第六話 初クエストで出会いがあったのは間違っているだろうか
「………もう、絶対にあそこには行かん!」
服屋で服を買った後、俺は試しにクエストを受けるためにギルドへと向かっていた。
しかし、俺は今は最高に機嫌が悪い。………まぁ、その理由は後々に分かるとして。
一応、先ほど行った服屋、「トニクロ」で五着ほど新しい服は買えた。………もう、店の名前には突っ込まないぞ。突っ込んだら負けだ。
まぁ、この服屋、店員……主に店長が問題ありだったのだが、デザイン自体はいい物ぞろいだった。だが、やはり、今後あの店に行くのは避けたい。色々な意味で危険を感じた。次、あの店に行ったら、俺の男としての価値が無くなるという自信がある。
「もし、次、店長に出会ったら……迷わず殴る」
そんな物騒な事を決意しながら、俺はギルドへとたどり着く。
今日も相変わらず人が多い。朝だからか、クエストを掲示している掲示板の前には多くの人が集まっていた。これからクエストを受けるのだろう。
俺も、その集まりに加わる。
「えっと。俺のランクはFだから…受けられるクエストのランクはEまでだよな」
自分の受けることが出来るクエストを一つ一つ確認していく。
しばらく見ていて分かったことだが、クエストのランクごとに、出されているクエストの内容が大体決まっている。F、Eランクのクエストは一部を除いてお遣い系クエストや、採取系クエスト。それ以上のランクのクエストなら、そういった物以外にも、討伐系クエストや護衛系クエストなどがあった。
で、現在Fランクの俺が受けられるクエストは限られているため、選ぶのにはそんなに時間はかからなかった。
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採取クエスト
依頼主:ギルド
依頼内容:北の森にて、ジャンボコウタケを30本採取。
依頼達成報酬:銀貨1枚
依頼失敗ペナルティ:無し
依頼指定場所:北の森
予想遭遇魔物:スライム(F)、ワーム(F)、シルバーウルフ(F)
クエストランク:F
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これが、俺が今回受けることにしたクエストだ。
このクエストで指定されている場所の北の森とは、俺が昨日、この世界に召喚された場所で、辺りの魔物はランクF相当の者ばかりで、初心者の格好の狩場となっている。
そして、このクエストの目的である「ジャンボコウタケ」とは俺が昨日採取したキノコ、「コウタケ」の中でも15センチ以上に成長した個体の事を指す。コウタケの成長速度は異常なほどに早く、15センチ以上に成長するのに半月もかからないらしい。なので、ジャンボコウタケを見つけるのにはそこまで苦労はしないだろう。
ある程度戦闘経験を付けることが出来、依頼の達成も簡単。しかも、北の森で薬草や霊草、毒草など、調合用の素材も多く採取できる。俺のためにあるようなクエストである。
俺は、掲示板からクエストの紙を剥がすと、カウンターへと持って行った。そこで待っていたのは、「笑顔がステキな受付さん、その一」ことアリッサさんである。今日も、褐色肌に金髪が眩しいです。
「すいません、このクエストを受けたいんですが」
「あ、ユートさん、お待ちしていました」
「はい?」
「奥で、ギルドマスターがお待ちです。少しの時間だけで良いので、一緒に来てもらえますか?」
そう言って、アリッサさんはカウンターの奥を指差す。おそらくだが、俺が所謂「魔導士」と言う奴について、色々と事情聴取的な物でも行われるのだろう。今日は特に急ぐことも無いので、大人しくアリッサさんの後ろに付いてカウンターの奥の方へと入った。
前を見ると、アリッサさんの方が少し強張っているのが分かる。相手はギルドマスターという事で緊張でもしているのだろうか。俺がそんな事を考えている内にとある部屋の前までやって来ていた。部屋の扉には「ギルドマスターの部屋」と書かれている。どうやら、この奥にギルドマスターとやらがいるらしい。
「ギルドマスター、失礼します」
アリッサさんが一声かけて、扉を開け、部屋の中に入ったので僕もそれに続く。
すると………
「ほう、君が新しい魔導士様かい?」
目の前に幼女がいた。……何故に?!
