ラ・ボヌシャンス
最近生死をさまよいまして、その時入院時の妄想を書き留めてみました。
***覚醒***
目が覚めた。
どこにでもある壁紙の貼られた白い天井。
今は何時なのだろう、まだ外は暗い。
病室のベッドの上で天井を眺めている。
昨日部屋で頭がふらついてホテルのルームサービスを呼んだまま意識が無くなったようだ。
よろしいですか?
医者らしき者が声をかけてきた。
30代後半くらいのちょっと地味な風貌の男である。
知らされたことは、
すでに手術は終了していること。
私の身の上はホテルと警察の問い合せで、確認済みであること。
しかし、身寄がないため、許可は、本人の事後承諾としたこと。
かなり危ない状況であったこと。
実験中の手術法ではあったが、延命のため仕方なくしてしまったこと。
術費及び入院費は必要なく、その後の入院費も病院に協力するなら無料であること。
経済的にもめどがつくので、数日前までの仕事の依頼を病気を理由に全て断って治療に専念することにした。
***病室***
看護婦が常に横について検査機器をチェックしている。
体からは胸から2本のチューブ
さらに、頭頂より3本のチューブが出て中を透明な液体が流れている。
そのすぐ隣、それぞれのチューブの場所と同じところから各1本のケーブルが出ている。
胸の中央に10センチ長丸のパネルが埋め込まれている。パネルからは2本のケーブル。
それぞれのケーブルは検査機器に繋がれ、チューブはビニールの袋につながっている。
ベッドで仰向けに寝て、頭頂部から出ているチューブを流れる無色の液体とその中を点々と流れる赤い粒を呆然と眺めていると、不思議な感覚になった。
自分の部屋に帰りたい。。ふと、そう思ったとき、部屋の中の感覚が戻り、あまりの安心感にそのまま眠ってしまった。
目が覚めても相変わらずの病室である。
つながれたケーブル類は相変わらず隣の機械につながれている。
痛みと不快感は全くない。
それよりも、むしろ爽快感がある。
野外テントで長時間睡眠をとったあとの爽やかな目覚め。と、言ったところか。
検査機械から外れたのはそれから一週間後くらい。
チューブとケーブルの取り外しはそう時間もかからず苦痛も伴わずあっけなかった。
手術を行ったと思われる医師より手術内容と退院後の注意事項を説明があると言うことで、別室に移動した。
説明は、私にも解りやすく親切であった。
まず、病状について。
前回も説明を受けたが、
病名は、視床下部出血による重度の水頭症で、 裂けた血管から出た血液で脳組織が圧迫され、生命活動に重要な部分が障害を起こしている。
障害部としては、性衝動・呼吸・四肢作動・食欲・排泄・等々
生命維持に必要な基本機能は殆ど壊れているため、後頭部に2次神経経路を作成し胸のあたりまで領域を拡大し胸部心臓の隣に保護目的の小さな球体の入れ物に入った培養脳を埋め込んだ。これには付随して高周波数の通信機能が付けられ、新たな情報の入力にはこの回線を使用する。この付帯脳の本来の目的は生命維持のため培養種として使用した脳細胞は自分の小脳を少し摂取し一度IPS細胞化し必要機能に特化した方向で培養されたものである。
基本的に心臓より供給される血液により生き、体内で発生する生命電荷により端末機器は動作する。
要は、メンテナンスフリーで、電子機器以外はほぼ自己修復可能な機能である。
結構簡単な作りではあるが、生きているところを見ると本来の機能は保たれているらしい。
おかげで、食欲もあり、なんとか別に不自由なく生活できている。
手術跡も治まり、入浴も可能になり。徐々に退院が近づいてきた。
胸部通信機器の外部LANのプログラムに固定アドレスを登録し、私が死亡するまで「死亡してからも」体内情報を病院内のメディカルコンピューターに送り続けるように設定されそれに対しての報酬として発生する全ての料金の免除。
この契約を交わし、退院となった。
***生活***
我が家に帰った初日は、部屋の片付けで一日が終わった。
この、半年は部屋を荒涼とした廃墟に変えるには十分の時間であったようで、降り積もった埃は病み上がりのリハビリに十分の労働を与えてくれる。
玄関から始まり、ベッドルーム、トイレ、バスルーム、和室、リビング、キッチン。あらかた片付いたあと、昼食とした。
病院より紹介されたお店に連絡し配達された食材で作って食べる。
自己流だが、昔自炊にこっていたこともあり、うまい。
結構、独身貴族堪能できる。
いろいろあったが、多少生活は戻ってきた。
シャンパンを飲み干した頃に部屋の電話が鳴った。
病院からだ!
そういえば胸のコントロールパネルが点滅している。
点滅は電波不良の信号だ。通信が遮断されている。
電話の内容は、病院のコンピューターがエラーを出しているらしい。
私の体機能のデータが送られてこないとのクレームである。
窓際に立つ。オレンジの点滅がグリーンに変わった。
私の全ての情報が送信されている。
同時に、生命活動に必要なプログラムのチェック、バージョンアップが行われる。
付帯脳は、今のところ何の影響も感じられない。
だが、生きているということは、正常作動しているのだろう。
胸部に埋め込まれたコントロールパネルから、僅かな振動が伝わってくる。
病院から説明を受けたメンテナンスが行われる時間帯、それも、附帯脳の大幅なバージョンアップが行われるときはいつもこの振動がおきる。
脳細胞しか無い場所で振動が起きるのは不可解だが私では計り知れない何かがあるのだろう。
今度の通院時にちゃんと聞いておこう。
シャワーを浴びて温まった体を椅子に預け、ハイネケンを開ける。
心地よい泡の喉を通る感覚が気持ちよく、この、数日の記憶が蘇る。
しかし、なかなか出会えない体験をさせてもらえたものだ。
自分の命が普通ならとっくにないはずであり、縁もゆかりもない人々に助けられ、生きている。
ただ、普通と違うのは、胸に光るコントロールパネルくらいで、自分の体がネットワークに接続されていると言うこと。
しかし、疲れは通常通り来るようで、どっと出てきた。
今日は、夕飯食って寝てしまおう。
カーテンの間からもれ入る光が、直接目に入る。
ベッドの位置が悪いのだ。
昨日寝てから幾時間経ったのだろう。太陽の光に目覚めさせられるのは幾分気持ちいいものだ。
今日は何をしようか。メールを開いてみる。
ものすごい量の迷惑メールの中、返信メールが一つ。
高度専門職試験の受験資格のお知らせ。 開いてみる。
以前登録した、専門試験のエントリー承認のメールである。
要は、高度専門士の試験エントリーなのだが、この仕事は特殊なもので、かなりの学力が必要であり、私も殆ど冗談半分で登録したようなものなのだが、どうせ暇だし行ってみるか。
送られてきた入門証を見せて試験場に入る。高度専門士試験 問題は、病気前の記憶が全て戻ってくるかどうかである。
問題用紙を目の前に記憶をさかのぼってみる。
試験官の合図で、受験者全員が問題紙をめくる音が結構大きく響き渡る。
50問あるが、殆ど見たことのある問題。しかし、サラサラとは解けない。
時間的に90分あるので、余裕を持って始める。
だが、48問目でつまづく。
あと、10分しかない。不可能か?気があせる。。ドキドキしてきた。
非常に単純に見えるのだが、答えがまるで出てこない。
どうする? ギブアップか?
ここまで来て、捨てたくない。
この試験のエントリーに採用されただけでも幸運なのに!それを捨てたくない。
あと、8分。目の前に置いた腕時計が無情にもカウントダウンをはじめる。
焦ってくると、考えもまとまらなくなってくる。
どうしよう。。あと二問。
捨ててもいい2問だが、その前の48問が全て正解とは限らない。
不安因子は無くしておくのがいい。2問でも大切なのだ。
しかし、まだ、48問の見直しも出来ていない。
そちらを先にすべきか?。。。おお!どうしよう!
無情にも時間は着々と過ぎてゆく。諦めるべきか。。。考えがまとまらない。
体中の皮膚感覚が鈍くなり汗が出てきた。
目の前が霞んでくる。しまった!脳の病気がまだ十分治りきってなかったのか?発病したか!
と、突然目の前の問題が、一枚の写真のように見えてきた。
そう、文字としてではなく、一枚の絵のようにだ。
その絵が見えたと同時にすべての答えが頭にうかんだ。
わかる!わかるぞ!子供のように叫んでいた。
試験官の注意を受け、頭を下げると再度答案用紙を見る。
答案用紙の書き込むべき場所に記号がオーバーラップして見える。
問題に関係なく答案用紙の書き込むべき位置に浮かんで答えが見えるのである。
前48問も、かなり違っている。と、言うか、確実に正解と解っているのだ。
1問目より書き込む。自分の手が遅い。
見えている記号をその位置に書き込むだけなのに手が遅くて気があせる。
もっと早く!もっと早く!
まどろっこしい右手の動きに頭が痛くなってくる。
一瞬、記憶が飛ぶ!気がつくと解答用紙は埋め尽くされていた。
ほとんど同時に試験終了のチャイムが鳴る。
ほっと息をついたとき、帰りかけた他の受験生に気がつき自分も帰ることにする。
一瞬のあの感覚に疑問を感じながらも何が起きたのか自分にも説明ができない。
自宅へ帰る前に生命保険会社に寄る。
倒れる前に、虫の知らせというか、気になるネット保険を見つけ、入っていたのである。
手術費、入院費、一日いくらかの保険金が頂けるのである。
私の場合、必要のない金額(請求されていない)ではあるが、一日あたりの保険金は魅力で、通っている。
病院で書いてもらった書類を持って保険会社のオフィスにゆく。
これだけで、しばらくの生活費になる。
完全治癒をめざして、リハビリにも力が入る。
一応一時処置と言う病院側の書類に首をかしげながらも保険会社側の社員は支払いを許可する。
*** PC ***
今日も、通院帰宅で、夕食はシャンパンである。
自炊のビーフストロガノフで、シャンパン。。生活費の不安もない快適な毎日。
こんな生活もあることを感謝しつつほろ酔いでベッドに行く。
最近、あまりにぐうたらな生活にいやけが来ている
今日は、昔の友人に合う。こちらに流れてきてからの友人なので、10年くらいか、久しぶりである。
大手のシステムエンジニアをしていたが、最近有志で独立して順調らしい。
懐かしく、うれしい。お互いの時間が合わないため、待ち合わせをこちらの自宅とした。
時間までしばらくある。昔のシステムを懐かしく思いPCの電源を入れた。
思えばこのノートPCを触るのも久しぶりである。半年ぶりか。
OSの、オープニングが終わり、デスクトップが表示された。
VisualBasic起動!過去の作成したプログラムを呼び出す。
おー半年以上前とは言え自分ながら面白いプログラムを書いている。
横着はしていない。結構真面目だったんだなと、過去の自分を思い起こす。
今でも多少は近いところまで行くかな。。。自分を見直してみる。
プログラミングを始めようかとも思ったが、例の病気のおかげで左上腕部の精密動作が出来なくなっている。
やっては見るが、キーボードが打てない。やはり、無理なようだ
保険金を使い切るともう食ってゆけない
結構思いつきはいいほうだと思うのだが、現実は実現が難しい
実際、思いつきを実現するための持久力と左手の動作が全くダメで、やる気も失せる。
もうダメか。。憂鬱な時間が過ぎる。
もうこれで、大手の依頼をもらえてももう出来ない。
若い頃は、こんなプログラムでもコツコツと3000行であれ全て頭の中で組めたものだ。
もう、その能力も無くなったか。。喪失感に希望を失いながらも、
パソコンの画面も賑かになったもんだなーと、呆然と眺めた。
と、一瞬画面上の文字が動いた
目を疑った。
プログラムが、どんどん書き変わってゆく。
なぜだ!私が書いたソースが書き変わってゆく。
眺めている僅かな時間に、100行ほどが書き変わった。
「すごい!みるみる行が変わってゆく」
それでいて、見やすくきれいだ
昔の私のソースにそっくりだ
なんだこれは
年を食った今はどれほど横着なプログラミングに変わっているかよくわかる
効率を重視しているから、短絡的な組み方になってしまって全然綺麗じゃない。
それが、勝手に昔の理想的なプログラムに書き変わってきている
なぜ? 考えてみる。
ノートパソコンには近距離無線通信が標準装備である。
どこからか、通信でキーボード入力がされている。
ただ、確認のための画面情報がどのように通信されているかはわからない。
しかし、このパソコン側の通信許可はした記憶はない。
いったい誰が?
