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第二十六話 とりあえず報告をば

フッハハハハハハ!

今日は投稿できないとか言っていたけど、気合で徹夜で書き上げたぁ!(徹夜により、テンションが崩壊。


とはいえ、少し短めです。ご了承ください。



 裏道で怪しげな奴らが消えるのを目撃した俺は、一応この事を報告しておくため、ギルドへとやって来ていた。


 既に、時刻はお昼過ぎの十二時。

 ギルドの隣にある居酒屋は、結構な数の客でにぎわっていた……というより、騒がしい。

 どうやら、昼間から飲んでいる者も多数いるようで、耳を澄ませば口論っぽいのも途切れ途切れで聞こえてくる。


『――やっぱり、エイルの宿の看板娘、素朴で可憐なユリちゃんが一番だろっ!?』


『いやいや、ギルドの受付嬢で、大人なアリッサさんが一番だ! 何より、眼鏡属性とか最早神だろ!』


『おまえは何を言っているんだ? ここは、紅蓮聖女クランリーダーのレティアだろうが! 巨乳エルフにこそ、真のロマンがあるっ!』


『俺はやっぱりギルマスのアリセル様だ。ロリとは神聖な物! つまり、ロリが最強!』


 ――……居酒屋で騒いでる連中、昼間から飲みすぎだろ。


 ――あと、最後の奴。それをアリセルが聞いたら、文字通りにミンチにされるぞ。あの容姿でも、四捨五入しちゃえば三十になってしまうアラサーなんだ。少しは労わってやれよ。全く。


 そう、心の中でツッコミを入れつつ、俺はギルドへと入る。


 ギルドの中はお隣の居酒屋とは正反対で、人が少なく、閑散としていた。

 今ギルドにいるのは、俺が見えるだけで十人ほど。その殆どがギルドの職員だ。

 恐らく、冒険者達は今頃、依頼の達成のために魔物と戦ったり、薬草を採取したり、町の人たちの用事を手伝ったりしていることだろう。あるいはお昼ご飯を食べているのかもしれない。


 まぁ、それはともあれ。


 人が少ないギルドだが、その中で見知った顔を見つけた俺は、その人の方へと向かう。

 その人はギルドの受付に立っており、俺の姿に気が付くと、「こんにちは、ユートさん」と声をかけてくれた。


「アリッサさん、こんにちは」

「はい。ユートさんがお元気そうで何よりです」


 冒険者ギルド、グリモア支部の受付嬢、アリッサさんが優しく微笑んだ。


 ……今日も、笑顔が眩しいです。


「まぁ、おかげさまで良い居住空間も出来ましたし、お隣さんとの仲も好調ですしね」

「それは良かったです」

「今更ですけど、お店の件、本当にありがとうございました」

「いえいえ、あれはあくまでも依頼の報酬として支払った対価です。こちらに感謝される理由なんてありませんよ」


 そう言って、俺のお礼をやんわりと断るアリッサさん。彼女のこういう大人で謙虚な所は、いかにも出来る美人って感じで何気に憧れる。

 さっきの居酒屋でアリッサさん推しだった奴の言い分も分かるような気がした。

 まぁ、俺にとっては高嶺の花過ぎて、恋愛感情とかそういうのは感じないけどな。


 ――と、俺がそんな事を思っていると。


「それで、本日はどんな用件でこちら(ギルド)に?」


 アリッサさんが、そう俺に問いかけた。


 ――おっと、余計な事を考えている場合じゃなかった。


 俺は「実は――」と前置きして、さっき見た事をありのままにアリッサさんに報告する。


 五分ほどで話を終えると、少し気難しい表情のアリッサさんが口を開いた。


「なるほど。そんな輩がこのグリモアの町に……」

「何か、心当たりはないんですか?」

「そんな人物、見たことも聞いた事もありませんね。ローブ姿と言うだけでも目立つはずなのに、更にその二人の内の一人は使い手が極端に少ない空間魔法を使えるとくれば、どこかで噂になっていてもおかしくは無いんですが……そんな噂があるという話も聞きませんし、もしかすると、その二人はつい最近この町に紛れ込んだのかもしれません」

「せめて、俺が二人の顔を確認できれば少しは目途が付いたかも……何か、すいません」

「いえ、もし仮にユートさんがその二人の顔を確認できたとして、顔だけでその二人の素性を暴くことはほぼ不可能でしょう」

「それは……何故?」


 俺のこの質問に、アリッサさんは少し眼鏡を指で持ち上げて答える。


「何故なら、そういう目立たないように行動している者の多くは、他国から何かしらの目的で送り込まれたスパイや工作員だからです。そういう『裏』の仕事を担当している人物は、まず、『表』の方に情報が残っている事はありえません。魔族なら話は別ですが、今は魔族の国は、事実上壊滅状態ですし、そもそも魔族たちの国と、ここ――ストレア王国は同盟を結び、比較的仲の良い間柄です。ここから送られた線はまずないでしょう」