「はい、その通りです。マスター」
そして、当たり前のように幼女を「マスター」と呼ぶアリッサさん。
ってことは………
「この、幼女がギルドマスターなんですか?!」
部屋に俺の心の叫びが響き渡る。
「ああん?誰が幼女じゃ、コラァァァァァァァ!」
「グフッ?!」
そして、俺の言葉に反応して幼女はドロップキックを繰り出す。咄嗟の事で回避できなかったため、幼女の足の裏が俺の顔にめり込んだ。
「全く………なぜ、こうもみんな私の事を幼女、幼女と言うんだ………私だって、もう25歳だし、酒くらいは飲むし、彼氏だって作りたいのに!」
「マスター!それよりも、ユートさんに話があったのでは?」
「あ……そういえばそうだったな」
そう言って、ギルドマスターに叩き起こされる。幼女の外見のくせに、結構なバカ力だ。ってか、その外見で25歳かよ。ロリアラサーじゃねぇか。
「さて、ユートやら。お前に聞きたいことはたくさんあるのだが、とりあえず、今は不問にしてやろう。ただし、一発殴らせろ。ちなみに、拒否権は………無い!」
ドガッ!
「ウグッ!?」
そして、今度は、俺の顔に幼女のこぶしがめり込む。俺は、あまりの威力にその場で膝をついた。見た目は幼女でも、実力は流石ギルドマスターといったところだろうか。………それにしても、顔痛ぇえええええ!
「ふんっ!私を幼女呼ばわりした罰だ!」
いや、そう言う所でツンデレっぽい反応している所を見ると、余計に子供っぽく見えるんだが。まぁ、そんな事を言ったら、間違いなく鉄拳制裁を加えられる事になるだろうから、口が裂けても言わないんだがな。
「まぁ、これで私も気が済んだからいい。………それより、お前は本当に『魔導士』なのか?」
「えぇ、どうやらそうらしいですね」
「………?そうらしいとは、どういう事だ?」
「いや、俺は、つい最近まで人里離れた所で暮らしてたんで、日常的な知識に結構疎いんですよ」
「ほう………色々とツッコミたいところはあるが、そういう事にしておいてやろう」
そう言って、興味深そうに俺を見つめる。なんだよ。そんなに見つめても、何も出ないぞ。
「………で?何か俺に用が?」
「いや、もう用は済んだ。今日は、自分の力を隠しておきたいとか言い出す魔導士がどんな奴なのかを見たくて呼んだだけだからな」
幼女ギルドマスターはそういったものの、俺はそれが本当の目的でないことが分かっている。その理由が、彼女のステータスだ。
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アリセル・クレイヤ
ヒューマン
Lv61
MP:241/241
STR:663
DEF:619
AGI:603
INT:83
スキル
「鑑定」「制裁」「幼なき子」「コンプレックスの怨念」「不器用」「策士家」「付与魔法:Lv38」
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この、幼女ギルマス―――アリセルは俺と同じ鑑定を持っている。一応、俺のステータスの中で、一般人に見られると困る物は「隠蔽」で隠してはいるが、どうやら、鑑定持ちには効かないらしい。
つまり、彼女は本当に俺が「魔導士」なる者なのかを確認したのだろう。それを判別できるのは、鑑定持ちの奴らだけだからな。
それにしても、アリセルのスキル欄が色々とおかしい。
まず、「幼なき子」。………うん。なんでこれを持ってるのかは分かるんだが、あれだな。人生って、時々残酷だよな。
そして、「コンプレックスの怨念」。これも、身長が低い事が関係しているんだろうか。とりあえず、ここら辺の事には触れない方が賢い選択だろう。多分、この辺りの事を突っ込むとミンチにされる。………文字通りに。
っていうか、そもそもの所でステータス値が前衛仕様過ぎてやばい。見た目とのギャップがやばい。
俺がそんな事を考えているともつゆ知らず、幼女ギルマスのアリセルは「もう用は無いから行ってもよいぞ」と、俺を部屋から追い出した。そして、さっきの受付まで戻った俺は、アリッサさんにクエストを受けに来た旨を伝え、クエストを受ける。