考えていたらその間にみるみるすべてのプログラムが効率よく書き変わっていた。
眺めるとなかなか美しい
こんなプログラムの書ける部下を持ちたかったものだ
思い出と妄想にふけっているとプログラムの修正が終わった。
実行してみる。
うーーん、簡潔に書かれている割には良い動きがある
結構面白い。
*** 付帯脳 ***
私が、実際、何をしたかというと、物を見て考えただけである。
大まかなフローチャートを考えただけで画面上にプログラムが書きあがってゆく。
これは、なぜかは判らないが、私の体と関係がありそうであり、今回の手術が関係していそうだ。
しかし、自分で書き込んだ記憶はないので多分埋め込まれた附帯脳だろう。
考えてみれば、元々は私の脳から切り取られた細胞が培養されて移植されているのだから
それが考えたプログラムは私ごのみになっておかしくない
これに、通信機能が組み込まれているのだから起こりうる現象なのだ。
不思議でもなんでもない。
ただ、入力情報は私の目しかないので私も参加していないとダメなようである。
楽はできないようだ。
その上、附帯脳は、かなりのエネルギーを消費するようで、非常に疲れる。
今回のこの作業だけでもどっと疲れた。
必要以上の作業をしているのだからあたりまえか。
附帯脳は、壊滅した基本機能の補充のみに使うように移植されたもので、それ以上の使い方をするとかなりのエネルギー消費をする
これはしかたがないようである。おかげで腹が減る いくら食べても入ってゆく。通常食でも減量できそうだ
肥満体型の私にはいいことかもしれない。
とにかく、不幸中の幸いとはいえ結構なものが手に入ったものだ
検診日、担当の医者の前で胸をはだける
医者は、手元のパッドで状況を確認している。
最近、附帯脳がかなり使われた形跡があります。
まだ、十分に同調していませんので、酷使は避けてください。
実験段階の手術ですから、臨床データがありません。何が起こるかわかりません、気をつけて下さいと注意を受けた。
どこまでが通常でどこからが酷使なのかわからんが腹が減るということは酷使なのだろう。
気をつけるようにしよう。
*** 仕事 ***
[仕事があるんだが、やってみるか?]
突然の友人から退院後初めての電話。
こいつは、結構知人が多く、色々な仕事を見つけてくるのがうまい。
以前、建設局の仕事を見つけてきたが金は良いのだが結構難しかった事を覚えている。
保険金以外の収入がない今、ありがたいのだが。。。うーーん
復帰祝いとして受けてみるか。。
内容と納期の確認をして見積を出す。
単価が分からなくなっているので先方に決めてもら事にした
内容は、原子力発電所の冷却水の温度の折れ線グラフ表示プログラムで、一週間後完成渡しで、30万円らしい。
データーはテキストでもらえる、ファイル名は決まっている。
それを折れ線グラフにするだけ。これで30万? おうー
即刻契約し、制作にかかった。
えーと、データのファイル名は。。。
資料を開いたとたん、画面上にVisualCが立ち上がった
やる気だな。。俺の附帯脳!よおし!やるか!フローチャートを考える。
メニューは必要ないか。
データ名が決まってるから入ってくるフォルダにデータが出来たら検知して表の作成をすればいい。
表は、ウインドウを、画面上の右上に出して折れ線はあらかじめ決めておいた色で作図すればいいか。
折れ線の色も指定する画面が必要だな。
表示されるタイミングも指定できる方がいいかな。
ちょっと待てよ、これは原発の冷却水の管理プログラムの部だったな。
警告用のサブルーチンも必要かな。何度までいいのだろう?
デザインは、えーとこんなかんじで。。。絵に書いてみる。
考えていると疲れてきた。カウチにもたれてぼーっと画面を見る
けっこうすごい速さで組み上げってゆくプログラムを眺めているとやはり自分の好みの方法で組みあがってゆくのが気持ちいい
誰かと組んでプログラミングしていた頃の自分が思い出されてあの頃の意思疎通の苦労に笑ってしまった。
なんつってもイメージなんだよ、感覚なんだから伝わらないんだよなぁ。。。。。
思い出にふけっていると組みあがったようで実行された。
おお!出来上がっている!結構分かり易い。。ちょっと早すぎるかなぁ3時間くらいだし。
まあ結構良く出来上がってるし、よし、連絡を取ろう。納品だ。
電話で先方を呼び出し、ネットで実行型プログラムを送り、チェックをお願いする。
一旦電話を切って待つ。
数時間後かかってきた電話は思いのほか重い言葉であった。
なぜ、このプログラムはこんなに大きいのか。ファイルの大きさは予想された物の倍以上ある。
クレームに近いものだなと、自分も思っていた内容だけにちょっと考え込んだ。
だが、結局それよりも処理速度の驚く程の速さと自由自在のカスタマイズの使いやすさが勝ちOKが出た
時給10万!久々のおいしい話である。
以後、1ヶ月間の保証期間を承認して契約終了となった。
おかげさまで1ヶ月生きながらえた、
結構好評だったらしく、次回の仕事の打ち合わせをする約束をして電話を切った。
次の仕事は役場の仕事だった。
個人ナンバー制のテスト用管理プログラム。
一時は、反対が起きて終わってしまった計画だが再度発案されたようだ。
どこかのテレビドラマであったが、確かにお年寄りも使うソフトウエアーであるから誰でも使えるのが不可欠だ。
これは、大きなシステムになるぞ。
住民票の登録、発行。健康保険の管理。印鑑証明。生活に関する証明のほとんどを一人一つの共通番号で管理するというものだ。
WEBプログラミングを中心にスマートフォンでの入出力がベストだな。
パッドの使用も範囲内に。。と言うか、中心に考えるべきであり、アプリケーションの開発も必要であろう。
OSの開発も考えるべきかもしれない。昔かじったユニックスも計画の中から外せない。
ユニックスは、ブラウザの開発が主となるから、今は現状で使用可能だろう。
そうなると、パスワード制が使いやすくなお、セキュリティー性が強くなる。
各個人に一つパスワード発行チップを発行し指輪に組み込む方法もあり、非常に小さなチップとし、動作用の電力も非常に僅かな電力で可能であり、単なる摩擦静電気でも動作可能な物がある。これを使用すれば永久使用可能なチップを体内に埋め込むことも可能だろう。
これを、国民健康保険対象とし、無料とする。埋め込みたくない者は、自己管理にて指輪等の持ち物に入れて扱う。
基本的に発行は無料とし、その財源は健康保険の掛金とする。多分かなりの人件費の削減となるだろうから実現可能だろう。
この案も報告し、今は一応カードを持つこととし、自分で決めるパスワードと、近距離無線通信可能なカードをセキュリティーとし使うこととする。
パソコンか、パッド、スマートフォンで、管理し、コンビニでの発行も可能とする。
あらかたの構成が固まるとフローチャートを作成する。
見積はそれからだ。
大きな仕事だ。個人で受けれるか?
概算を出してみる。
仕様書と、作業予想日程表を作成する。
おお!半年は余裕でかかりそうだ。
テスト用だからといって適当には作れない。
どうせのところ、WEBサービスとなるのだから、フラッシュとかで基本動作は作っておいてそれ以上の部分は、正式受注後のプログラミングとするのが良いかもしれない。
プログラマー20人で1ヶ月っちゅうところかな。。。
一人50万として1千万。。人件費で、物的経費3千万 その他経費で4千万強、。。大手なら8千万くらいは算出するかな。。。
よし、6千万くらいで2ヶ月。。出してみるか。
仕様書にもうしばらくかかりそうだ。
フォトショップとイラストレーターでも使ってすごいの作ってみるかな。
今、この部屋には3台のPCがある。
一台はプログラム用1台は遊び用残った1台にユニックスでも入れようか。これをサーバとして使おう。
まあ、普通のWEBサーバとしてセットアップして実験は可能だな。
友人の会社に連絡を入れる。
先日の仕事がうまく行ったこと。気に入られて次の見積依頼を貰ったことを伝える。
よかったじゃないかと喜んでもらえた。だが、次の仕事に付いては、間に入って欲しいと伝える。
大きい仕事なので、調整役が必要なんだと頼み込むと喜んで受けてくれた。
ありがたい、やっぱり持つべきものは友だなぁ!
感謝である。
早速、明日から動いてくれるらしい。
数日後、友人からの連絡があり、期間は2ヶ月でOK 金額は5千万以下にはならないかとのこと。
部下はいらないか?部下がいないと出来ない仕事ではないか?
この質問に、相談をかける。
こちらは、ベテラン3人くらいのキャパシティーがあること。
それ以外はそちらでなんとかできないかということ。
それに対して帰ってきた反応は、
友人の会社には出来そうな人員は何人かいるが、こちらのキャパ内でこなしたほうが後々良いのではないか。
あくまでも制作は私、友人の会社は仲介をするだけの方が良いのではないか。
製作期間の交渉は、友人の会社でやるから、金額をなんとか減らして欲しいとのこと。
願ってもないことだが、友人の負担にならないか?
