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第十三話 ある意味精神的にハイスペックな俺

少しだけ投稿が遅れてしまいました…申し訳ありませんm(__)m


今回はほぼネタパートです。次回から本格的に一章の佳境に入っていきます。ネタがくどいと思ってしまっても、そこはご了承ください。僕自身、こういうやり取りが大好きなんです。


という事で、今回の話をどぞ!

「う……んっ!朝か…」


 次の日、俺は昨日と同じように目覚ましの音によって目を覚ました。


 昨晩は少し遅くまで調合を繰り返していたのでまだ少し眠いが、今日も露店を開く予定なので、頬を両手で挟み込むようにして叩いて無理やり目を覚まさせた。ちなみに、睡眠時間は四時間程度。元ゲーマーとしてはまぁ寝れた方だと思う。でも、成長期のよいこはもう少し寝るように。俺は色々な意味で成長することは諦めているから別にいいんだけどな。


 ベッドから元気よく飛び降りた俺は、手早く着替え、下の食堂で朝食を取るために一階へとおりた。

 今朝は、一昨日俺が討伐したシルバーウルフのタンのスモークを食べた。味付けは塩だけというシンプルな物だったが美味しくいただきました。そういえば、ここの食事、誰が作っているのだろう。まぁ、また今度聞いてみるか。


「ユリさん、ごちそうさまでした」

「はい。お粗末様でした」

「あの、今日も宿の前で露店を開かせてもらっても良いですかね?」

「うん、むしろ、こっちからお願いしたいくらいだよ!昨日、露店のおかげか、いつもよりもお客さんが増えたからね」


 俺の質問にそう返して満足そうな笑みを浮かべるユリさん。俺としても、そういった形で売り上げに貢献できたというのは嬉しい限りだ。


 宿の許可も取れた事だし、俺は早速露店を開くことにした。

 宿の前で大きめの布を広げ、商品と「メイド・イン・ウェア」をアイテムボックスから取り出して並べていく。


 昨晩はそれなりに時間があったのと、新しく買った調合セットの生産効率が高かったことから、かなりのポーション類のストックを確保できている。


 ちなみに、新しい調合セットで一度で調合できるポーションは瓶10本分。これまでの調合セットの実に三倍以上の量である。


 それにしても、かなり瓶が不足してきてるな。昨日みたいに雑貨屋で買ってくるのもいいんだが、そうなるとコストがバカにならない。瓶もタダじゃないんだ。となると……。


「おい、ユート!」


 そんな時、頭の上から声がかかった。


 軽快なその声に俺が視線を上にあげると、そこには紅蓮聖女アぺフチ・カムイのノエルがニッコリ笑顔で俺を見ていた。


「繁盛してるか?」

「まぁまぁってとこだな」

「そっか、まぁ、その品質なら当たり前だよな」


 ちなみに、今日は昨日飛ぶように売れた事に俺が調子に乗ってそれぞれ少しずつ値上げしている。そのせいか、昨日よりは客の食いつきは悪いものの、それでも繁盛していると言えるほどには露店の周りに客が集まっていた。



 そんなこんなで三十分後……


「ぜぇ、ぜぇ…はぁ、はぁ…今日はこれで売り切れ…です。また明日、お待ちしています」


 俺は気合いで商品を売り切った。……うん、色々と地獄だったな。

 俺の言葉にまだ少しだけ残っていた客も諦めて散っていき、宿の前には、俺と何故かずっと残っていたノエルが座っているという状態になっている。


「お疲れさん」


 そう言って、水筒を放り投げてくるノエル。俺はそれを危なげなくキャッチし、一言礼を言ってから中身をゴクゴクと飲んだ。水筒から口に流れ込んでくる甘みが無性に心地いい。