ギルドから出たら、今度はいよいよ初クエストへと向かう。場所は北の森なので、俺はこの町に四つある門の内、北の門から町の外へ出た。ちなみに、今日は門の所には昨日のおっちゃんはいなかった。
門を出たら、そこからは魔物が時折人々を襲ってくる。
とはいえ、ここは町のすぐ周りを囲っている初心者御用達の草原である。出てくる魔物と言えば、ジェルのような体を持つ「スライム」。芋虫型の五十センチくらいの体調を持つ「ワーム」だけであり、レベルは1~4ぐらいに収まっているのだ。しかも、そいつらは基礎能力値が高くないため、一対一ならレベル一のソロでも十分に勝つことが出来る。
「しっかし、本当にスキルって便利だよな………」
俺は、右手に持った短剣で襲い掛かってくる魔物を処理しながら、草原を森の方へと歩いていく。
短剣は「剣術」スキルの影響からか、よく手になじむ。そして、素人の俺でもそれなりの型になる。まるで、見えない力にアシストされているような感じだ。本来なら、魔法を使って倒していけばいいのだろうが、目的地に着いたら、また、あの狼と戦う事になるだろう。その時のためにできるだけMPは温存しておこうと思う。
さて、そんなこんなで町から一時間ほど歩いていたら、昨日にも見た森へとたどり着いた。相変わらず、視界が少し悪い。俺のステータスなら、この辺りの魔物には、そうそう後れを取るとは思わないが、警戒しておくに越したことは無いだろう。
ちなみに、俺の現在のステータスは以下の通り。
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ユート
ヒューマン
Lv5
MP:84/84
STR:24
DEF:19
AGI:58
INT:30
スキル
「魔法才能全」「無詠唱」「アイテムボックス」「隠蔽」「鑑定」「魔力効率上昇(大)」「全状態異常耐性:Lv1」「魔法複合」「火属性魔法:Lv1」「水属性魔法:Lv9」「闇属性魔法:Lv4」「調合魔法:Lv11」「風属性魔法:Lv1」「地属性魔法:Lv1」「回復魔法:Lv1」「光属性魔法:Lv1」
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ちなみに、増えている魔法スキルは、昨晩の調合の暇なときに取得しておいた。これで、基本的な魔法スキルは全て取得し終えたことだろう。
実は他にも色々と魔法のスキルはあるのだが、それは、また時間がある時に取得することにする。
「さてと………それじゃあ、採取を始めるか」
俺は森の中で膝をつくと、楽しい楽しい採取を始めた。前回は、主に薬草や霊草類を狙っていたのだが、今回はジャンボコウタケが目的であるため、コウタケが生えるという、木の根元を中心に探していく。
それから二時間もしたら、ジャンボコウタケを始め、ありとあらゆるものをたくさん採取することが出来た。
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ジャンボコウタケ………60個
コウタケ………150個
薬草………98本
霊草………129本
毒草………61本
麻痺草………84本
眠り草………71本
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結構な数が集まった。
ちなみに、今回採取したものはコウタケ類を除いて、全て調合に使うつもりだ。早く調合魔法のレベルを上げて、できるだけ良いアイテムを作れるようになりたいからな。あと、せっかく鍛冶スキルを取っているのだから、鍛冶もやってみたい。でも、どうやったらできるのか分からないなぁ………ギルドで、アリッサさんにでも相談してみるか。
そんな事を考えながら、俺が更に採取を続けていると。
「………うん?何だ?あれ?」
俺は森の少し奥に入った所で、何かを担ぎ上げて移動している者がいるのを見つけた。
それは、だんだんとこちらに近づいてくるようだ。何やら、嫌な予感がする。そう感じた俺は、近くの木陰に身を寄せて隠れることにした。
その人影は、俺の事に気が付いていないのか、ズンズンと歩いてくる。すると。
「……っ?!何だ?この異臭は…!」
俺の嗅覚が、突然、異臭をキャッチする。まるで、生ごみのようなその臭いは、生理的な嫌悪感を俺に与えた。
