フラグメント
「そう、そう、まさにその通り、決して、高みに登ることは叶わない魔術だ」言う彼女から離たれた文字列が、鎖としての輪を形成し、そうしてひとつづつが魔女に絡みつく
「それでも立ち位置を変える方法ある。自分が高みに登れないのならば、相手をその位置まで引きずり下ろす、それだけだ」
「では、記述するとしよう。記載するとしよう。書き綴るとしよう。お前達の存在を、そうして支配するとしよう、この空間を、文字列の支配するこの世界だからこそ、いかんなく効果を発揮する文字列を、記想しよう、さて、成功する可能性と失敗する可能性、そのどちらをあなたはより多く含んでいるのかしら」
「では、言障魔術式を開始する。記述式、それは魔女を伴った男である」
「認証、それは我らが目的を妨げる障害である」文字列そのものが、それに応えを返す。それに応じて言障魔術師の姿が霞んでゆく
「くっくっくっ、貴様、その姿、とうとう文字列に毒されすぎて、自分を顕す言葉さえ失いはじめておるな、そのような魔術師が何をしにきた」少女の姿となった魔女喰らいが言う。
「それにわたしは”宣言します” 私達は私達の魂の尊厳を取り戻す為に、様々なる物語の断章、その闘いに生き残る為にと」
「それは我らとて同じ、われらとてこの世界に身を投げるしか望みを叶えるすべ無き魔術師」
「さぁ、さぁ、貴様の願望が、貴様の物語が、唯一この世界を変革すると言うのならここに貴様その望みを叩きつけるが良い、”埋葬され続ける真実よ” 貴様のその闇が我らを凌ぐほど濃く深いならば、さぁ我ら全てを呑み干し、そして昇華させたまえ、新たなる参入者、そして新たなる願望器よ!!!」




