5話
航空戦艦伊勢の戦いです
1944年6月12日、マリアナ沖
最新鋭の超巨大装甲空母琉球、能登と歴戦のエースパイロット、最新鋭艦戦である烈風と同艦攻流星を中心とした第1及び第2航空戦隊に所属する歴戦の赤城、瑞鶴、翔鶴、飛龍、蒼龍と最新鋭の大鳳とその所属パイロットたちは来るべき米軍との決戦に向けて訓練をしていた。
「まったく、後ろの飛行甲板に何の意味があるのやら・・・・・・」
琉球と能登を斜め後ろから護衛する戦艦の艦橋の上で私は呟いた。
申し遅れた、私は戦艦と空母をハイブリッド化したと言える極めて非常に奇妙な軍艦である航空戦艦伊勢の艦魂だ。
私が何故この様な改装を施されたかと言えば、それは1942年6月21日のマーシャル諸島沖海空戦で、第1航空戦隊所属の空母加賀と第4航空戦隊の鳳翔、龍驤が立て続けに撃沈され、赤城も大きな損傷を蒙り、当時赤城で指揮を執っていた第1航空戦隊司令以下、同戦隊の幹部が全員戦死し、更に運悪く空母祥鳳まで撃沈されてしまった事や、その前年の終わりに私の妹である日向が第5砲塔で爆発事故を起こしており、私達が水上機か空母用艦載機が運用出来る様に改修される事となったのだ。
それと同時に琉球を護衛すべく陸奥(史実と異なり爆沈は回避できた)も対空能力向上改修を受け、長門も機銃の増備を実施したのである。
山城と扶桑は航空戦艦化されておらず、活躍の場は無いと言われている。
その為、2隻とも内地で練習艦として新兵達を訓練していると言う。
「偵察機から入電!敵機動部隊はポートダーウィンを出港した模様です!」
通信士官がそう言うと艦橋は一気に慌ただしくなる。
そう、私こと伊勢は第3航空戦隊の旗艦で、日向と共に商船改造でありながら中型の正規空母である隼鷹と飛鷹の護衛を担当していた。
私は防空指揮所から飛行甲板を眺めるとホルスターに指していた拳銃を抜き取り銃弾を込めたのである。
「果たしてどうなることやら・・・・・・」
私がそう呟くと後ろの飛行甲板の前にある左右の射出機に搭載されていた各2機の魚雷を装備した97式艦上攻撃機を見やった。
『第2航空戦隊第1次攻撃隊発艦開始!!』
艦内放送を聞くや否や、射出機から2機の濃緑色の航空機が飛び立つのが見えた、無論、私自身この改装で水上機母艦に匹敵する航空能力を手に入れたのは嬉しいが内心は帰艦出来る可能性が低い旧式艦載機を運用している今回の作戦概要を聞いた時は憤慨した。
無論、今回の航空作戦でも指揮を執る事が決まっていた赤城さんに「もし、自分が浮かんでいたら艦載機は回収する」と言われた時に怒りは収まった。
どうでも良いが、艦隊の前衛を務めるのは大和、武蔵、信濃、紀伊の4隻に加えて長門、陸奥、金剛、比叡、榛名、霧島の6隻らしい。
対する米艦隊は空母エセックス、サラトガ、レキシントン、エンタープライズ、ハンコック、ワスプに加えて最新鋭のニューハンプシャーに、護衛として最新鋭の戦艦アイオワ級2隻とサウス・ダコタ/ノース・カロライナ級計6隻にアラスカ級巡洋戦艦2隻だと言う。
数では我が方優位だが、敵の方が最新鋭艦が多い、油断は禁物だ。
私は自身の飛行甲板から飛び立つ艦載機たちを見送ると隼鷹ら2隻の前に出て対空警戒任務を開始した。
そう、私は対空監視艦としての役割が有り、敵機を早急に発見し、空母に邀撃用に残している戦闘機をいち早く発艦させる為の支援をしなければならいないのだ。
『対空戦闘用意!!主砲、三式弾装填急げ!』
艦内放送でそう流れると艦橋を挟んで船体前部と中部に搭載している36㎝連装砲がゆっくりと右舷に動き、上空に向けて仰角を上げる。
「さて、対空戦闘か・・・・・・お前らも覚悟は良いな?」
私がそう言うと日向と防空化改修を受けた摩耶に五十鈴、もともと防空能力の高い大淀と仁淀に秋月型駆逐艦春月と夏月が頷いた。
「撃てぇえーーー!!!」
私がリボルバーのトリガーを引くと4基8門の36㎝砲も一斉に火を噴く。
暫くすると上空に巨大な火球が形成される。
しかしレーダーで敵機が健在である事がわかり、次弾装填命令が下る。
その次の瞬間、摩耶の20㎝連装砲と大淀の15㎝3連装砲が火を噴く。
隼鷹と飛鷹の2隻から戦闘機が飛び立つまでの時間稼ぎとしては十分だ。
私は敵機を睨みつつ再びリボルバーに弾を込めた。
「この私が浮かんでいる限り、空母に指一本ふれさせねぇ!」
私がそう言うと次の瞬間、再び36㎝連装砲が火を噴くのであった。