そして、丁度その時、何かを背負った者の全貌が見えた。
「ググググググ………」
それは、醜い、緑色の体をした魔物だった。その体は大きく、身長は軽く250センチはありそうだ。そして、そんな魔物が肩に担いでいたのは、赤い髪の毛をした少女。時々「ううぅ………」という、つらそうなうめき声が聞こえてくることから、何とか意識はあるようだ。
俺は即座に魔物と少女に鑑定を使う。
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ゴブリンキング
Lv30
MP:61/61
STR:131
DEF:142
AGI:71
INT:28
スキル
「剛腕」「鈍感」「悪臭」
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レティア(瀕死)
エルフ
Lv12
MP:2/61
STR:30
DEF:28
AGI:38
INT:49
スキル
「火属性魔法:Lv13」「絶対防壁」
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どうやら、魔物の方はゴブリンキングと言う奴らしい。見た目通りにレベルもかなり高く、特にSTR値が異常だ。今の俺では到底勝てないだろう。
そして、少女の方はエルフで、名前の下に「瀕死」と表示されている。体に大きな傷を何箇所か負っている事から、あの魔物にやられたのだろうか。
「とりあえず、そんなことは今は関係ないか………でもなぜ、あのゴブリンキングは、あのエルフを担いで移動してるんだ?」
…………あ、そういえば、思い出した。
昔読んだファンタジー小説では、ゴブリンは生殖能力が高く、人間や亜人の女を巣に連れて帰ってはそれらに無理やり生殖させ、子を孕ませると。これがこの世界でもそうならば、この状況はヤバい。とりあえず、情報が欲しい。
俺は、何か情報が得られないかとゴブリンキングの方により視線を集中させながら、再び鑑定を発動させる。
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ゴブリンキング
ゴブリンの長。
ゴブリン族は総じて生殖能力が高く、時折人里から女を連れ去っては、自分たちの子供を孕ませている。
特にゴブリンキングは生殖意欲が強い。
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俺の視界には、より詳細なゴブリンキングのデーターが表示された。
「やっぱりそうか………まずいな」
俺はそれを読んで、嫌な汗を垂らす。
俺は奴に勝つことはできない。だから、この場面は気づかれないようにして逃げることが第一だろう。だが、俺の神経は見ず知らずの女性を見捨てて自分だけ生き残って、正常でいられるほど図太くは無い。
MPは………まだ余裕がある。ポーション類の方もストックは十分だ。
敵は……まだこちらに気が付いていない。
一つ一つ、今の状況を確認していく。
やっぱり、俺は目の前で助けを求めている人を見捨てることはできない。
一体、何やろうとしてんだろう、俺。これじゃあ、神様に後方支援用のチートを貰った意味がないじゃないか。
そんな事を考えながらも、俺は連れ去られようとしているエルフを助けるためのプランを頭の中で組み立てていく。
そして、それは出来上がった。
「よし、やるぞ………っ!」
俺は、手始めに地面に手をつき、無詠唱で魔法を発動させる。
すると、ゴブリンキングの周りのツタが、突然動き始め、ゴブリンキングに絡みついてその動きを数秒だけ止めた。この魔法は、地属性魔法の「ダンシングプラント」。周りのツタを操って、敵の動きを阻害したり、ツタの壁を作る魔法だ。今回は、それをゴブリンの体に絡みつかせる事によって、それの動きを阻害する事を目的としたのだが、十分に効果を発揮したようだ。
その隙を狙い、俺は後ろから奴のわき腹を狙って、風魔法「ウィンドカッター」を放つ。
俺の手のひらから放たれた風の刃がゴブリンキングのわき腹に直撃する。だが、その刃はゴブリンキングの体に少し傷をつけるだけで、すぐに霧散してしまった。
