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第五十七話 頼み事

できるだけ早くといいながら、一週間かかってしまった……本当にすいませんm(__)m

「次は将軍の番じゃな」


 気を取り直して、国王様が次の人に自己紹介を促した。


「は、はいっ!」


 そう返事して立ち上がったのは、例の人見知り幼女……って、将軍?!


「わ、私は、ストレア王国軍総大将を務めさせていただいています、ハリエル・コーレンスと申します! こ、こんな見た目ですが一応成人していて男です! よ、よろしくお願いします?!」


 おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!

 マジかよっ?!

 衝撃の事実に、開いた口が塞がらない。

 その見た目で成人してて(この世界では十五で成人と認められるらしい)、しかも男とか……ロリ婆とかいう次元じゃねぇ。最早詐欺だ。


 それに、将軍……つまり、この国の軍隊の長だ。

 それがこの姿をしているとか、普通は想像がつかない。もっと筋肉ムキムキな奴がやってんのかと思ってた。


 ニーナもさすがにこれは予想できていなかったようで、目を点にしてる。

 そんな中、国王様が笑いを押し殺したような声で、


「ハリエルの実家であるコーレンス家は小人族の家系であり、同時に侯爵家でもある。ユート殿とニーナ姫もハリエルを侮ってはいかぬぞ? こやつは、戦術を編み出すことにかけては我が国一の才能じゃからの。ハリエル自身も弓矢の名手じゃが、この見た目で将軍という地位についておるのも、その軍師としての才能をかってのことじゃからな」


 そうハリエルを称えた。

 それを聞いた本人は「恐れ多いです?!」とか言ってあたふたしている。


 それにしても、小人族か。見るのは初めてだな。グリモアの街でも小人族の住人はいなかったし。……いや、約一名、小人族っぽいロリギルマスがいたけど、あれは人族だ。


「ふむ……では次は私の番ですかな?」


「そうじゃな、マルクス卿、頼む」


 で、次に立ち上がったのは腹黒そうな表情をしたおっさんだ。

 体型は典型的な痩せ形で、額縁眼鏡をかけている。……うん、どこからどう見ても、裏で色々と画策してそうな悪役なんだけど。


「お初お目にかかります、ニーナ・エスラド姫殿下。そして、調合師・ユート殿。私はストレア王国の財務管理及び、国政相談役をさせていただいております、アレクス・マルクスという者でございます」


「マルクス卿はリカルドと同じく公爵家の出身じゃ。我が国ではわしの次に大きな決定権を持つ、所謂ナンバー2と言っても過言では無い。少し悪人面をしているが、とても有能なわし一番の腹心じゃよ」


「国王様、自分の面の事は私も気にしているのですが」


 すいませんでした。俺も悪人面とか、腹黒そうとかって内心思ってました。


 少し寂しそうな表情になったおっさん――マルクス卿を見て、心の中で土下座して謝っておく。人は見た目で判断してはいけないようです。


 ちなみに、そんな中で国王様や駿たちは苦笑を漏らしていた。どうやらこれらもお馴染みの流れらしい。

 マルクス卿が苦労人に見えたのは、きっと気のせいじゃないんだろうな。


「よし、最後は我の番か」


 少し和やかな雰囲気の中、最後に立ったのは例の覆面の人物だ。

 真っ黒で全身忍び装束みたいなのを着ているのだが、熱くないんだろうか。

 とりあえず、物凄く厨二臭いので装備は外してもらいたい。黒歴史が抉られそうである。


「皆の者も疑問に思っていることだろう。何故、この世から争いが無くならないのかと」


 立ち上がった覆面が、何やら大げさに語り始めた。

 その内容があまりにも黒歴史を抉るような物だったため、その後の事は半分聞き流していた。ニーナがその話を聞き入って、何やら色々と感銘を受けてたっぽのは覚えている。


 で。話は長々と続いて。


「――ふぅ、前置きはこのくらいにしておこうか」


 って、今までの厨二は前置きだったのかよ!

 いや、あれが本格的な自己紹介だとしたら、それはそれで問題だったんだけど。それでも、前置きに三十分以上費やすってどういう事だよ! 隣に座っているみーちゃんが完全に爆睡してんじゃねぇか。

 そんな感じで、気取った風の覆面に心の中でツッコミを連発していた。


 ――あ、ちなみに、覆面の人物の正体はストレア王国の隠密部隊隊長さんらしいです。名前は「サスケ」とのこと。かと言って、彼は転生者とかでは無かったみたい。じゃあ、なんで厨二っぽいんだよ。謎である。





