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第五十三話 勇者の吐露……的なもの。

 突然のみーちゃんのオーバーすぎる発言。国王様はその発言を聞いて、興味深そうに自身の髭を弄り始めた。


「ほう、ユート殿の調合の腕は世界一と……それは事実なのじゃな?」


「……ん」


 みーちゃんは国王様の質問に、誇らしげに頷く。


「ちょ、ちょっと待ってください?!」


 思わず絶叫に近い声を上げながら、国王様とみーちゃんの会話を断ち切り、割って入る。

 もう、不敬だとかそんな事は言ってられない。


「世界一とか、俺、そんな大層な技量は持ってないです! そもそも、俺自身、調合魔法を取得したのだって、二か月半前なんですよ?!」


「……そんなことは無い。確かに、ユウ君が調合魔法を取得したのはつい最近かもしれないけど、あれで大層な技量じゃなかったら、今頃世界中はポーションで溢れかえっているし、ポーション不足に陥ることなんてまずありえない」


「いや、あのハイペースで調合できてるのも、元はと言えば貰ったスキルの影響だし……」


「……大事なのは過程じゃない。結果」


「………」


 このみーちゃんの意見には、ぐうの音も出ない。


 大事なのは過程じゃない。

 この言葉は親父から耳にタコが出来るくらいには聞かされた。なんなら、その時の光景が今でも夢に出てくるまである。社畜だった親父の口癖だったからなぁ……。

 ……そういえば、うちの家族、今はどうしてるんだろうか。それに、俺の死体ってどうなったんだろ。神様が言うからには、落石に押しつぶされたって話だからなぁ(しかも大都会のど真ん中で)。死体がミンチ状になってて、火葬とか土葬とかができませんでしたーとかだったら……物凄い嫌だな。今度、神様ともう一度会う機会があったら、それとなく聞いてみよう。


 閑話休題。


「まぁ二人ともそう言い争うでない」


 そう、俺たちの間に割って入る国王様。

 ですが国王様。元はと言えば、あなた様が俺をここへ呼んだのが原因なんですけどね。

 まぁ、そんな事を実際に口に出してもデメリットしかないので言わないんだけどさ。思うだけだったら別にいいよね。


「はい、すいません」


「……ん」


 俺、みーちゃん共に反省。みーちゃんは大人しく席についた。

 そして、俺もそれに従って(どさくさに紛れてとも言う)席につこうとした所で、本日二つ目の国王様からの爆弾が降り注いだ。


「では、これからユート殿に調合の作業をしてもらい、それを見て、皆で決めようではないか!」


 ……あぁもう、どうとでもなれ。







 ――そんなこんなあり、現在地は王城の敷地内に完備されている調合室である。

 この調合施設、普段は誰も使わないらしいのだが、無駄に高性能な調合器具が揃っていた。はっきり言って、俺が普段使っているものよりも数段性能が良い。下手をすれば、この施設の機材だけで一財産を築けてしまう。無駄ここに極まれりだ。