でも、それだけで十分だ。
はなから、この魔法で奴を仕留めようなどとは思っていない。そもそも、俺は奴を倒す必要が無いのだ。
未だに体に絡みついたツタによって動きを止められているのを確認しながら、今度は火属性魔法、「ファイヤーボール」を放った。メロンほどの大きさの火の玉は、俺の手のひらから発射され、さっきウィンドカッターによってつけた傷に直撃した。
「ギャアアアアアアアア!!」
ゴブリンキングの口から、悲痛な声が響き渡る。そして、奴は痛みのあまりに、肩に担いでいたエルフの少女を地面に落とした。
「………今だっ!」
俺はそれを見て、即座に走り出す。風魔法を足に纏わせて、少しでも速度を上げる。
そして、ゴブリンが未だにわき腹を抑えて蠢いている中、俺は少女の元にたどり着いた。遠くから見ては分からなかったが、少女は俺と同じ年ぐらいのように見える。ちなみに、胸の方もなかなか………そんな雑念を抱えながらも、俺は彼女を抱えた。
「………うぅっ」
「――っ! 大丈夫か⁈」
俺がエルフの少女をお姫様抱っこで抱え上げたその時、突如としてエルフの少女がうめき声を上げた。
少女は、うっすらと目を開け、視界に飛び込んできた俺に警戒心を含んだ視線を向けていたが、すぐ傍で奇声を発しながら呻いているゴブリンキングに気が付いて状況を把握したらしく。
「えぇ、何とか……うぐっ」
弱々しくはあるものの、俺の呼びかけに答えた。
それを確認した俺は、少女を抱き上げたまま立ち上がり、森の出口の方へと向かって、全速力で走り出した。
後ろから奴の凶悪な叫び声が響いてくるが、構っていられない。
この世界に来てからいくらか成長したステータスを以て、本来は走りにくいはずの森の中を疾走する。
森の景色は次から次へと後ろへと流れ、黒い髪は風に撫でられるようにして、少し起き上がった。
ちらり、と、後ろを振り向けば、ゴブリンキングは未だに元いた位置で傷口を抑えてうめき声を上げている。
もしや、ゴブリンキングが追いかけてくるのでは?と警戒して、いくつか保険はかけておいたのだが、どうやらその必要はなさそうだったな。
そのまましばらく走り、ゴブリンキングが完全に見えなくなってからも幾分か走った所で、走るペースを落とした。
エルフの少女に出来るだけ負担を与えないように、腕の中の少女に振動を感じさせないように注意しながら、森の中を進んでいった。
◆◇◆◇◆
どれだけ走っただろう。
どれだけ進んだのだろう。
それが分からなくなってきた頃、ようやく俺は森を抜けることに成功した。
その事に安堵の息をつつ、辺りを確認しながら腕の中でうめき声を上げるエルフの少女を地面に下ろし、アイテムボックスの中から、昨晩の内にMPローポーションと共に調合しておいた「ローポーション」を取り出す。
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「ローポーション」:体の傷の回復速度を少し早め、体力も少し回復させる。
回復レベル:6
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一応のために、昨晩、MPローポーションと同じ手順で水と薬草を利用して作っておいたのだが、役に立ったようだ。
「うううう………っ!」
「ローポーションだ。その場しのぎでしかないが、これで少しは楽になるはずだ。飲んでくれ」
「(コクン)」
俺は、取り出したローポーションの容器の細めに作られた口を、少女の口に突っ込んで、飲ませた。
ゴクンッ!
少しの間の後、少女はローポーションを飲み干す。しばらくして、少し楽になったのか、少女の痛々しい呻き声は、規則的な寝息に変わる。彼女のステータスを鑑定覗いてみると、名前の欄の横の「瀕死」と言う項目が消えていた。
どうやら、何とか一命はとりとめたみたいだな。
俺はそれを確認すると、自分もMPローポーションを完全回復するまで飲んで、エルフの少女を背中におぶった。………背中に、結構大きくて柔らかい物が当たっているが、何とかこらえろ!俺!
そんな葛藤を心の中でしながらも、少女を背負いながら俺は町の方へと歩き出す。