 所は変わって、王城の会食場。

 俺はそこで、国王様や勇者一行たちと昼食を取っていた。


 軽く三十人は座れそうな長いテーブルには今まで見たことも無いような食事の数々が並んでいる。

 例えば、何やらプルプルとした粒々の塊。日本風に言えば、カエルの卵っぽい感じがする。食感や味はイクラとスジコを足して二で割ったような感じ。

 他にも、真っ黒なのに物凄く柔らかい魔物の肉とか。生野菜のスティックの中に先端部分が二つに分かれていて、足みたいになっている根菜が混じっていたりとか。

 まぁ、出てくる出てくる不思議料理と不思議食材。これらがこの世界で珍味とされている高級食材だというのだから、流石異世界だと改めて認識させられた。ちなみに、全部とてもおいしかったです。


 そんな感じで異世界の珍味に舌鼓を打っていると、


「そう言えばユート殿、今の内に何か質問しておくことは無いか?」


 と国王様。


「質問することですか……そう言えば、調合するハイポやMPハイポの数を聞いていませんでしたね?」


「おぉ、そうであったな。ハリエルよ、ユート殿にはどれほどのポーション類を調合してもらえればいいかの?」


 俺の質問を受け、国王様が将軍であるハリエル氏にそう問うた。


「は、はい! 必要となるポーション類は軍四千人それぞれハイポを10本、MPハイポは3本。魔法士団千五百人にはハイポを5本にMPハイポは15本ずつかと思われますので、総計でハイポを47500本、MPハイポは34500本になる物と予測されます! そして現在、我が国にあるハイポとMPハイポの在庫はそれぞれ5000本ずつ。使用期限もあと一年は持つ物ばかりです。また、王都にいる調合師にそれぞれ百本ずつハイポとMPハイポを作らせ、1000本ずつは補充できる見込みかと。よって、ユート殿にはハイポーション41500本、MPハイポーションは28500本を調合していただければ」


「うむ……そういう訳なのだが、ユート殿」


「分かりました」


 それぐらいなら、二日中集中して調合を繰り返せば達成できる。十分、余裕を持って調合できるだろう。

 勿論、この城にあるものを使ってという条件付きではあるが。


「勿論、材料はこちらから用意する。用意するのは『癒草』でいいのだな?」


「えぇ、そちらのほうがより大量に生産できますし、何より、下準備が『治草』だと複雑すぎて生産効率が五分の一以下に低下してしまいますしね」


 そう、これが世の中にハイポやMPハイポが多く流通していない理由だ。


 ハイポの原料となっている「治草」やMPハイポの原料となっている「幽草」はその分布が「癒草」や「聖草」よりも圧倒的に狭く、魔素の濃い場所――ダンジョンの深部にしか自生していない。また、人工栽培しようにも種が未だに確認されておらず、実質人工栽培は不可となっている。その影響で、市場に出回っている「治草」や「幽草」はごくわずかなのだ。


 また、苦労して「治草」や「幽草」を入手しても、その後もかなり面倒な作業が必要となる。調合の下準備だけで「癒草」や「薬草」の五倍はかかるし、調合魔法をかけるタイミングもやたらとシビアだ。


 俺自身、数日前に自分の所に運び込まれた「治草」を調合してみたのだが、三回に一回は調合に失敗し、黒こげになってしまっていた。その生産効率の悪さは折り紙付きといえるだろう。俺でも、「治草」からハイポを調合するのは一時間に200本ぐらいが限界だ。

 本来の材料で調合する方が生産効率が悪いとはこれ如何に。


「ふむ、了解した」


 俺の意見を聞き、納得したように頷く国王様。その隣では、財務を管理しているというマルクス卿が何やら嬉しそうな笑みを浮かべていた。恐らく、原材料費が浮くのを喜んでいるのだろう。ちゃっかりしている人だ。


「そういえばユート殿」


 と、再び国王様。


「これだけの仕事を任せるのだ。何かそなたに褒美を送ろうと思うのだが、何か希望はあるかの? 大抵の事は聞けるが」


 ふむ、なるほど。

 俺自身、ポーションを調合するのはあまり負担にはならないが、国単位で見てみると、国の将来を左右する大きな仕事を任されるのだ。国王様の申し出も頷ける。

 それに、ここで断ってしまえば、国王様に対しても失礼な気もするし……そうだ、あれを頼んでみるか。


「それでしたら、丁度頼みたいことがあります」


「ほう、それは何か。申してみるとよい」


「はい。率直に申し上げます。――俺を鍛えてください」


 その俺の申し出に、国王様たちは呆けた表情を見せ、勇者三人は「やっぱりか」といった表情を作るのだった。









次回、「ユートの魔改造」


……嘘です。


ある意味、改造的な展開にはなりますが、常識の範囲内で――できたらいいな。



今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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