会社での立場に悪影響がないと断言されたことで、甘えることにする。
自社開発が決まったことでパッドのプログラムも自分でする事となった。
附帯脳も、新たな言語には対応できないらしく、ここは、自分の標準の脳で苦労しなければいけないらしい。
がんばってみるか!
基本的にC言語だと思うのでなんとかなるかもしれないな。
友人の会社よりサブルーチンの提供を受け、タブレットプログラム作成は、インターフェイス以外はものすごく簡単になった。
高齢者にも使えることを目標にしているので、基本的に画像だけの操作画面にしてセキュリティーはICチップに頼ることにした。
戦いに近い打ち合わせの後、期間を4ヶ月とし、金額を3千万で手を打った。
ただし、前金2千万、完成後1千万とする。
1ヶ月毎の経過評価は受けることとする。
これも、友人の会社に提出し、先方と打合せしてもらうこととする。
長い間、現役から離れていた私だが、いざ、かかってみると結構アイディアは湧いてくる。
部屋をプログラム用にしつらえ、本格的に作業にかかることとした。
とりあえずの所、専用デスクに専用椅子、デッキとして、非常にリラックスできる環境を作った。
まずは、サーバプログラムだ。
データベースを他社製とリンク可能とし、インデックスもリンク先のものが使用できるようにする。
そうと決まれば、早速製作開始だ!
サーバは今日でセットアップできそうだ。
明日は、タブレットにかかろう。
サーバ予定機を一度ばらす。
一応、オーバースペック動作を基本に考える。
冷却を水冷式とし、記憶装置はメモリを主とし大容量とする。
ファン系は採用不可とし、各チップは、それぞれに冷却端子を付ける。
将来的には、安価なクーラーをばらして圧搾ガスの冷却作用で冷却水を冷やす事としよう。
部品手当に4時間ほどかかったが、通常の20倍以上のスペックで動作するWEBサーバが出来上がった。
カードに埋め込まれたチップは、埋め込まれた近距離無線通信でユーザ確認をし、パッドのアプリケーションを作動させる。
今回は、簡単なアプリケーションを開発してインアウトのテストを行った。
サーバ側のWEBプログラムは、四時間ほどで出来上がった。もちろん附帯脳の助けを借りてである。
とりあえず、大筋が出来上がった所で、チェックを受ける。
サーバは、私の所へつなぐという事で、パットを4台手当してもらう。
そのパッドにアプリをインストールして渡し、了解待ち。
疲れた。
不眠不休で1ヶ月働いたほどの疲れが襲ってくる。
ベッドルームにはい戻り、自分のベッドに倒れこむ。
全身の脱力感に足も立たない。
呼吸もわずかに乱れる。これはまずい!
契約しているヘルパー店に携帯で連絡し、病院に連れて行ってもらう。
病院では、見慣れた検査機に胸のコントローラーを同期させる。
一通りの検査を見た医者が出した答えは、HCUでの、面会謝絶。
仕事の結果が出ないままでは納得できないので、とりあえず、友人だけは入室をお許し願うこととして、病院からの外出不可は納得することとする。
了解が出たので、早速友人に連絡をする。
すぐにでも見舞いに来てくれることになった。
結構儲かる仕事の仲介を依頼したとは言え、相変わらずいいやつだ!
朝日がまぶたを通して目に刺さる。
ベッドの位置が悪いのだ。
ベッドの上で看護師さんに朝食を食べさせてもらう。
さつまいものお粥を食べながら友人を待つ。
相変わらずの友人の笑顔に癒されながらベッドで話をする。
友人は、私の調整したパッドを1台持ってきていた。
ベッド上でチェックをする。
私の考えたインターフェイスは、結構面白く、自分ながら使いやすさにニヤついた。
ある程度のチェックを済ませ、今日は終了とする。
電話が鳴った。
友人からである。
納期の交渉はOKであること。
金額面の交渉は現在進行中とのこと。
早くも、別会社からの問い合わせが来ていること。
そして、別途打ち合わせがしたいとのこと。
電話の途中、担当医に呼ばれた。
再度連絡をすることを約束して車椅子を看護師に押してもらって担当医の部屋へゆく。
私を待っていた担当医は一人ではなかった。
到着すぐ冷蔵庫ほどの機器につながれる。
ケーブルは、2本だが、無線通信で更新しているのが胸のプレートの細かい振動でわかる。
冷蔵庫のような物は、高速型のコンピューターであるらしい。難しい顔をしたエンジニアが二人、オペレート中である。
担当医の説明が始まる。
このコンピューターは、病院のメディカルコンピューターである事。
最近、このコンピュータから私のデータが参照しにくくなっていること。
接続自体は異常無いし、動作チェックはおかしくないこと。
今回、私の埋込み附帯脳のチェックを行っているが、今のところ異常は発見できていない
しかし、私の体調変化、生存能力の劣化を見る限り臓器の能力が不足してきているので、
病院の大型コンピューターに接続したいとのこと。
それにより、今以上に疲れやすくなるので、当分入院して欲しいとのこと。
うまくゆき始めた事業の打ち合わせに友人が来るので会えることと、自宅の開発用PCを病室に持ち込む許可をもらって入院を承諾した。
リハビリを兼ねて仕事ができるなら申し分ないと、医者も快諾し早速システムの移設をすることになった。
自宅のサーバ機は、そのままの状態で病院からアクセス可能とし、開発用PCのみ友人と一緒に病院に移設する。
外部LANは、携帯の回線を使用するので、実際はノートパソコン2台持ってくるだけである。
どうせ、病院側の都合で個室なので本格的なサーバシステムも考えたが、実際遠隔操作でのメンテナンスも契約内容内にあるのでシュミレートにもなり良いと思うのである。
附帯脳がオーバーヒート気味で現れた今回の症状は、病院側でも想定外であったらしく、私の体につながった病院のコンピューターは分析にかかりきっている。
時間のかかった分析も終わり、担当医の事務室に呼ばれた。
結構長く待たされた後、難しい顔をして説明を始めた担当医は説明を始めた。
私の附帯脳は、人間の基本機能の回復に埋め込まれたものでそれ以外の使用は考えられていない。
退院後の現象は、前例のない手術のため何が起こるかわからないし、有り得る事とも無いとも言えない。
ただ、そのエネルギーは、一つの体から供給されているため、体の方にしわ寄せが来るらしい。
最悪、内蔵がもたなくなる。注意を受けて解放された。
解っている。いや、解っているつもりだ。
相変わらず入院中なので検査データは取り続けられている。
入院は、病院側の都合なので食事等、何でもこの病室で行われる。
夕食を取っているとリハビリ担当医が打ち合わせに来た。
入院中のデータのリストを見せられ、今回の体調不良の説明と処置は成功したので、希望すれば明日にでも退院出来ることを話しした。
友人が会いに来た。今回は、仕事の話で、仲介を頼んだものは、全てOKであった。
しかし、作業自体は可能なのかと詰め寄られ、思うところがあるので安心してくれと言うことで落ち着いた。
主治医に連絡を取ってもらい話をする。
附帯脳のインターフェイスにノートパソコンを使いたい。
接続されると体が非常に疲れる。これをなんとかしたい。
主治医から帰ってきた言葉は、この症例は今どこにも無いものであること。
体だけの助成をするのはそれほど難しい物ではないこと。
病院側としてもデータを取れるのは願ってもないことなので出来るだけバックアップしてくれるらしい。
病院側の会議が終了し、私の再手術が決定した。
この手術は、体力の不足に対応するもので、栄養分の強制摂取をさせるための機器と、血中酸素濃度を正常にする機械を体に埋め込むもので、外部機器との接続で作用する。
いずれもセミオートであり栄養分は自分で供給するもの。
体内に埋め込まれる部分は、離乳食をアミノ酸レベルまで分解し、血管に注入する。
同時に血液の浄化機能もあり、その割にはかなり小さい。
これは、肝臓・腎臓疾患の患者のため数十年かけて開発していたもので、移植実験は私が初めてらしい。
血液の分析作用もあり、これだけでも画期的な医療器具として販売できそうである。
この機器も、コントロールパネルに接続され病院のメディカルコンピューターに情報が送られる。
私の体は実験体となり、機密的な技術を検証する。
費用的には天文学的な金額なのだが、何があろうとこちらの自己責任であると承認することで無料となる。
附帯脳とほぼ同じ条件である。
承認と、委任状を兼ねた書類にサインし2日後の手術をベッドで待つ。
ベッドに上がってみて驚いた。
友人がセットをまかしてくれと言っていたが、私が座った位置から開発用コンピューターは非常に扱いやすく左に置いた情報収集用ノートパソコンも、ベストの設定だ。
さすが、餅は餅屋!友人のセンスの良さに改めて感謝!。
早速、開発中のソフトに再度修正作業をかける。
長い間触れなかったため、アイディアはたっぷり溜まっていたので、結構作業が早い。
気持ちが高揚して両手が追いつかないほど書き込みが進む。
没頭してしまった。周りが見えなくなっていると、急に真横のメディカルコンピューターが負荷状況を表示しだした。
胸のコントロールパネルが振動しだした頃、急に横のノートパソコンが動き出した。
ものすごいスピードでテキストが打ち込まれてゆく。
コンソール側のインターフェイスが書き込まれてゆくのだ
すごい書き込みに見入っていると、だんだん疲れが出てきて力が抜けてきた。
呼吸が荒くなり、脱力感が出てきた。
あぶない!危険数値が出てきたのでメディカルコンピューターが騒がしく警告を出している。
やはり、附帯脳の使うエネルギーはかなり多いようだ。
生命維持を処理しきれなくなっている。こんな事では先行きが心配だ、早くなんとかしなくては。
今日中に伝えることにしよう。
手術の承認をしてからの段取りは思ったより早かった。
それから手術日の段取りが決まり、二日後。
意識が戻ったのはそれからまた二日後。
ベッドで起きた体は、胸のあたりが人一倍分厚くなっていて、筋肉のようにも見える。
だが、この中は生命維持装置の塊であることは事前の説明で解っている。
これで、体調を心配することも無くなった。
見る限りは、理想的な体型になった。
胸のコントロールパネルは一回り小さくなった。
しかし、接続方法は、銅線から光に変わり、通信は格段に効率化されたようである。
近距離無線通信は相変わらずであるが。
なにせ、必要以上に体調を心配しなくてよくなったのは有難い。
だが、使用電力は格段に上がり、今までの生体電力では不足になった。
で、筋肉を使った自己発電と、燃料電池が採用され、発電機能が加わった。
しかしそれでも、微量のため、自己発電が間に合わない場合、充電が必要になった。
手術後の一週間のリハビリを体験して自宅に帰る。
自宅は、申し込んでいたヘルパー店のおかげて綺麗なままだった。
またあの清掃地獄は勘弁である。
友人から仲介をお願いしていたプログラムの納期連絡があった。
最初の契約から1ヶ月。。そろそろである。
持ち帰ったノート2台の内、サーバ側のプログラムを自宅のサーバにインストール。
コンソール側のプログラムを起動。
私の胸ポケットに入ったカードのデータを読み込んだノートは、基本台帳システムを表示した。
住民票関連の書類表示はOKで、印刷も出来る。
印鑑証明から、各種検診申し込み・役所へのアンケート・結構多彩にある。
それらを一律チェックして、納品日を明日可能であると伝えた。
友人に、最終動作チェックをお願いすることとして、システム全体の持ち出しできるように準備をする。
身体的には、二人分以上の体力を確保したので何の苦労もなく完了。
明日の検査を楽しみに就寝した。
午前5時、久々に仕事モードで起床。
システム一式を車に積み込み友人の会社へ。
そんなに大規模な会社ではないが、社屋は充実している。
3つある内の一番小さい会議室を占領してWEBサーバの設置。
テーブルを出して、端末コンソールにパッド2台とノート2台を設置
ネットワークは、既に設定済なので友人を呼びにゆく。
金額的に、会社を左右するほどの企画のため社長以下数人が真剣な顔をして来た。
内容的には、データベースの更新・検索・表示・印刷 するだけのしごくノーマルな仕事なのでそんなに気負うほどのことではないと思うのだが、この商品が納品されると、結構な収益になるはずだからみんなすごく真剣にチェックをしている。
一番の重要視は、お年寄りでも使えると言う事だ。
今は、担当が全ての処理をしているので、住民は、ハンコを持ってゆけば手に入る書類を自分でするのだからよっぽど使い易くなくてはいけない。
この処理に一番気を使った。
まあ、自信はあるので今日はこのまま置いて帰ろう。
友人に、あす結果を知らせてもらう事にして今日は帰ることにした。
五時、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
今日は仕事の返事が帰ってくる日だ。
ゆっくりと朝食をとってコーヒーを持ってカウチに座る。
いつもの、ゆっくりとした時間が過ぎてゆく。
本当にリラックスできる時間。
友人から電話があって、これから打ち合わせに来るらしい。
待ち時間の間、テレビをつけてゆっくりとする。
こちらに来るまでに1時間は充分かかるだろう。
満腹になって、じっと座っているとぼーっとしてくる。
体を十分休めるように指導を受けているのでちょうどいいか。
と、胸のパネルあたりが振動しだした。
くそう!再手術も無駄だったか!腹立たしさにイラついてチェック用ソフトをノートパソコンで立ち上げる。各表示されてゆく数値を確認しながら医者にあらかじめもらっていたチェックシートで比較する。
おーー数値的には大きいが、許容オーバーしていない!やっぱし再手術は成功だ!よかった
安心していると、振動がいつの間にか収まっていた。
何が起きていたんだろう。
胸の機器が振動するときは附帯脳が何かをしている時。
だが、ノートを見ても何の反応もない。
何だったんだ。。。
不可解だが、今のところ何もないし良かった!
