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第三十六話 どちら様でしょうか?

今回はキリの良いところで区切ったため、二千文字程と多少短いです。

ご了承ください。

 ――聖国ミコイル某所。



 薄暗い、どこかの建物の中に、「それら」は姿を現した。

 二人組のローブ。――間違いなく、数日前にユートがグリモアの街中で見かけた怪しい人物たちである。

 そんな彼らは、今もローブを深くかぶっており、その素顔を垣間見ることはできない。

 唯々二人して沈黙を貫き、その異様な存在感を辺りに放つばかりである。


「二人とも、戻ったのかい?」


 そして、声をかけることさえ憚られそうな二人に、当然とばかりに、友達に話題を振るかのように気楽に話しかける人物が一人。その人物もまた、ローブを深く被っており、更にその後ろには黒装束でお面を被っている五人の人影があった。

 ローブの人物は、声からして男性であることは間違いないが、その素顔はやはりローブを深くかぶっているので分からない。黒装束の五人に至っては声さえ発しない。


 ――それにしても、そんな彼らは()()()()()()()()()のだろうか。


 元々、二人組のローブが「転移」で現れる以前、この空間には人一人の気配さえ無かった。……そんな中、彼らは今までずっとここで待っていたかのように二人を向かい入れた。

 何か、魔法を使ったようでもない。


 しかし、そんな事はどうでもいいとばかりに、転移で飛んできた二人のローブはの内の一人が待ち構えていた方のローブの人物に近づき、懐から一枚の紙を差し出す。


「……今回の調査結果だ」


 その言葉と共に彼に一枚の紙を渡したローブたちは、彼の返事を聞くことも無く、「転移」で再びどこかへと消えていった。後には、後から出てきたローブ一人と黒装束の五人が残される。

 そんなローブの人物は、言葉少なく不愛想な彼らに文句を言うことも無く、手渡された紙に書かれている事に目を通していく。


「ふぅん……へぇ…」


 そんな、どこか達観さえ伺えるような独り言の後、数分ほどで彼は紙に書かれていたことを全て頭に叩き込んだ。


「うぅーん。それじゃあ、ストレアのグリモアにはある程度、牽制は必要かな? ()()ドラゴンをものの数分で駆逐したっていう勇者達にも興味はあるし、()()だけでも後々は手に入れないと、()との契約違反にもなっちゃうけど……うん。やっぱり、()()()の方を先に済ませておかないとね」


 そう、呟いた彼は、次の瞬間にはその場から消え去っていた。


 ――薄暗い空間の中には、もう誰一人として存在していなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ん……うぅ……」


 頭が、無性に痛い。

 どこか、体が異常に重い。


 何より、俺はどうして……


 ――ケーブルや何やらの配線がごちゃごちゃと散らばっている部屋に倒れているのだろうか?


「ここ……は?」


 怠い体や微かに頭痛がする頭に鞭を打って、俺は体を起こし、周りを見回した。


 ………。

 ………………。


 一通り見回した結果、俺は誰かが生活しているらしい部屋で気を失っていたという事が分かった。


 ――何故、俺が誰かが生活をしているのかが分かったのか。

 それは、足元に広がる配線は勿論の事、そもそもここが、どう見ても誰かの個室にしか見えない程に装飾されていたから。

 まず四方八方を囲むのは、ついさっきまでいたダンジョンのような岩盤ではなく、普通の家などで使われている木材や加工された建築用石材。床に至っては、フカフカのピンク色のカーペットまで敷かれている。

 そして当たり前(?)だが、壁の一部分には他の場所に繋がっているであろう扉が付いていたり、俺が今の今まで気を失っていたのは、綺麗なベッドの上だったり。

 唯一、「窓」と呼べる存在だけは無いが、それ以外は概ね普通の「部屋」だと言えるだろう。


 ガチャリ。


 俺がそのようにして部屋の中を見回していると、先ほど目についたこの部屋で唯一の扉が開き、誰かが部屋の中へと入ってきた。


 髪は金髪ロング。身長は……百五十センチくらいだろうか。低くもなければ、特別高いというわけでもない。

 そして、一番目を引くのは、その人形のように整った顔。ルビーのように透き通った赤色の目。鼻筋は小さいながらも綺麗で、その下の、ピンク色で柔らかそうな唇がなんとも言えないような魅力を醸し出している。……まぁ、つまりは可愛い。むっちゃ可愛い。


 そんな可愛い彼女には、一目見ただけですぐに分かる大きな特徴があった。

 背中に一対の()が生えているのだ。


 とは言え、背中に羽が生えた種族なら「有羽族」など、この世界に来てから幾らか見てきている。俺は特に驚くことも無く――そして、こちらに気が付いたその少女と、パタリと目が合った。


「……………。」

「……………。」


 俺と少女の間に、なんとも言えないような静寂が横たわる。


 そのままどれくらい時間がたったのだろうか。


 一秒――十秒――いや、一分以上は経っていたかもしれない。


 やだ、何かトキメイテきた。


 俺がそんなアホらしい事を考えていると。


「……どちら様でしょうか?」

「それは、こっちのセリフだよっ?!」


 ……どうやらこの少女、どこか天然が入っているらしい。




何だか、今回だけでかなりの伏線を張ってしまったような気がする……


次回は日曜更新になるとおもいます。

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