バインド・バインド
”埋葬され続ける真実”、それは純粋たる暴力だった。その暴風雨はすべてをなぎ倒す。真理も真実も虚言も虚実も全てが無意味、全てを等しくなぎ倒す。その真実の針が彼に届かぬように、彼を微塵たりとも傷つけぬように問答無用にその暴力は立ちふさがる全てをなぎ倒す。
相手の手を縛りあげ、その指先の一つを入念に潰し、足に重しを吊りつけ、その健を切り裂き、口をふさぎ呼吸を止め、哀願するその目を潰し、耳をつん裂き、決定的な優位に立った上で、その暴風雨は吹き荒れる。
そう、真実は決してそれには届かない。それが ”埋葬され続ける真実”だ。そのデタラメが ”埋葬され続ける真実”だ。
「しかし、それこそが改竄者に相応しい」少女の姿の魔女喰らいが全身を血に染めて言い。
「しかし、それこそが校正者に相応しい」左手そのものを失った魔女狂いが己の新しい左手となるべきレザーの皮膚を己に貼り付ける。
「まさに神の指先の暴力」黒いドレスの所々が破け、なお己の存在を薄くした言障魔術師が言う。
しかし、その顔に浮かぶのはどれも歓喜、喜悦、狂喜、予想以上だとその顔のどれもが、それを言う。
「きぃーハッ、きぃーハッはLTUハ、生き残った生き残った、どうしようどうしようジャック・バロン」まるでその暴力の象徴のような格好をした魔女、”埋葬され続ける真実”は自分の肩口の不細工な鳩の人形に可愛らしく、いや、おぞましく首をかしげてみせる。
「私の手は真実をその手に掴めない、代わり、虚実を得る」ジャック・バロンと言われた不細工な鳩の人形が重々しく、堅苦しく、発言する。それが次の暴力の合図だった。




