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第五十二話 俺が王城に「凄腕調合師」として拉致られていた件

今回、登場人物が一気に増えますがご了承を。

 会議室で国王様が呼んだという人達を他の皆と待つこと十分。


 ようやく、ガチャリと扉が開いて、国王が呼んだという他の者達が姿を現す。

 部屋に入ってきたのは、六人の男女たち。


 で、その内訳は。


 鎧を着た騎士風の好青年一人。


 何やらのファイルか何かで顔を隠している――その実、隠しきれていない――幼女一人。


 物凄い扇情的な服を着ているおっぱい星人一人。


 個人的にお近づきにはなりたくない、ヤンキー系の黒髪の青年一人。


 結構腹黒い事を考えていそうな表情で会議室を見回している、肥えたおっさんが一人。


 最後に、何か顔を覆面で隠している謎の人物――背は俺とあまり変わらない――が一人。


 気のせいだろうか。一気に会議室が途轍もなく異質な空間になったような気がする。


 ……と、そこで国王様の隣に座っているニーナの表情が僅かに強張っているのが目に入る。

 一体何を見ているのかと彼女の視線を辿り、行きついたのはヤンキー風の黒髪の青年。

 そのヤンキー風の青年は全身真っ黒で統一していて、遠目からでもかなり威圧感を出しているのが伺える。

 まぁ、そんな感じなので、箱入りに近いお姫様のニーナがビビるのも無理はない。


 それにしても、あのヤンキー、黒髪って事は、アイツがみーちゃんの言っていたもう一人の勇者か?

 ……何だろう。この、これじゃ無い感。自分の中の勇者のイメージが崩壊しかかっているような気がする。


「あ? 何じろじろと見てんだ?」


「いや、何も……」


 俺の視線が気に入らなかったのか、ヤンキー勇者がガンを飛ばしてきたので、視線をそらしておく。ああいった輩は必要以上に刺激しないのが得策なのだ。


「チッ」


 ヤンキー勇者は俺の態度に舌打ちをしながら、適当な席に座る。

 もう、他は椅子に座っていたので、それを見た国王様が席を立ち、


「皆集まったな。では、今から緊急会議を始める」


 今、この世界の運命を決める会議が始まった。





「皆、聞いているとは思うが、先日のミコイルがエスラドを襲撃した件についての各国の対応が決まったのでその報告をしようと思う」


 国王のその言葉に、全員が頷いた。……ヤンキー勇者はどこか不機嫌そうにしているだけだったが。


「まず、我が国じゃが、勇者四人。そして、軍四千人と魔法師団を千五百人を派遣する。他国では、ミスガル獣王国が獣戦士を二千人。アソレルド共和国が兵士千五百人。そして、ジュレード帝国が帝国騎士千人に飛竜騎士二十機を派遣するそうじゃ。時期は一か月後という事で四国とも同意した」


「し、しかし国王様」


「ん? 何じゃ?」


 大体の概要を説明し終えた国王に質問が飛ぶ。


 えっと、質問したのは……お、顔を隠してた幼女じゃないか。


 それにしても、何で幼女がこんな重要な会議に参列してるんだろうか。

 いや、そう言っちゃったら、唯の街の調合師である俺もこの会議に参列していることがおかしんだけど。つーか、俺は国王様と謁見するだけだったはずなのに、どうしてこんな場所で座ってるんだ?


 まぁ、そんな俺の疑問は横に置いておくとして。


「そ、それでは、遠征地に行った時のポーションを確保するためには些か時間が足りません。も、もう少し、時期を遅らせたほうが……」


 沢山の人に注目されるのが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしつつ自分の意見を述べる幼女。


 しかし、国王様はその幼女の意見を、


「なに、その必要は無い」


 と、バッサリ切り捨てる。


「えっ、は、はぅ……す、すいませんでしたぁぁぁぁぁあああ!」


 途端、涙目になる幼女。

 彼女をなでなでしたくなった俺はロリコンの素質でもあるのだろうか。

 無いと思いたい。


「気にすることは無い。お主の懸念は最もな物じゃからの」


 だが、流石の国王様。飴と鞭の使いどころはしっかりと弁えているらしく、幼女に優しい言葉をかけて慰めた。

 その言葉を聞いて幼女もある程度は落ち着いたらしく、大人しく席に座った。


 それにしても、本当に何で幼女がここにいるのでしょうか。そして、その事を誰も不思議に思わないんだろうか。それとも、俺の感覚が変なのか?


 相変わらず幼女に対しての疑問は尽きないが、今は会議中。俺がここに呼ばれた意味はさっぱり分からないが、いつ、俺に関係の有る話になってもおかしくはない。

 なんせ、こっちは一度、ミコイルの精鋭部隊と戦って――ボコボコにされているのだ。

 まぁ、そうでなくとも、俺の方を見て怪訝な表情を浮かべている人もいるので、話題に上がるまでは出来るだけ目立たないようにはしておこう。


 俺がそんな後ろ向きな事を一瞬の間に考えると、


「しかし、その心配は無用じゃ。ここにおるユート殿がそのポーションを調合してくれることになったからの」


 早速、俺のことが話題に上がる。


 ……って、え?

 国王様、何なんですか、その話。初耳なんですけど?


 そんな疑問を抱きつつ、駿の方へと視線を向けると。


「……プクク」


 笑ってやがった。

 俺の反応を見て、俺が思わずしてしまった間抜けづらを見て笑ってやがった!