 つまりは、俺がたとえ怪しい人物の顔を見たとして、その顔だけで個人を特定することはまず不可能。無駄になるだけだ――という事か。


「なるほど……」

「そういう事ですから、ユートさんが気に病む必要はありませんよ。寧ろ、そのような貴重な情報をいち早く掴んでくださったんですから、こちらの方からお礼を申し上げたいほどです」


 そう言って、頭を下げるアリッサさん。


 俺はそれを慌てて止めた。


「いやいや、俺は本当にたまたま見かけただけですから! それに、そもそもの所で、あの二人組が何か悪さをしようとしているのかさえも、まだ不明なわけですから! ……だから、アリッサさんが頭を下げることなんてないですよ」

「ふふふ…。では、そういう事にさせていただきます」


 俺の言葉を聞いて、アリッサさんお茶目に笑った。

 そのまま、彼女は言葉を続ける。


「それでは、この事は私から直接、ギルドマスターの方へと連絡しておきますね。もしかすると、今日明日あたりにギルドマスターが改めてユートさんの方へと直接話を聞きに伺う事になるかもしれませんが、よろしいですか?」

「えぇ、いいですが……何故、改めて俺の方に?」

「いえ、何となくそんな事になりそうな気がするだけです。……ここ最近、何だか嫌な予感がすごいするので、そのせいかもしれません」


 そう言ったアリッサさんの表情は、どこか不安げだ。


 場違いかもしれないが、不覚にも、そんな表情のアリッサさんを見ていると、「この人を守りたいっ!」という感情が生まれそう。最早、魅了魔法とか、そういうのを使ってるんじゃないだろうか。


「嫌な予感……ですか?」

「はい、私自身でも何故そう感じるのかはよく分かりませんが、ここ最近は何だか落ち着かない……といいますか。そんな状態が続いていまして」

「……大丈夫なんですか?」

「えぇ、日常生活には特に支障は出ていませんから。……それに、私の勘は良く外れます。恐らく今回の事もあまり大きくはならないでしょうが、ここ最近は近くで戦争が起こったりしていますから、ギルドマスターが話を直接聞きに行くのは、恐らく間違いないかと思いますよ」

「分かりました」


 そう返した俺に、アリッサさんが。


「今日、明日は私はギルドマスターに同行できませんので、おそらくギルドマスター一人でお邪魔するか、私以外の職員を引きつれてそちらに訪れることになると思いますが、宜しくお願いします」


 と、再び頭を下げた。


「いやいや、俺だって色々とギルドやギルマスには助けてもらってますから。ほら、こういう時こそ、「支え合い」の精神ですよ?」


 そう言って、再び頭を上げるように促した俺を見て。


「うふふ…。それもそうですね」


 再びアリッサさんはお茶目に笑った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後、しばらく俺はアリッサさんと世間話のような物をした後、一時間ほど時間が経過していたので、慌ててギルドを後にした。


 ――にしても、アリッサさんが言った「私の勘は良く外れます」とか、まんまフラグになってるんじゃ……。


 そんな、物騒で恐ろしい思考には出来るだけ気が付いていないようにし、俺は町の商店街へと足を運ぶ。


 ギルドから出て、メインストリートを北の門とは反対の方向――南へと五分ほど進むと、その商店街は見えてくるようになる。


 そこは、さっきまでのギルドの様子とは全く違い、新鮮な食材やその他日常品を求めて多くの主婦をはじめとした人達であふれかえっていた。

 そして、『へいらっしゃい!』威勢の良い呼び込み文句がそこら中から発せられている。


 俺はそこで今日の晩御飯の献立を考えつつ、食材を買っていく。


「おっ、今日はイザの葉が安いな」


 立ち寄った八百屋の特売品コーナーにあったそれを、俺は掴んで吟味する。


 「イザの葉」は、見た目も、味も、食感も、「キャベツの葉」その物な異世界の野菜だ。

 唯一キャベツと違う点と言えば、この葉は「イザ」という落葉樹の新芽であるということぐらいだろうか。

 冬に葉を全て落とす「イザの木」は、春先になると、再び枝のいたる所から薄緑の新芽を生やし始める。その新芽は瑞々しく、食用としてかなり重宝されるのだとか。


「じゃあ、今日はロールキャベツにするか」


 八百屋で、キャベツもどき――「イザの葉」を多数購入し、本日のメニューも決まった。


「少し早いけど、今日はこれで帰って飯の準備をしておくか……」


 俺はそう呟くと、自宅へと戻るために踵を返した。






何気にヒロイン度が高いアリッサさんなのでした。



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