言障魔術
「記述式を開始する。”待て、読み間違えた物語”」しゃぁらららん、と鈴の音に似た金属の澄んだ音がする。その腕にびっしりと描かれた文字列が浮き上がり、その言葉を実現する。
当たり前のように、当然のように加速し始めた物語に制限をかけたのは、新たなる魔術師だった。
そいつは、かすれた声を喉の奥から絞り出しながら事象の紹介を始めだした。
「初めまして改編者、そしてこの物語の主人公、次々と起こる事象に戸惑われているようですが、ここが、いえ、あなたが停滞して澱んだ物語を改変する特異点ゆえ…」
どす黒いドレスに身を包んだ女は、静止した時の中で似合わぬ優雅な微笑みを浮かべたてみせた。
「腐れた戯れ言はそれで終わりか言障魔術師」停滞は、一瞬、その制限は当たり前のように魔女喰らいのその言葉によって解除された。
「そういえば、いつまで、と制限を言っていませんでした、記述式、私は再度”宣言します、待ちなさい、魔喰らい”」
「その世界の可能性を具現化する。自身の可能性を現実化する。それが、現象魔術だ」
「だが、あまりにも自分を逸脱しすぎた可能性は具現化不可能、もっとも使えない魔術、それが言障魔術だ」ぐけぐけと斑模様の蛙が止まった時の中で自分の娘の身体を舐で回しながら言う。
「そこに可能性があれば、例えそれが他人の可能性でも具現化できる。それが現象魔術だ。これでも使えないとほざくか、魔女狂い」彼女のどす黒いドレスから、文字列が剥がれ落ちて、空に浮く、その下から顕れる真っ赤なドレスは血のように見えてとてもとてもグロテスクだ。