 ……まぁ、でもそれはしょうがない。あの時、駿に王都に行くと言われた時に俺がしっかりと理由を追及しなかったのが悪かったんだ。


 それに、多少駿の笑い種にされただけで、特にこちらの方に被害はない。

 店の方も一日ぐらいは臨時休業した所で冒険者達にそこまで影響は出ないし。

 俺が少し駿にイラッとしただけだ。

 ……にしても、駿の笑い方って何かイライラするよな。

 あれか。駿って実はいたずらっ子で少しサド()っ気があったのか。

 今度から気をつけよう。


「国王様、先ほどから気になっていたのですが、彼は一体……?」


 俺から見て正反対の位置に座る腹黒そうなおっさんがそう国王様に問う。

 国王様はそんな質問に大げさに頷き、


「そういえば、皆にはユート殿の事を紹介していなかったの」


 国王様、どんだけ適当何ですか……。そりゃ、皆、俺の事を不思議そうな目で見てくるはずだわ。


「では、丁度いいのでな。ここらでユート殿と――知っている者も多いとは思うが、ニーナ姫の事を紹介しようかの」


「では、自分たちも自己紹介した方がよろしいですね。自分たちも彼とは初対面なわけですし」


「そうじゃな」


 騎士風の青年が提案し、国王様がそれを受諾した。

 なんかいつの間にか、重要会議の場が自己紹介の場に変化している。


 国王様はニーナに声をかけ、ニーナがその場に立ち上がった。


「魔王国エスラド第一王女、ニーナ・アストラル・エル・エスラドです。皆さま、よろしくお願いします」


 簡単な自己紹介をして、ドレスの淵を持ち上げて貴族風の礼をするニーナ。


「ほぅ……」


 ニーナの素養の良さがにじみ出ているその光景に、今まで難しい顔をしていたヤンキー勇者も感嘆の声を上げた。

 しかし、ニーナはその視線を受け、少し煩わしそうだ。

 だが、それも仕方ないと思う。ヤンキー勇者の視線は下心が丸出しだからだ。

 直接視線を受けたわけでは無い俺でさえも少し不快に思うぐらいである。


 その一方で、ヤンキー勇者以外のニーナとは初対面の人々は拍手をし、それプラスで各々個性的な反応を見せるだけに留まっている。


 幼女は自分が自己紹介をしたわけでもないのに顔を隠し、


 騎士風の青年は爽やかな笑顔を見せ、


 おっぱい星人は手を叩くのと同時に胸が揺れ(俺が思わずその光景に吸い寄せられていると、三度みーちゃんに足を踏まれた)、


 おっさんは社交辞令なのか、「こちらこそ」と頭を下げ、


 謎の人物は


「な、なんだと……我が目前に混沌の覇者である魔王の娘が君臨しているだと?!」


 とか言って恐れおののいてた。


 ……最後の謎の人物は一体何者なんだろうか。

 俺からすれば、昔の黒歴史を思い出させるようなことを言っている謎の人物の方が、よっぽど混沌の覇者にふさわしい。


 まぁ、そんな事は横に置いておいて。


 ニーナの自己紹介も終わり、次は俺の出番のようなので席を立つ。

 皆が注目しているので少しむず痒いが、無難に挨拶から始めることにした。


「えっと……初めまして。グリモアの街で調合師を営んでいるユートと申します」


 俺がそこまで話すと、幼女の中で何か思い当たるものでもあったのか、バッと立ち上がり、


「あっ。それじゃあ、最近グリモアの街に現れた凄腕の調合師って……」


 おいおい、「凄腕の調合師」ってなんだよ。

 俺はただ、少しレベルの高いローポを調合したり、調子に乗って低レベルの素材で上級の調合物を調合したりしてるだけだぞ?


 ……まぁ、ただ、恐らくこの幼女が言っているのは俺の噂なんだろうな。それが真実かどうかは別として、だけど。


「凄腕かどうかは分かりかねますが、ある程度の技量は持っているつもりですよ」


 俺の言葉に、少し困惑気味の反応を見せる幼女。


 だが、実際、俺の調合師としての技量がどの位置にあるのかなんて俺自身にはさっぱり見当がつかない。


 俺が拠点にしているグリモアの街はそれなりに王都から離れた場所にあり、そのせいか、町で活動している調合師の数はあまり多くない。

 最近はダンジョンが近くに出来たため、ポーションの需要が増えて、それに伴ってそれなりに調合師の数は増えたが、その中でも「調合魔法」を使える調合師はごくわずかだ。

 俺の知っている限りでは、俺を含めて二人しかいない。


 王都から調合師の情報が入ってくるわけでもなく、俺自身もそこまで情報収集を重要視していたわけでは無かった。

 つまるところ、調合師の平均的な技量がさっぱり分からないのだ。


 これで、自分の技量が優れているなどと判断できるのはよっぽど自意識過剰な奴ぐらいではないだろうか。


 それに、ここで俺に必要以上に期待が集まるのもあまりよろしくはない。

 勿論、今回の件は急用だが国家の存亡にかかわる事柄なので、出来るだけ協力はするつもりだ。だが、もしそれで十分以上のポーションを調合できなかった場合、周りから向けられる視線がかなり怖い。


 「何からも目を反らさずに生きる」とは心に誓ったが、回避できる厄介ごとは出来るだけ回避した方がいいに決まっているのだ。



 ――だが、俺は忘れていた。


「……大丈夫、ユウ君は調合に関しては世界一と言ってもいい技量」


 ここには、俺を盛り立てようとする少女(幼馴染)がいたという事を。





次回、今まではあまり語られなかった、ユートの調合チートが発揮されます。


あと、今回出てきた新キャラは外伝壱の方では頻繁に出てくる予定です。


では、今回はこのあたりで。

読んでくださった皆様、ありがとうございました(*´ω`*)

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