 そして俺は、そんな豪華な機材の前で――白衣を着て立っていた。


「あの……この白衣、着る必要ってあるんですかね?」


 この白衣を着させた張本人――覆面を被った謎の人物に問う。

 で、そんな俺の質問を受けた覆面の謎人物は、


「当たり前であろう。古今東西、世界一の調合師や付与術師というのは白衣を着て、狂気に身をやつし――最終的には社会によって淘汰されるのが常なのだ!」


「それ、俺に死ねと言ってるようなものだよねっ!? あと、俺は別にマッドサイエンティストにはならないから!」


 まさかの、死亡フラグである。しかも、ダークサイドの死亡フラグという、ある意味で物凄い地味な感じ。


「なに、大丈夫だ。お前の遺骸は我が浄化し、瘴気をばら撒かないように厳重に封印してやるからな」


「だから、なんで俺がマッドサイエンティスト化するのを前提で話してるんですか!?」


 もう嫌……本当に何、この人。言っていることは厨二臭くて黒歴史をグリグリ抉られるし、何よりこのままだと口論は平行線を走り続けそうだ。

 もう、この厨二な謎人物の事はスルーすることにして(白衣は脱いだらグチグチ言われそうだったので着たままにしておく)、国王様の方へと向き直った。


 後ろで覆面謎人物が何やらグチグチ言っているような気もするが、それもスルーだ。


「で、俺は何を調合すればいいんでしょうか?」


 一言に調合と言っても、それはそれはたくさんの種類がある。

 一番オーソドックスな所で言えばローポーションやMPローポ。それの上位互換であるポーションやMPポーション。更にその上のハイポーションやMPハイポ。

 他にも、毒薬や麻痺薬。それらの症状を治療するための解毒薬や解痺薬等。

 まぁ、それ以外にも色々と出来ることは多い。


「うむ、ではそうじゃな……」


 俺の質問に、悩んだ様子を見せる国王様。だけど、その全身から如何にもウキウキしていますというオーラが駄々漏れだ。

 よっぽど、日々の生活に潤いが無いに違いない。


「では、簡単にハイポでも調合してもらおうかの? 素材は倉庫にあるものを()()()使って構わん」


 何故か「自由に」という所にアクセントを置いて支持を出す国王様。

 とりあえず、国王様の指示に従って調合室から直通で行ける倉庫に素材を取りに行った所で国王様の言っていた意味を理解する。


「おいおい……マジかよ。素材がねぇじゃねぇか」


 そう、素材が無い。

 とは言っても、無いのは「ハイポ」を調合するために必要な「治草」が――「治草だけが」綺麗さっぱりと在庫切れしていた。


「ん? ユート、どうかしたかい?」


 俺の監視の為か、ひょこひょことついて来てやがった駿が俺の反応を見てそう聞いてくる。


「いや……ハイポを調合するための治草が無くてな……まぁ、だからって調合ができないわけじゃないんだけど」


 治草が無ければハイポを調合できない――というわけでは無いが「回復特化調合魔法」を使わないといけない。勿論、「魔法複合」で作ったこの調合魔法は一般的に知られている魔法では無い。それどころか、下手をすると俺だけしか使えない魔法かもしれない。

 そんな魔法、知られれば色々と面倒な事が起こるのは確実だ。


 ……いや、何より、この「貰い物」である力を使うのはフェアじゃない気がする。


 この力は俺がこっちに転生してきたときに貰った、貰い物の力だ。

 そんな力を――自分が楽して掴んだこの力を振るってもいいのか。

 自分の力は自分で掴むべきじゃないのか。そんな考えさえ浮かんでくる。

 それは、同じ転生者であり、どこか狂気人と化していたアルバスを見た時からずっと思っていた疑問だ。あれは、自分で掴んだ力じゃなかったから、その力に溺れてああなってしまったんじゃないか……と。


 ギュッと両腕を握り、見つめる。


「ユート」


 そんな時、ポンと肩を叩かれる。

 駿だ。


「ユート多分、今はこう思ってるんだと思う『転生して得た力を振るってもいいのか』……ってね。そうでしょ?」


「お前、何で……」


「僕もそんな事を思った時期があったからさ」


「駿にも同じ時期が……?」


 冗談なんじゃないか。

 一瞬そう思ったが、駿のどこか寂し気な表情を見てそんな考えは捨てた。


「そりゃそうだよ。僕の勇者としての力だって、見方を変えれば他人から与えられた力だ。それに、僕が召喚されたのは小学生の時だったしね。あの時は自分に突然与えられた力が怖くて情緒不安定だったな」


 その駿の言葉にハッとした。


「確かに、楽して得た力っていうのは使い方を間違えれば麻薬にもなる」


 それがアルバスみたいなバトルジャンキーだね。と、駿は言う。

 とりあえず頷く。


「でもさ、そんな麻薬だって使い方を守れば役に立つ」


 あれか、「毒を持って毒を制す」か。何か使い方を間違えているような気もするけど。


「使える力は使える時に使った方がいい。そうすれば後から後悔することも無いからね。後悔したくなかったら、自分を見失わない程度にその力を使うべき……だと僕は思うけどな」


 そんな駿の言葉には、何か切実な想いが籠っていた……ような気がする。

 それが何なのか、俺にはよく分からない。だけど、今言った言葉は、駿自身が体験し、後悔し、そして得た「教訓」だと感じた。


「駿……お前……」


「まぁ、とりあえず素材を持って行こうよ。皆、待ってるしさ」


 そうだった。

 俺は倉庫の中から「癒草」を持って外に出た。


 「後悔しないために力を使う」……か。確かにそうかもしれない。

 とりあえず、今は勇者の言葉に従ってみるのもいいのかもしれない。

 何となくだが、心の中がスッキリした気がする。


 ……俺がそんな風に何となくいい気分に慕っていると、


「あ、そうそう。『治草』、確か倉庫の中にある魔法のタンスの引き出しの中にあったはずだよ?」


「そういう事は早く言えぇぇぇえええええ!」


 ……まぁ、いいか。叫び疲れたわ。









結局、生産職無双は今回では出来ず。

見返してみて、突発的に入れたくなってしまった……すいません。

明日か明後日には調合無双、更新します。

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