「ぷはっ! ……ありがとな」


 俺は再びノエルに礼を言って、水筒を投げ返す。


「まぁ、あんだけいい契約を交わしてもらったんだから、これぐらいは当然だろ。それより、さっき何か考え込んでたみたいだが、何かあったのか?」

「いや、それほど大きな問題ではないんだけど、ポーションを入れる瓶が圧倒的に不足してきててな…」

「あー、それなら、冒険者から買い取ったらどうだ?」

「…冒険者たちから買い取る?」


 ノエルの言葉にコクン?と首をかしげる俺氏。妙に乙女チックなのは目をつぶっていただきたいです。はい。


「あぁ、冒険者の使用済み瓶を安く買い取って洗浄して再利用するんだよ。実際にそうしている所もいくつかあるしな」

「なるほど、そういう事な」


 この異世界にも「リサイクル」精神は根付いているようだ。スリーR、とても大事。


「確かに、それなら瓶を安く定期的に仕入れることが出来るな…それに、冒険者達も金を回収できるし、双方にもメリットがある」

「そうそう!…ってことで、俺の空き瓶も買い取ってくれねぇか?」


 そう言いながら背負った鞄の中から一本の瓶を取り出すノエル。しかし。


「おい、これ酒瓶じゃねぇかよ!…しかも、アルコール臭ぇ……」

「まぁ、そうだけどよ。でも、瓶には変わりないだろ?」


 いや、そうだけどさ!


「サイズとか全然違うし、使えないよ……」

「あははは…嘘嘘。冗談だって! ほら、これはちゃんとした調合用の瓶だから」


 そう言って俺を宥めつつ、ノエルは十本の瓶を俺によこした。


「あぁ…確かにポーション用の小瓶だな。でも、俺は買い取り価格なんて知らないぞ?」


 この世界には困った時の鑑定団なんて存在してないだろうしな。あぁ、異世界まで出張してくれないかな……まぁ、無理だろうけど。


「それなら、他の店では五本で銅貨三枚っていうのが多いから、そういう風にすればいいんじゃないのか?」

「うーん。なるほどな……とりあえず、今回はその価格で買い取るよ。今後は実際に自分で調べてから要調整ってことで。…じゃあ、十本で銅貨六枚で良いか?」

「あぁ、いいぜ」


 そう言うノエルから空き瓶を十本受け取り、銅貨六枚を手渡す。


 その時、俺がアイテムボックスから硬貨を取り出すのを見てトウヤが驚いた表情を作っていた。


「おっ!?ユート、お前ってアイテムボックス持ちだったのか?」

「うん?まぁ、そうだけど、どうした?」

「いや、特に無いんだが、アイテムボックス持ちを見るのは久しぶりだったからな」

「ふーん」


 俺がそう返答すると、突然一人でブツブツと言い始めるトウヤ。「調合魔法持ち………アイテムボックス………クラン………勧誘………」と色々と聞こえてきたので、一応釘だけは刺しておく。


「一応言っておくが、俺は基本一人でやっていくつもりだからな?クランとかには入らないつもりだぞ」

「な…何だと?!何故、俺の心を……まさか、ユートは心を読めるのか?!」

「んなわけないだろ。俺はメンタリストか」


 それに、クランに加入しないことは先日に言ってるだろ。

 ……まぁ、でも。


「クランに入る気はないが、時々パーティーを組むくらいなら問題は無いぞ」

「おっ!?まじか!それなら、都合のいい日を教えてくれ!」

「俺は基本、いつでも暇だ」

「あ……そうなのか。何か悪い」

「そこで謝らないでくれよ!?」


 もうなに? 泣いちゃうよ?