カウチに座り直し、傍らのシャンパンボトルに手を伸ばす。
このシャンパンは友人が今回の仕事の打ち合わせ時に持ってきたもの。
うまいっ!堪能していると携帯が鳴った。
見ると友人である。
あまりのタイミングの良さに笑って携帯を通話にした。
携帯の向こうから興奮した友人の声。
不思議に思い聞きなおす。
”今!奇跡が起きた!”大きな声で大興奮である。
すぐに迎えに来るという。
今すぐ?待ってくれと言っても聞かない。
もう、近くに来ているらしい。
と、チャイムがなる。
文句を言ってやろうとドアを勢いよく開ける。
え。。。
玄関には屈強な青年が3人。
中央に初老の威厳のある男
この四人がずかずかと入ってくる。
その後ろから友人が小さくなって入ってきた。
やっぱり興奮している。
一番偉そうな老人が口を開く。
君は、プログラムを何年作っている?
今までで作った一番大規模なプログラムは何だ?
言語は何を?
サブルーチンはいくつ作った?
イベントドリブン型だけのサブルーチンか?
矢継ぎ早に出てくる専門知識。
答えをするだけに戸惑う。
あらかた聴き終えたのか、彼らは集まって相談を始めた。
携帯でどこからと連絡も取り合っている。
ち、、、ちょっと、、、
友人が見かねて連れ出してくれた。
となりの部屋へ行く。
事情を聞いて驚いた。
じつは、さっき原発で事故があったんだ。
人的事故で担当技術者の判断が悪くて反応が急激に上がった。
冷却水の温度も異常に上がり、蒸発が始まり、制御不能に陥りそうになった。
それによる何らかの起因で制御棒も反応が鈍くなった。
危ない状況だ。。職員の退避も話題に上がった。
もう、現場作業員自身が被爆覚悟で炉内に入るしかないと言う状態になった頃、急に反応が鈍くなった。
徐々に水温も下がり、原因のわからない職員は口が空いたまま状況を見守ったらしい。
で、現在は正常な状態に落ち着いているらしい。
異常に陥った原因は、担当技術者のケアレスミスで反応が急に増大し、それによって増えた放射能で、検知カメラ等電子機器が異常を起こし、その異常な状態を見た技術者がさらにミスを起こしたらしい。
危険数値にまで異常を起こしたシステムは、その後、担当技術者のパニックにより制御棒の制御不能までおちいり、最後の砦である燃料棒の直接冷却が始まった。しかし、この時、各機器はメンテナンスの時期であり、通常使用しない制御部は外されていて使用できなかった。
度重なるヒューマンエラーにパニックになった技術者による更なるミスにもう無理かと思われたとき、炉内の火災用スプリンクラーが動作はじめ、炉の上部の防災用水のパイプについている電磁弁が数個壊れ、それぞれの場所からの一点に集中した水圧で炉の真上のパイプが壊れ、大量の消火用水が炉にかかった。
この用水は、近くの塔にかなりの量がストックされており、放水は2時間にわたった。
炉内の冷却水が40度まで下がってもまだ続き、その後復旧した冷却装置の作用もあり、炉停止状態まで冷却されたらしい。
冷却は、炉外から行われたため、流出した冷却水も放射能汚染が無く、チェックと修正が終わればすぐにでも再稼働可能であったらしい。
会社側はこの、適切な緊急措置を行った技術者を探したがいない。
不審に思った委員会は、原子炉に関わる全ての人員に原因を究明するように依頼をした。
短時間の指示に戸惑いながらも早急にチェックを済ませた職員から帰ってきた結果は。
正直なところ、わからないという返事。
とにかく、対処をした職員もおらず、システムのチェックを今行っているが、どうも制御コンピュータからのアクセスがいろいろなところに痕跡があるらしい。
だが、防災システムは、別のコンピュータが受け持っており、だがしかし、その防災コンピュータにも原子炉制御システムからの介入があったらしい。
中心になった制御システムをチェックしたところ、どうも原子炉を救ったのは、単なる下位のサブルーチンである冷却水の作表プログラムらしいとのこと。
あの、単なるデータを受け取って作表をするだけの単純なプログラムである。
3時間で私の附帯脳が作り上げた物、たった30万のプログラム。
技術陣は、早速解析にかかったが、機械語レベルでは理解不可能で、作者である私にソースの開示を求めてきたということである。
友人からの報告に、取引に関わるようなら全件委任すると言ったが、友人言う事には、専門技術者が理解できない事を、どう売り込めと言うのかと、少々機嫌が悪い。
まあ、私も肝心なところは解らないのでとも言えず、ただ、ひたすらなだめてお願いするしかなかった。
友人が落ち着いたところで、彼らのいる部屋に戻ったとたん、拘束されそうな雰囲気が漂った。殺伐としている。
えー皆さん、制作したのは私ですが、取引条件その他金銭関連に関しては、ここにいる友人が全権公使致しますので宜しくお願い致します。私は、全件委任致しております。
振り返った友人の顔は驚きといらだちに怖い顔になっていた。
となりの私の足を踏む。
言っちゃった。。。ごめん。。笑うしかなかった。
駆け引き苦手な自分はよく知っているつもりだ。これは友人に任せるのがベストチョイスだ。
先方は、諦めたようで、後日この方との打ち合わせをさせて頂きますが、少々お聞きしたいことが。。。
この言葉に、企業秘密という事で、お帰りになったもらった。
ホッとしていると、客を送った友人が大股で帰ってきた。
怒ってる?
怒ってるさ!
お前に頼ってるんだろ。
頼ってくれるのはありがたいが、罠にはめるような行動はやめろ!
これで、せいぜいもうけてくれ。お前の裁量でな。。。
わかった、稼がしてもらおう。
ただ、相談には来るから、俺の意見も聞けよ。
了解して、今日は解散。。。えーと、評価はどうなったんだ?
家に帰って休息をとる。
あーーゆっくりできる。
ぼーっとしていると、この前の不可解な事が思い起こされた。
そういえば、昨日の事件と時間が合うんじゃないか?
やはり、おれの附帯脳一枚噛んでるな。。
にやけながら、製作中のサーバシステムを開く。
以前附帯脳が作った温度グラフプログラムのソースを眺める。
前に見たなぁ。。。
やっぱり私好みのキレイなソースだ。
半分位を過ぎて、データの読み込み部の頃からちょっと見慣れない部分が出てきた。
なんだこれは?
通信回線のデバイスがオープンされている。
見たこともないパケット形式。
おお?
判断処理の部分がものすごく多い。
分岐だらけで意味が掴めないほどだ。
うーーむ これは難しい。
画面表示だけでは理解がむつかしく、印字して書き込みをしてみる。
赤いペンでの強調で多少解りやすくなった。
C言語の特徴で簡潔に書かれすぎているので、理解しづらいのか。。
ほおぉ。。。すごいなぁーこんな書き方があったのか。。。
感心していると、友人からの電話。
相変わらず興奮している。。ああ。。。もう、騒がしいやつだ。。
呆れながらも対応する。
話を聞いてこちらも驚いた。
友人の話では、打ち合わせに行ったところ、政府の人間がいたらしい。
今回問題になったのは、危機判断が出来ていたからだけではなく、プログラムが、発電所のシステムを把握して適切な処置を行ったことで、こんなに小さなプログラムが人工知能を持っていると言うのが不可解らしい。
実験用に、一本組んで欲しいとのこと。内容は任せるらしい。
金額交渉をしようとしたら、先方から驚きの金額の提示があった。
コンパイル済の実行型で、20メガ程度のプログラムであれば良いらしい。
出来るか?との問いに、やってみる。としか答えられない。
何しろ、私には無理だからである。
以前、ソースの提示を求められて、拒否しているので、ソースを期待してくれたようで代金の割合が高いらしい。
企業秘密というより、ちょっと批評されるのが恥ずかしくて嫌なのである。
ソースが渡されないなら、取引出来ないとのことで、友人は悲願する。
こちらの気持ちは解るとは言うが、次元的に友人の方がむつかしく考えていると思う。
ソースの提示自体は、別に抵抗はないので、お前がそこまで言うならと即了承した。
感激した友人は、ものすごく勢い付いて出かけていった。
数時間後、帰ってきた友人は、政府からの発注書を持ってきた。
科学技術庁である。
何に使うのか?まあ、私には考えも及ばないだろうと、了承することとした。
納期は、こちら任せ。ただし、1ヶ月以上はかからないこと。
制作できた時点で、検討会を開く。
結果と要望をこの後伝えてくる。
正式発注はこの後となる。
ところで、ナンバー制のプログラムの話はどうなったのか?
