や鎧なんか装備してないし、武器で魔法を弾くという高等技術は現時点では出来る気がしない。よって、必然的に俺の魔法に対する対処法は「魔法で相殺を狙う」の一つに絞られるのだが、これがまた「無意識」の境地では実行することが難しい。


 使う魔法の選定。イメージ。そして詠唱。


 魔法を使うプロセス全てを無意識で行うなんて、どんな境地に至ればできるかとか、正直予測が付かない。ましてや、現在の俺に出来るなんて思えないし、実際に不可能だ。


(まぁ、ここら辺も、師匠が言ってたみたいに『実戦あるのみ』……なんだろうな)


 とりあえず、遠距離戦闘についても、今後しばらくの課題は見つかった。


 ――勘に頼ったり無意識に任せたりせず、一動作それぞれを意識。


 当分はこれを意識してやっていこうと思う。


 俺がそんな事考えていると、少し困った顔のみーちゃんが、


「……それに、ユウ君が早く倒れちゃうと、私の服が激しい動きでズレてポロリ……とか出来ない」


「そんなの狙う必要無いよ?!」


「……あ、でも、その分、膝枕はたくさん出来るかも。楽しみ」


「…………」


 うん。俺も少し――いや、結構楽しみかもしれない。


 思わず、みーちゃんの呟きに心の中で賛同してしまう俺がいた。むろん、声には出さないけど。


 ――まぁ、そんなこんなで、みーちゃんによる魔法の特訓も無事初日を終了した。









実は今回だけで二、三、伏線的なのを張っていたり。

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