「あ……まぁ、とりあえず、今日はこんなところでおさらばさせてもらうわ!それじゃ!」


 そう言って、場の空気に耐えかねたのか、「ピュピュピュピューン!」とどこかへと走り去っていくノエル。俺は微妙に霞んだ視界でそれを見送った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ノエルから逃げられ、その後に店じまいを完了させた俺は、一昨日ぶりに紅蓮聖女アぺフチ・カムイのギルドホームへとやって来ていた。相変わらず、ホームの横の孤児院では楽しそうな子供の声が響いている。


 俺にもあんな風にみんなとはしゃいでいる時期が……いや、特に無かった。

 いや、思い出せ!ユート、もとい戸神裕翔!……そんな風にして頭の中の片っ端から記憶を掘り返してみるが、やはり俺の小さいころの友達と遊んだ記憶は発掘できなかった。

 それどころか、俺って友達いたっけ?という疑問さえ湧き出てくるようになる。やべぇ、俺の頭、悲しい思い出だけなら人間国宝レベルだわ。


 そんな自虐ネタを繰り返していると、唐突にギルドホームの扉が開いて、赤髪のエルフが姿を見せた。

 俺がインターホンのようなものを鳴らして呼んでいたのだが、準備に時間がかかっていたらしい。


 そのエルフの少女(ちなみに、歳はすでに二十を過ぎているが、エルフは長寿の種族なので精神年齢は俺とほぼ変わらないらしい)は俺の様子に気が付いたようで、心配そうに声をかけてくる。


「ユート君、おはよー……って、顔色悪いよ?!どうしたの?何かあった?」

「い…いや、何もない。気にしないでくれ…」


 エルフの少女―――レティアは俺に気を使ってくれるが、時にはそのやさしさが人の首を絞めつける時がある。今がその典型的な例だろう。良薬は口に苦しの逆パターンってやつだ。ことわざにするなら、「砂糖は虫歯を促進させる」。…いや意味が分からんか。というよりも、そもそもの所で良薬は口に苦しの用法を間違っている気がする。


 俺がそんなどうでもいいことを考えている間にも、レティアとの会話は進んでいく。


「そう?それならいいんだけど……」

「あぁ、そうしてくれ。……それより、そっちは準備できたか?」

「え、うん。一応、薬草は九十本、霊草は六十本用意したよ。他はあまり数が集まってないから、今回はパスかな?」

「了解……それじゃあ、ローポが六本と、MPローポが四本だな」

「うん!」


 俺は薬草などが入った袋を受け取ると、アイテムボックスにそれらを収納し、かわりにローポとMPローポを取り出してレティアに手渡した。その際、少しだけ俺とレティアの手が触れて、レティアに物凄いオーバーに手をひっこめられたとだけ言っておこう。……あれ?どうしたんだろ、いきなり目から水が…

 俺が一人落ち込んでいると、また心配したのか、レティアが再び俺を心配したように声をかけてくる。


「ねぇ、やっぱりどこか調子悪いの?元気がなさそうだけど…」

「いや、本当に何もないから」

「そう……何かあったら、私に相談してね!」


 まるで、いじめ相談センターの広告のような決まり文句を言ってくれるレティア。


 …いや、俺が落ち込んだのって、あなたのせいなんですけどねっ!


 まぁ、レティア自身は意識的にやったことじゃなくて、本当に手が触れてしまったから、条件反射的に引っ込めた。そんな感じなんだろうけど。…というか、そうであってほしい。


 そんな事を考えつつも、レティアのありがたい心遣いだけは受け取っておくことにする。


 その後、心身共にずたずたにされかけた俺は、主に心の傷を回復させるため、宿の部屋にこもり、延々と素材が続く限りポーションを生産し続けた。単純作業とか反復作業とかを繰り返していると心が直っていくのは、ボッチ時代に身に着けた俺のユニークスキルだ。


 ボッチの自己修復能力を甘く見てはいけない。なんなら、ちぎれた腕でも一晩たてば生え直ってるレベル。……いや、さすがにこれは言い過ぎた。


 まぁ何より、ユリさんの眩しい笑顔と、未だに誰が作っているのかもわからない宿の料理は俺の心に優しくしみわたっていくのだった。








……この話を書いている途中、作者は無性に心の傷をえぐられました。

そう、作者は元ボッチなのです。(現在は普通に過ごしてます)

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