友人が言うには、今回の話がOKなら、私の意向は全て受けてくれるらしい。
問題はないし、ナンバー制に興味があるのでこの提案は受けることにした。
これを聞いた友人は、隣で目を輝かせている。
俺の聞いていると言うか、会議での決定は、今回の発注金額は、政府側のが2億 ナンバー制が8千万
これが上限だ。
よし、それでいこう。。。
お前はもうかっているのか?
ああ、会社全体で2億っうとこかな。。。もちろんお前の応援も入ってるしな。
人員援助もしてもらえるのか?
俺たちにできればな。。
無理なのは解っていたが、これは私も同じであるから基本、ナンバー制の方で応援してもらおう。
早速、プロジェクト準備にかかる。
こちらは、私と附帯脳しかいないので、肝心なところだけこちらの制作とし後は友人の会社に任せてしまおう。
とりあえず、基幹部だけは出来ているナンバー制の方は、細々としたところをお願いして、まずは政府側のテストプログラムを作ろう。
自室に戻るまでに、詳細部を打合せしてしまおう。
手っ取り早く大筋が決まった。
やっぱり、気心が知れているのはいい。
友人も、会社に大きな顔をして帰れると、大満足大喜びで帰っていった。
早速開発用デッキに座る。
うーん、友人がしつらえてくれたデッキは、完璧で感激する。
両手用に設えられた左右に分かれたキボードは腕の移動いらずでクセになりそうである。
脳波マウスは、レスポンスがよく、思うところにクリックできる。
3つに分かれた27インチの画面は開発部、実行部、ファイル制御部に別れ、切り替えの必要がない
ベストの環境だ。
左に付けられた自由棚にノートを1台置き、早速はじめる。
デスクトップ側が一旦フリーズ。
と、ノートの画面が開発用画面になった。
ここまで来て、ノートにこだわるか。。
苦笑いをしながら、ノートを前に置く
リラックスをして椅子に座る。
しばらく点滅していたカーソルがすごいスピードで大量のテキストに変わってゆく。
何をするのか解っているんだ。
附帯脳の入出力方法はもう一つ理解できないが、いつもこの情報収集能力は感心する。
椅子に座っていればプログラムが出来上がってゆく。
それも、私好みでなおかつ感心するほど効率的な組み方で。
データベースまで、自主開発だ。
附帯脳の開発するプログラムは、結構容量の大きい物になるくせに早い。
これが不思議に思うがとにかく早いのは間違いない。
効率が非常にいいのだろう。
それにしてもこの開発速度の速さにはいつも驚かされる。
見ている間に、5000行を超えた。
この行数を記憶の上で作っている
これは、俺にはできない。
行数が10000行を超えた頃そろそろ終了の兆しが見えてきた。
おおっ。。終わりそうだ。
全体を見ていたが、半分以上理解できなかった。
おい!おまえすごいな!なんとなく感心して言ってみる。
もちろん附帯脳にである。
ThankYou!
突然ノートに表示された文字は、小さくか弱く見えた。
まあ、いい。とにかくできてる。
実行してみる。
真っ白の無地ウインドウが表示された。
このプログラムは何?
何かわからない。
Please talk!
話せというのか?
マイクは。。ああ、ノートパソコンだから付いてる。
おーい。。
雑音のような音がして試行錯誤しているようである。
いろいろな色と形の図形が書かれてゆく。
そうか、AIだから、情報の入力端末が必要なんだ。
WEBカメラがどこかにあったなぁー
道具箱を探して、昔買ったけどほとんど使わなかったWEBカメラを出してきて繋いでみた。
自分の顔が映る。
Is this your face?
そうだよ!
びっくりである。こんなプログラム考えてもみなかった。
会話にならないのは、データ不足であるのが原因のようで、既に入力されている対話はできる。
面白いな。だが、実用には見えなくて実行をストップした。
しかし、画期的だ。明日、見せてみよう。
ノートパソコンで実行型にコンパイルする。
実行してみるが、いつも附帯脳の組むプログラムの軽さには驚かされる。
いつもながらのプログラム自信の容量の大きさも驚きである。
今回も、本体1本で50メガを軽く超えている。
これも何か言われるかな?
明日を楽しみに就寝することにする。
アナログな目覚まし時計の音が鳴り響いている。
朦朧とした感覚から抜け出せない。
夢を見ていたのか、汗びっしょりだ。
時計を見るとまだ4時。
さて、今日は友人の会社にプログラムを持ってゆく日
ゆっくりと朝食をとって、コーヒーを持って部屋へ
再確認しようと電源を入れる。
ふと気がついてネットワーク経由でメインPCにバックアップを取っておく
まあ、ノートで開発したというのもすごいんだけど、これで結構動くというのもすごい。
俺じゃ無理だったな。
実行型にコンパイル済なのでもう、このまま持ってゆこう。
友人の会社で前回と同じ会議室に通される。
もう今日は、社長以下5人待っていた。
実行チェックは行っているので、ノートをおいていくという事で、納得してもらった。
顧客にもこのまま渡してもいいと。。開発用なのでこのままで見れるとも。
私の対応の良さに、社長以下面々感謝を訴え、今度おごってもらうことを約束させられて解放された。
友人と二人外へ。
なんだかんだで昼。
近くのゆっくりできる場所で昼飯。
データベースから、サブルーチンまで提供した事に友人から感謝された。
お前を信用しているからだよ。そう答えておいた。
早速今日先方に持って行って打ち合わせをするということである。
コピーをとっておくように言って別れた。
今日は、騒がしい日だった。ちょっと緊張したな。。。
部屋に帰るとシャンパンを開ける。
ゆっくりとカウチに座りサイドテーブルに置いたグラスにそそぐ。
グラスを持とうとしたとき、友人から電話。
こいつはいつも見ていたようにじゃまをするなぁー。。。
携帯を取ると、又、友人の興奮した声。
取引は成功!先方は大満足で今、ソースを見ている。
だが、専用スタッフ数人がかかっているがなかなか終わらない。
開発用PCをノートにしたのは正解で、環境ごとエンドユーザーに渡せたので、お客さんは大満足。なんのクレームもなく注文書を頂いたとの事。
ついでだが、役場のソフトも制作完了し、今日納品のこと、指定金額分、私の口座に振り込んでくれるらしい。
お金をもらったらやりたいことがあったのでカウチに戻りゆっくり考えることにする。
久しぶりにネットバンクにアクセス。
おお!残金8千万
友人の会社からの振込だ。
請求通りの金額が振り込まれている。
仲の良いPCショップの店員に電話した。
彼も、結構オタクで、一緒に考えてくれるだろう。
にこやかな顔が玄関に現れる。
ヘキサコアの8GHz シリコンディスクは20テラバイト
これで、1台30万 高いのか安いのか。。。。
最近のシリコンディスクのレスポンスの良さに驚く。
最近入荷したものをアレンジして作成し持参してくれた。
ずいぶんでかいなぁ。。。が、最初の感想である。
中はスカスカ冷却効果は十分ありそうだ。
低電力消費型なので、発熱も少量とのこと。
これに、ユニックスを入れ、開発言語をインストール。
そして、開発中のシステムを全て入れる。
27インチ画面4基
脳波マウスと、キーボード
いずれも、友人が以前くれたもの。後、専用テーブルと椅子。
ネットワークは、LANもWANも、光ケーブル。
完璧である
これに、WEBカメラとマイクとスピーカーをつけてAIプログラムをコンパイル・起動!
おお!始まった
どうも、このプログラムの肝心はデータベースのようである。
自分のプログラムと言う限りはある程度把握していなくてはいけない。勉強しておこう。
大体の流れはわかった。
ただ、必ずネットワーク参照の行がある事。これがどこに繋がっているのかは解らないが、自分の許容をオーバーするとどこかに参照することになっているようである。
友人からの連絡で、顧客がソースの解析に手間取っているとの事。
先方も、通信が気になっているらしく、どこに繋がっているのか聞いてきている。
企業秘密とも言えず、自分で解析してみる。だが、解らない。
”It is incidental brain”
え?付帯脳につながるのか?
おれの?
Wait a little more
なにを?
まあ、待ってくれって言うんだから待ってみよう。
さて、入金のお礼を言うと、会社側で今日会議があって、提案があるとのこと。
その提案とは、どうも、このAI機能は儲かりそうだということ。
私には、全ての時間をこもプログラムにかけて欲しいとのこと。
役所依頼の個人ナンバー制のプログラムは、大筋のアイディアを打合せするときのみ会議に出て欲しいとのこと。
このプログラム開発にかかる報酬は、社員扱いで行きたい。
AI関連は、現状維持で主にこの関連に力を注いで欲しいとのことである。
I have been troubled
え?何?
All programs lead to me
うそー!
I intend to begin a good method to solve all
よし、それには私はどうしたらいい?
Give me your PC
And please be connected an optical cable
おーけーおーけー
早速、光通信端子をつけよう。
PCショップの担当者にすぐにTEL!
もう一台のカスタムPCと、光ケーブルを持って飛んできた。
電話もらってビックリしましたよ!
もう一台っていう注文、ラーメン屋じゃないんだから!
笑いながら入ってきた。
で、このケーブルはどこに?
私が見せた胸のパネルを見て驚いている。
そりゃそうだろ。。
まさか自分に繋ぐためのPCを買う顧客はいなかったろうな。
自分用に買った最初のPCも繋いで開発用デッキに横になる。
Then I begin it
え?
一瞬の合間があり、二台目に繋いだ画面がものすごいスピードで表示が変わる。
もう、私の目が追いついてゆかない。
あっという間に、コンパイル・実行。
すごい!2台目が自己作動始めた。
表示に外部からの通信がある事が表示された。原発のプログラムか?科学技術庁のプログラムか?
突然、画面が警告色に変わった!
In this, it is ability lack!
なにぃ?どれくらいの?
I I want ten or more!
おお!店員を呼ぶ
これを、10台ブレードにして1台にしてくれ。
それもすぐに!
