THE EGG
その始まりは絶望だった。しかし、絶望だけでは、世界を塗りつぶすには足りず。
また、それに狂気を足したところで、なおも足りない。
そこに一つの才能が登場する。その才能の名をダズル・ドズルと言う。
才能、それは欲したところで手に入れられるものではなく、自分の中にソレがあると見つけたところでソレが己の欲する才能であるということは希薄だ、だが、それに、その才能に複数の欲望と絶望と狂気が絡みついた時、それは世界を塗り変えるほどの大爆発を引き起こした。
世界を塗りつぶすほどの絶望、今居る世界に絶望しきって、なお死よりいっそう遠く、そうしてそこにそれは現れた。
そう、それは唐突に現れる。
眼前に現れたそれは、扉だった。手指骨を組み合わせたようなその意匠は、異様だった。いや、異相だった。その扉は耳障りな音でがしゃがしゃと唄う。絶望という名の歓喜曲を…
眼前に現れたそれは、本だった。表紙と呼ばれるべきる場所には、大きな口唇が、そして、その中には世界があった。その口は告げた。絶望の中にあるたった一つだけの希望を…
眼前に現れたその光景は死への行進だった。死への渡し賃を払えとフードをかぶった者は言い。引き返すなら今だと虚ろな目をした死者達が口々に言う。そうして告げられるのは絶望を超えてなお呼ばれる狂喜への喚起曲だった…
そう様々な形を為したそれはあらゆる意味で誘曲の扉だった。閉塞しきったその世界を貫き、新たなる世界を生み出すための世界の卵、それを魔女という名の孵卵器に入れ、希望という名の絶望と欲望という名の狂気で抱きしめる。
さぁ、その欲望と絶望と狂気に一匙の希望を加えて、振って振って、そうしてまぜこぜになった坩堝の中で起こる錬金術をさぁ、覗き続けてみようではないか、貴様が手に持つ卵から孵った魔女という名の絶望に等しい希望のなかで