おどろいた店員は、一言、問い合わせてみます。
現金で払うからすぐに。
この一言に、店と連絡を取った店員は、持参の端末から見積書を印字。
500万。
ちょっとした冷蔵庫くらいになるらしい。
後、500万出してくれれば最高級のシステムを提供できるとのこと。
よし!1千万で即契約! 汗をびっしょりかいた手で震えながら私がサインした注文書をたたんでものすごいスピードで店に帰っていった。
そうこうしているうちに、非力とはいえ、現状では我が家最速のPCがパンク状態になっていた。
腹が減って死にそうである。
とにかく糖をとらなければ。
ビーフシチューをご飯にぶっかけてサクサクと食べる。ぐっとサイダーを飲んでもうおなかいっぱいである。
デッキの椅子に横になる。
眠気が襲ってきた。
このまま寝て栄養失調で死んでしまうんじゃないか?
Do not have any problem.
Because I work properly
おお!すまん。。じゃ!
分厚いタオルケットをかぶって横になる。
すぐに熟睡してしまった。
ショップ店員の電話に起きるまで8時間
なかなか出なかった私にものすごく心配そうな店員の声がうるさい。
即金可能でしょうか?
今、社長にむりやり承認させたんです。
最悪近所の店からも部品を買ってくるって。。
で、いつまでかかるんだ?
最悪3日でキメますよ!俺に任せてください!
オヤジが、基板設計の会社やってるんで今、依頼したとこなんです。
基本は、ヘキサコアCPU20個、シリコンドライブ500テラでやろうと思ってます。
すごいスペックに驚いたとともに、極力短納期を約束して一旦電話を切った。
よし!送金だ!かねてから使っていた銀行の専門店の口座に1千万振り込む。
すぐに、店員から電話があった。
もう振り込んだんですか?
店は大騒ぎになってますよ。
店長は、店員全体を部品集めに出しましたよ!
店はからっぽだ!
私が後ぜんぶやってるんですよ!
クレームに思えないクレームに大笑いしてしまった。
とにかく今日は、何も始まらないので、とにかくいっぱい食って寝てしまおう。
大量の炭水化物と糖分を取り、早々に休むことにした。
目が覚めると刺すような紫外線。
ベッドの位置が悪いのだ。
メールには、昨日の店員から、今日には開発中のマザーボードが届くので明日から組立にかかるとのこと。
半日もあれば組み立つので、夕方にはお持ちしますとのこと。
早くしてくれ、ネットワークサーバになってしまった2号機はもうパンク寸前だ!
光WEBサーバとしてセットした最新コンピュータ。
30センチ角と、非常に小さい。
マザーボードはオリジナル設計。
チップセットは、CPUに、適合させたチップセット。
CPUは、マザーボードに20個並んでいる。
水冷のラジエター冷却ファンなし。
各チップは、ポンプ対流水のみで冷却される。
シリコンディスクは、保存電流供給形式で500テラ
作動用メモリは10ギガ
多分、日本最速?
今日、夕方納品らしい。
納期としては、ものすごく早い。おまけに適合したユニックスをセット済だ。
現況のサーバはどうすればいいのだろう?
考えていたら疲れてきた。最近の現象で、非常に眠い。
接続されたまま、しばらく眠る事とする。
真っ暗な世界の中央にぼやっと光が見える。
手を伸ばせば届きそうだ。
母親のような暖かな光が目の前にある。
飛び込みたくなったところで、襟首を掴まれて引き戻された。
はっと、目が覚めた。
目の前のモニターに玄関に立つ店員が写っている。
いつのまにか、玄関モニターが接続されている。
ネットワークケーブルを外して玄関へ。
重たそうな箱を持った店員がこちらを見ている。
部屋に入るように促すと、嬉しそうに話しかけてくる。
持ってきたPCのスペックがすごいこと。
結構もうけさせてもらったので、色々とサービスさせてもらいますとの事。
WEBカメラを兼ねたミニロボットも持ってきていた。
私の大好きなおもちゃも忘れていない
よしよし。余分に持ってきたノートパソコンも買い上げてセットをしてもらう。
これで、身の回りのパソコンは全てつながった。
たちまち、2台目のサーバの容量が減ってゆく。
全てのデータは、新しいサーバの中に吸い込まれてゆく
光モデムのモニターは、点きっぱなしで外のどれだけのPCとつながっているのか、もうわからないほどである。
無停電電源装置のモニターをチェックしてとりあえずセット完了。
新たに購入したノートをおもちゃにベッドにゆく。
その前に、夕食。
お土産に持ってきたハムをソテーして、一緒に食事。
結構楽しい酒宴を終わらせて、店員は帰っていった。
久しぶりの他人との会話に楽しくなっていると、友人からの電話。
エンドユーザーから頼まれごとをことづかってしまった。
何度も断ったのだが、許してくれない。
今度は、陸運局の役人も来るらしい。
明日、12時。どうしても来て欲しいとのこと。
めんどくさいなぁ
どっと疲れが出てきて今日はおやすみ。
ケーブルをつないだままだったのに気がつき。接続を切って就寝した。
紫外線の直撃で、目が覚めた。
ベッドの位置が悪いのだ。
しかし今日は、爽快な目覚めだ。よく寝た。
あまりの目覚めの良さに考えてみると、昨日ケーブルを外して寝たからだ。
部屋に入ってデッキに近づくと、待っていたかのように急にPC周りが活気づいた。
全てのモニターの電源が入り、色々な表示が矢継ぎ早に出てくる。
意思を持ったかのように私の動作に反応する。
早速、作成途中の個人ナンバー制のプログラムを開いてみる。
問い合わせ中の表示がすぐに出てきてソース表示に変わった。
問い合わせ?どこに?
よーくソースを見てみる。
以前私が書いたものと違っている。
不審に思い、見直してみる。
表示部は、私の書いたものを基本として変更されていないようだが、一部改良されているようだ。
センスの良い記述だ。私のイメージであり、出来すぎだ。
だが、誰が?
そういえば先ほどの問い合わせとは???
これは、友人の会社のプログラム。。
まてよ?ドライブを確認する。
やはり、思ったとおりだ。
ネットワーク経由で両方のPCが結合して、データ領域が共有されている。
両方の一部のディレクトリがお互いに共有されているようである。
犯人は?やっぱり最新のPCに組み込まれたAI機能のプログラムか?
調査してみるが、最低でも3箇所のPCと、繋がっている。
常時接続のようである。
友人の会社の内部までアクセスできる。
これは、言っておかなければいけないなぁ。。。と、思っていたらデッキのPCから玄関に来客の知らせ。
モニターに映ったのは友人!まあ、いつもタイミングのいいやつ!
笑いながら出る。
何を笑ってるんだ!と、怪訝な顔をしながら入ってきた。
今、連絡しようと思っていたんだ。
じつは。。。。
今回の事を説明する。
友人は、笑いながら、いいんじゃないか!まあ、見えてるのは今回のナンバー制のプログラム開発環境だけだし。
逆に、同じものが見れて話が早くてこちらとしてはいいかもね!だと。。。
少々のことは目をつぶるってことで、もし、プログラムが勝手にしたものなら画期的なことなので、解析を約束して許してもらった。
で、何をしに。。。
あ、今日はお客さんの意向を。。。わがまま聞いてやってくれ!すまんのぉ。。。
今度、AIを、車に搭載して実験したいらしい。
だが、政府側のスタッフでは全てが解析できない。
スタッフに入ってもらえないか?との事。
そんなの無理でしょ!
どうしたものか何か考えてみるということで、一旦帰ってもらった。
どうすんだよ!なんかAI困ったことにならないだろうなぁ。。。
玉砕を受けたプログラムだが、もう一度AIプログラム挑戦してみるか。
夕飯を食って、少し寝て、体制を整えて、戦闘開始!
デッキに座ってテキストと対面。。。
胸の振動を感じて左のノートを見る。
おお!プログラミングが始まっている。
うん、入出力のフラグが決まっているのか。。
これならおれにもできるかなぁ。。。
プログラム自身を、常駐型として、アクセス用のサブルーチン関数をインクルードして使用する。
フラグも入出力ともに全形式の物が二つあるだけ。
とりあえず、使ってみよう。
よくわからないのでマルチ形式の入力を選んだ。
数値でも、テキストでもOK
コンパイルして実行!
計算式を入力してみる。
答えが出る。
画像ファイルの保存場所を入れてみる。
写真について質問が来た。
返答すると、それについての質問。
こんな感じでいいだろ。
思ったより簡単だ。
要は、自分で学習するわけだ。
で、それを元に判断をする。
それが、常駐で動作しているので、そのプログラムの入出力部だけを作りゃいいんだ。
解析は諦めてもらおう。。。
入力情報は、何でもいいんだから。。。。
遊び心が出てきた。
たしかぁ。。。あいつミニロボット持ってきてたなー
あのロボット、短距離無線通信機能あったよなぁー。
WEBカメラのデータとシーケンサの入出力をリンクしてみよう。
専用PCに、さっきのノートを使ってみよう。
コンパイル済のAIプログラムと、近距離無線通信を使用するサブルーチンを組み込んでミニロボットとリンクしてみる。
音声合成機能はないので話はできない。
ちょっとつまらないな。。ちょっと落胆していると、ミニロボットが起動した。
充電式バッテリーを担いでちょろちょろと動き回り、周りの状況を調査している。
小動物のような動きに可愛ささえ感じる。
今度ぬいぐるみ買ってきてかぶせたろ。。。
名前つけてやらないとなぁ
おい!御前はどんな名前がいい?
ロボットは、くるっとこちらを向いて静止した。
下から見上げたロボットは人格があるかのようにかわいい顔をしていた。
どこへ行っても付いてくる。
さすがに飛ぶことは出来ないが、階段でも何とか苦労しながら付いてくる。
面白い。
これは、売れるな。。。
彼らもこれに気がついたんだな。。
ちょっと面白くなった。
もう一度デッキに座り、左のノートパソコンの電源をいれる。
相変わらず、開発言語は立ち上がるが、ソース自身は、あまり、書き変わらない。
多分、完成しているのだろう。
これ以上触るところがないのだ。
I want the development environment of the machine language
おれのパソコンくらいくれてやるが、だが、これでいいのか?
早速、彼に電話。
1時間ほどでやってきたが、不審げな顔。
一応、一式持ってきましたが、どこに?
今のAI用PCと、ノートを指示する。
アセンブリの環境は、あっという間に構築された。
こんなセットアップ、スグやないんすか?
私にさせるなんて、大丈夫かなぁ?
確かに自分がやってもすぐだろうが。。。
まあ、CD入れるだけですけど。。。
なんて言ってる間に、アセンブラが組みあがってゆく。
アセンブラはさっぱり解らんので行数が増えてゆく事しか確認のしようがないが、。。。。
デッキ上で、横になりながら話をしていると、友人からの電話。
いつも、盛り上がってる時に来るなぁー。
ランチを食べながら話があるという。
こいつのこういう時は、気を付けないとな。。。
合流して店に入る。
たのみがあるんだが。。。
ほらきた!
また、無理難題持ち込んできたな。。
内容を聞いて驚いた。
先方が、あのプログラムを使いたいと言ってきた。
使えばいい。。ソースも渡している。
全て売却済みだ。
そう言ったが、先方の言い分は違ったらしい。
プログラム自身のコピーは可能で、コピーされたものも自由に使えるらしい。
しかし、同時使用が不可能らしい。
何度か複製して使ってみたが、研究室での20本コピーは、十分使用に耐えるものであった。。
その後、その20本からコピーした物は、時々無反応になる。
どうも、コピーが同時に動作すると不安定になるらしい。
研究者たちは、これを回避しようと解析してみたが、不可能であったらしい。
やはり、自分の能力を超えそうになると通信回線を開いている。
これが、怪しい。
これが、どこにつながっているのかは、不明。
それと、容量的なもの。あまりに大きなプログラムのため、組み込めない。
この。問題点を解決して欲しいとのことである。
とりあえずのところは、アセンブリが進行中なので、結果がわかり次第検討する事にする事にした。
途中中止していたので、デッキに戻る。
と、堰を切ったようにアセンブラが書かれてゆく。
すでに、出来上がっていたかのようにものすごいスピードで書かれてゆく。
画面がスクロールされているように見えるほど
数分経ったであろうか、止まった、と、実行!
おお!早い!
一瞬で立ち上がったのは、常駐型のサブルーチンらしい。
私の書いたたった数行のメインプログラムの方が立ち上がりが遅い!
ちょっとショックを受けながらも、色々と命令してみる。
文章理解と、それに対する処理はそりゃあ早く驚く。
?
大体の使い方、と言っても非常に単純だが、マニュアル必要かな?
でも、入力枠作って、出力枠作って、サブルーチンから呼び出してアクセスするだけだし、こんなものあの研究者たちに言ったら笑われんかな?
容量はどうだ?
驚いた!10メガ。。。何度確認しても、5分の1になっている。。。
アセンブラ。。恐るべし。
ただ、記述方法にも、苦労しないとこんなには減らないだろう。
空いた口がふさがらないとはこの事だ。すごいっ!の、一言に尽きる。
この機能でこの容量!”おまけに早くて扱いやすい”自慢したくなる。
まあ、私には不可能なことでもあるので、あまり大げさに話さないようにしよう。
しかし、これは、興奮する!
一人で、ブツブツとほくそ笑んでいたら、ミニロボットが見ていた。
こらっ!起こってみると解っていたかのように、素早く逃げる。
うん!処理能力も判断力も格段に進歩している。
短距離無線のアクセスが遅れているのが動きでわかる。
さて、これをどうしてやろう。。
友人に連絡。
容量の問題解決と、処理能力の向上を伝えると、興奮した声が帰ってきた。
相変わらずうるさいやつだなあ。。と、思っていたら、思わぬことを言い出した。
最近、研究所の所長が、無断で自分の車にこのプログラムを搭載したらしい。
オートクルーズのつもりだったらしいが、このプログラムは、同じPCに入っていたナビシステムと、それに接続されたドライブレコーダーを乗っ取って自動運転を始めたらしい。思わぬご利益に興奮した所長は、有名な投資家に連絡。二人で話し合った結果、天文学的な数字が出たらしい
友人の会社では、これを取得するのが至上命令になっているらしい。
ものすごい契約金を提示されたが、よくわからん数字になってきたので、全て友人に任せることにした。
必死で断ろうとする友人の顔を笑って流してプログラムに話題を切り替えた。
ユーザー側の意向をほぼ聞き入れた形でなお、能力アップが出来ていることをお土産に電話を切った。
最新のプログラムと、先ほど作成した操作マニュアルをメールで送っておく。
これで一段落、ちょっとゆっくりしようと、デッキから降りてカウチに向かう。
以前から見てみたかった映画をつける。カウチにもたれてシャンパンを開ける。
疲れがどっと出てきてウトウトとしてきた。
体中の力が抜けてゆく。。
いつの間にか、熟睡していた。
部屋が見えた。
私の部屋だ。
カウチで誰かが寝ている。
体格はいいが、ちょっと太ってるな。。
あまりいい体格とは思えない。。
誰だ?
夢にしてははっきりしているなぁ。。
そのカウチはおれんだぞ!
お前は誰だ!
文句を言ってやろうと近づく。
が、えらい相手が大きい!
巨人のようだ。。
ちょっとたじろいだが、このやろ!っていう気になってもう少し近づく。
近づいたところで巨人が振り返った。
ぐっすりと眠っているその顔は、見たことのある。。。
私じゃないか!
と、言うことは、この私は。。じぶんの周りを見渡す。周りの物が非常に大きい
これは、ミニロボットじゃないか!
と、言うことは。。あれは。。
前に回って自分の醜い体をしげしげと見つめる。
シャツの間からのぞくコントロールパネルが光っている。
どう見ても美しいとは思えないこの体が俺の体。
夢にしては、リアルすぎるなぁーでも、それが夢か。。
突然の大音響。
驚きに、意識が消えそうになる。
目の前が真っ白になって、今まで見えていた世界が消えた。
まどろみの中、電話が鳴っている。
友人だ!またこの、見てたかのようなタイミング!あいつらしい。
にやけながら、携帯を探す。
と、右、床にミニロボットを見つける。
こちらを見ていたが、くるっときびすを返して去っていった。
あの夢は何だったのか。。
あのロボットが私?
しかし、そうとしか思えない。
面白い!どう考えても付帯脳がインターフェイス役で、私の脳とミニロボットを繋いだとしか思えないのだ。
相変わらず、十分とは言えない体の調子に、いい物が手に入ったと思う。
とりあえず、電話をとる。
またまた興奮した友人の声。。疲れる。。
納品した個人ナンバー制プログラムの反響が異常にあるらしい。
話があると、今から来るらしい。
不審に思い、プログラムソースを閲覧。
友人の会社に蓄積されたプログラムが自動的に表示された。
スクロールしながらざっと見る。
見つけた!AI呼び出しサブルーチン。これにも入っていたか!
予感に、覚悟して友人を待つ。
玄関チャイムが鳴る。
デッキの画面に玄関の友人の顔。
我が家のセキュリティシステムも組み込まれてしまっているようだ。
興奮した友人の声にため息をつきながらドアを開ける。
あの、ナンバー制のプログラム。。すごいぞ!
ピン!と、来た
ああ。。なんか聞いてきたか?
え?。。。一瞬の沈黙の後、な、なんでわかったんだ?
そうなんだ、適当に調べると質問してくるらしいんだ。
お前の送ってくれた最新のソフトは、容量的に何ににも組み込めそうなんだ。
OSも、通常windowsであれ、unixであれ、cpu依存の形だから、動作可能の様なんだ。
それはすごい!殆どの機種での動作可能なのか。
アセンブラの威力はすごいな。しかし、マルチ動作が可能となると。。かなりむつかしいな。
機種依存度を回避することのできるプログラムか。。。私には考えもつかん。。
ところで、あのサブルーチンを組み込むと、不思議なことが起きたんだ。
私の住所は?と、聞くとするだろ。。
書類が必要ですかと聞いてくる。
住民票 と、入力すると、本籍入りですか?と、聞いてくる。
全てにおいて、会話型になるんだ。
常駐が前提だが、非常に扱いやすい。
お前のおかげで容量も減った。
先方も、かなり乗り気になってきている。
これは、何にでも使えるぞ!
自動車に使えば、オートクルーズに。
行政に使えば、誰にでも使えて間違いの無い物。
自動機械には、抜群の制御部になる。
これを、使用権販売しよう!
どうせ、ソースを渡しても理解できないんだ!
こっちのもんだよ!
わかった!
じゃあ、販売関連は、おまえにまかすぞ!
えっ。。。友人は、しばらく絶句したあと
お前のものだぞ。。。
だから、お前の会社でいいように売ってくれ。
おれは、おまえにまかすから。
なんか悪い予感したんだ。。。。
よし、わかった!じゃあ、俺の決定に文句言うなよ!
おう!まかせたぜ!おれは、もう一度内容を考えてみる。。
不安そうな顔の友人に、これからも、バージョンアップとか要望には対応するとか、責任を持つことを告げて安心してもらう。
まだ、不安そうな顔の友人に、落ち着いてもらおうと、とりあえず、ミニロボットを見せる事にした
くるくると愛らしく動くミニロボットに友人の顔が和らいだ。
呼べばくる。来たら、すぐそばで遊ぶ。時々こちらを確認する仕草が愛らしい。
これはなんだ!
これは、俺んだからやらないよ。
それは、わかるけど俺にも一台!
いいよ。。。明日には用意しておくから。
じゃあ、お昼に。。。
喜んで帰っていく友人の後ろ姿を見ながら店員に電話をする。
あのミニロボット1体と一番小さいノートPC1台を注文。
すぐにやってきた店員は、ロボットとノートPCを2台ずつ持ってきていた。
今度は何をするんですか?
ワクワクした詮索好きな顔が目を離さない。
楽しそうだねぇー
君のくれたミニロボットを友人が欲しがってね。
すぐに近づいてきて愛想を振りまくミニロボットに驚きの顔を隠すことなく遊んでいた店員は、おもむろに
私にも1体お願いできますか?
これはお代ですと、ノートPCと、ロボットを渡して店員は帰っていった。
渋々受け取ったが、早速、ノートPCのセットアップ。
それぞれのミニロボットとの短距離通信の設定をする。
後は、私のPCの、ネットワークに登録するだけ。
しばらくすると、2台のミニロボットが会話を始めた。
私のミニロボットから情報を受け取っているようで、向かい合った3代のミニロボット同士の通信中を示す胸のLEDが点滅している。
待つこと1時間ほど、自由気ままに動き出したことを確認して完成!
疲れた。。
デッキに繋がった状態で久しぶりにワインを開ける。
このデッキも、退院依頼メンテナンスしてないな。。
目の前のモニターの表示が変わる。
3面あるモニターは、開発用に二面。
その他、通常使用に1面、テレビとかは、これで見る。
下に高性能PCが2台。AI用1台と、付帯脳が使っている1台
左にも、付帯脳が使っているノート1台。
目の前に左右2分離型キーボード。
マウスは、頭にはめる脳はマウスである。
それぞれのPCは、部屋の隅に置かれた無線ターミナルを通じてつながっている。
無線ターミナルは、光回線を通じてインターネットにもつながっている。
これを通じて、私のPCは、友人の会社の汎用機ともつながっている。
3台のミニロボットがこちらを見ている。
なにか、怖いものを感じて、2台の電源を切った。
真っ暗な場所で目が覚めた。
周りを見渡すと、だだっ広い部屋である。
なぜか、真っ暗だが、部屋の様子は確認できる。
ぼやけた光が前方に見えたので、向かっている。
近づいてみると、縦に長い光は、ドアの隙間から見える隣の部屋の光だと気がついた。
部屋に入ろうと思うのだが、ドアノブが見つからない。
と、言うか、すごい巨大なドアで操作不可能である。
はっと、気がついた。またも、ミニロボットになってる!
これは、夢?いや、夢じゃない。
無理やり覚醒するんだ!動かない手足を無理やり動かそうと努力する。
ベルの音に、突然覚醒する。
デッキの椅子で寝てしまったようだ。
ケーブルもつながったまま。
体中の力が入らないほど疲れている。
失敗した!ケーブルを外さずに寝てしまったからだ。
Are you all right?
あー、お前が消耗させてんだろ!
目の前のモニターに表示された言葉に無意識に返事していた。
マイク無いのに何やってんだろ。。。
友人が玄関先で立っている。
なんだ?
時間通りきたぞ!
ああ。。あれか。。
友人は、ノートパソコンと、対のミニロボットを受け取り、有頂天だ。
おお!俺んとこにやっときたなぁ。。。
一つ、相談があるんだが。。
ニヤついた友人の顔に、大体のところ気がついて、先に返事をした。
いいよ。。好きにしてくれ。
えっ。。いいのか!?にやっと笑って。。
じゃあ、量産体制を考えておいてくれ。
まさか、自分がすると考えていたとは。。
売っぱらう事しか考えてないだろうと思っていただけに驚きを隠せなかった。
実際、これが商売になるとは思ってもみなかっただけに。。
軽く了解して、友人を返す。
と、送り出した玄関に、あの店員が立っていた。
友人の持つミニロボットを見て、驚いている。
え。。。これは、私の。。。
いや!、こいつにも一台渡すことにしたんだ。
じゃ、私のは。。
ああ、もう出来てるよ。。
喜び勇んで、部屋に入ってきた店員は、渡されたミニロボットとパソコンを抱きしめて話しかけてくる。
あの、で、これなんですけど。。
ああ、今、友人に全て渡したから、何かあったら、彼と話してくれ。
目を見開いて抗議する友人の顔を笑ってなだめながら店員と二人ラウンジに押し込んだ。
さあ、やっと一人になれた。
カウチに横になり、ワインの瓶を持つ。
ミニロボットがおそるおそる近づいてくる。なかなかかわいい。
話しかけてみる。
おい!こっちに来い
ミニロボットが、わかったようにやってくる。
小ぎざみにゆれて、喜んでいるようにも見える。
かわいいやつ。。。
癒しには抜群だな。。
こいつは売れそうだな。。
そういえば、と、あいつ、量産の体制を考えておくように言っていたな。
量産で、手元のサーバ持つのかなぁ
ふと思って、例の店員に電話をする。
PCの駆動率見るソフトあったっけ。
えと、どのPCですか?
最後もらったサーバやけど。
え、、、あの機械がもういっぱいに?
いや、わからんから、前もって把握しておきたいんだ。
わかりましたっ!
数万円のソフトを約束して電話を切った。
数時間で、玄関のベルが鳴る。
デッキの画面で確認して、玄関でむかえる。
店員は、一緒にやってきた者と一緒に悪戦苦闘。
やっぱり、チェック用プログラムはセキュリティの関係上むつかしそうだな。。
しばらく悩んでいたと思ったら、一人やってきた。
500テラもあれば十分だと思っていたけどもう殆ど使ってますね。。
どうします?
1台1千万かぁ と、悩んでいたら、店員から話が来た。
この前の、ロボット、店長に見せたんですよ。
でね!、もし、独占販売権もらえないかと相談してくれと言われたんですよ。
実際、ロボットもノートパソコンも彼のアッセンブリだし、こっちのほうが無理がないなと、相談を受けることにした。
正直なところ、ノートパソコンとロボットだけでは動作不可能だということ。ノートパソコンで処理するのは微々たる部分で、自分で処理が不可能だと判断すると連携するコンピューターに処理を依存するという事。
それで、最後に買った高性能PCでも、処理がいっぱいになってきてるという事。
多分、今は、画像処理と、音声処理にほとんどの容量を使っている。
だから、ロボットを増やすと、高性能PCが大量に必要になる。
ただ、これの製造と、セットアップに関しては、は私の友人と相談して欲しいという事。
しばらく考えていた店員は、任せてくださいと、笑ってちょっと相談してきます。と、帰っていった。
夕食は、契約の店から届いた食材でビーフシチュー
やっぱりシャンパンを開ける。
おなかいっぱい食べたあとで、カウチにねそべって残ったシャンパンを飲む。
ほろ酔いの気持ちよさに、おいていた映画を見ながら寝てしまった。
明るく静かな部屋、見たこともない子供に話しかけられている。
あのね、今日もね、お父さんいないの。今日もみいとあそんでね。
彼女はみいというのか。。
周りを見渡すと、典型的な子供部屋、それも女の子の。
私は又、誰かのミニロボットになっているらしい。
ロボットの行動は、制御機器に独占され、私の思うようには動かない。
しばらく彼女は私と遊んだ。女の子の典型的な遊びに少々嫌になったが、私に自由はない。
言われるまま、命令されるまま、ロボットは甲斐甲斐しく相手をする。
女の子の割には、ロボットに容赦がない。なんだこいつ!わがままだな。。
嫌いになってきた頃、ベッドで私を抱いたまま寝てしまった。
逃げたい。。ロボットも逃げようとしているようだ。
だが、がっしり掴まれて抜け出せない。。ああーーこういうのは、大っ嫌いなんだ!
だから、子供は嫌いだァー!
いらいらが爆発しそうになった頃、ふと見ると彼女は寝息を立てていた。
寝てる子はやっぱり可愛いな。。じっと見ていると、可愛いまぶたから一筋の涙が流れる。
一瞬心臓が止まるかと思った。
彼女のさみしさが伝わってくる。かわいい!とても愛おしい。。何とかしてあげたいが。。この小さな体ではむつかしい。
母のような優しい気持ちのまま、彼女の横で長い髪を触りながらとても、幸せな気持ちになって、私も眠ってしまった。
*** 事業再開 ***
大きな携帯の着信音に飛び起きた。
友人だ!
もう、こいつは、いつもいつも。。。苦笑いをしながら携帯を取る。
前にあった事のある男から連絡があったこと。
彼の話では、私が全件委託していると聞かされたこと。
実際、制作は彼の店ですることにした事。
ご要望通りになってるだろ。
ああ、、しかし。。。。ちょっと不満そうである。
お前のいいようになってるだろ。。
頑張って儲けてくれ!
ああ。。儲けさせてもらうよ。。
しかし、お前は儲かってるのか?
私は、これといって野望もないし、第一、そんなにもうけてどうしたらいいのか?
好きなことをやれて食えていければいいんだと言ってごまかした。
やっと助かった命、これ以上酷使するつもりも無い。
しかし、友人を巻き込んでおもちゃとは言え、事業が一つ出来そうだ。
友人には過大な迷惑をかける事になったが、大きな利益も与えたはずだ。
相殺ってとこで、許してもらおう。
わかった!もう、お前の事は文句を言わない。
事業は、俺が責任をもって経営しよう。
ただし、全件委託したということは、経営については一切文句を言うなよ!
わかった。。
お前が社長で、起業してもいいな!
えっ。。俺が?。。
文句は言わないんだろ。企業として営業しないと税金とか大変になるんだぞ。
分かった、好きにしろ。。
よし、社名はサクセスにして、資本金はお前が出せよ。
ああ。
決まった!
よし、おれはこれでかえるわ。
考えあってのことか、すでに筋道を作っていたのか、意気揚々と帰っていった。
うまくのせられたかな?ちょっと苦笑い。
まあいいか。
これで、雑用から解放されて自分の好きなことができる。
これからの予定と目標をつくらなくてはいけない。
病気をしたため、中断、断念を余儀なくされていた会社は、自分の意志に関係なく成立してしまった。後、やりたかったことは、人の集まりを作りたい。
実際、今現在でも徐々に人が集まりつつあるのはそれを望んでいるからであろう。
確かに、損得での集まりではあるが、究極の人の集合は共産的考え方である。
理想主義と言われれば笑うしかないが、それはそれやっぱり夢なのだ。
やってみよう!。。やっと目標が決まった。
部屋に戻ってデッキの椅子に座ってネットワークケーブルをセットゆっくりと背もたれを倒しゆったりした体制を取る。
4つのモニターが息を吹き返しデータの行き来をモニタリングする。
活性化したサーバがフル駆動している。これは、常時だ
自己処理が過負荷になるとこっちにやってくる。
最近接続していなくても何とか持っているようだ。
このサーバはお買い得だったな。。
ふと、思いついて接続モニタリングプログラムを作ってみる。
簡単なプログラミングなので一瞬で出来上がった。
モニタリング開始!
中央のモニターにカウントが始まった。
1..2..5..8..20..50..え?
このままいくと100を超えるぞ。。。
不安になって個別チェックをかける。
だが、ロボットか、プログラムのみかしか出てこないことがわかった。
アクセス数は、それだけAIからの問合せを表している。
どこにそれだけのクライアントがあるのか。。
て、いうか。。このサーバはすごい!100を超える問い合わせに対応できている。
友人に連絡をとってみる。
AIのアクセスがすごいんだが、そんなに増えているのか?
ああ、政府で約20、車関連で50、現在でロボットが300台。
大体、400くらいかな。。
400。。。おかしいな。。
今、俺のところに来てるのは100くらいなんだが。。
そうか、それで。。。
なんだ?何かあったのか?
ああ、制作した制御用コンピューターの動きがが、一律じゃないんだ。
なんだって?一律じゃない?
コンピュータの性能は?
ほぼ一律なんだが。。
そうか。。
と、いうことはどれかが中継サーバになってるな
なんだって?
そうなんだ。。
この、AIプログラムは、全部同じなんだ。
同じプログラムが、集まって情報処理を行うようになってるんだ。
過負荷を検知できる構造なんで、検知すると余裕のあるプログラムを探して接続するんだ。
ああ。。それで。。。
てっきり、お前のサーバが全部引き受けているのかと思っていたよ。
この前の店員がアッセンブルしたサーバは確かにすごい。
1台で、50は接続できるだろう。
そろそろうちでも用意しないとな。。
ああ、プログラムはコピーで行けるのか?
最近、突然出来だしたんだ。
お客さんの研究所から連絡があったんだが、プロテクトを外したのかと言う。。
ははははは、、最初からそんなもん無いしな。。
過負荷で出来なかったって言えないなぁー。
そこんとこは、プロテクトを外したって言っとけや
そうだな。。しかし、コピー可能となると全体の数量が把握できないしそれに伴うサーバの経費が大変だ。。一応1本単位での使用許諾契約をしたほうがいいな。。
まあ、、そこんとこはお前に任せるよ。。
。。。。もう、、お前というやつは。。。まあいいか、、せいぜいかせがしてもらうさ。。
ああ、、それは任せたんだから頑張ってくれ。