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気づいた時には、もう

作者:

もし、この私が『恋をしていた』というのならば。まさしく、あの感情を言うのだろう。


今は、素直に二人の幸せを願えるけれど。そう思えるまでに2年の歳月を費やした。



あの時まで、恋愛に興味などなかった。恋愛にうつつを抜かす暇があるなら、部活や勉強に勤しみたい。今振り返ると、まったく女子高生らしからぬ考えをしていたものだと思う。いや、部活や勉強というのも語弊がある。私はいわゆる『オタク』と呼ばれる人種だったから、漫画やアニメなどのサブカルチャーが大好きだった。


恋愛話が嫌いな訳ではなかったが、集まるにつけ「誰か好きな人いる?」だとか好きな人なんていないと言っても「えー、うそ!ほら、気になる人ならいるでしょ?」と絡んでくる奴があまり好きではなかった。当時の私は、嘘ではなく、本当に全く興味がなかったのだ。どれくらい興味がなかったかというと、クラスの男子の顔と名前が5人しか一致しないレベルだ。あとは通行人、もしくはモブAぐらいの認識だった。


その認識が変わったのは、高2の時だった。同じ趣味の男子生徒。それだけなら今までとなんら変わりはなかったが、なぜかそれが私の中のなにかに触れたのだ。

今まで普通に話せていたのに、なぜかある時から目を合わせて会話できなくなったり。でも緊張してるなんて思われたくないから、できるだけ元気な口調で話すよう心がけたり。

大勢の中で楽しそうにしているのを見て、私も話しかけたいなあと思ったり。二人になるとなぜか居心地悪くなってしまうけれど、それ以上に嬉しさを感じてしまったり。

馬鹿な私は、その感情を『恋愛』と名付けてしまうことに恥ずかしさを感じてしまい、その気持ちと向き合うのを避けた。蓋をした。こんな趣味だったから、素直に『恋』だなんて認められなかった。

この感情に名前なんていらない。別にそんなのなくて問題なんてない。他愛ないメールのやり取りが続くのが楽しかった。ずっとこのまま。そう思っていた。




ある日、教室で大勢に囲まれているその男子生徒を見て、なぜだか私は胸騒ぎがした。いつもと変わらないはずなのに、しかしなにかが違う。ああ、いや。気づいていた。気づかないふりをしていたかった。

彼女ができた。それを笑顔で話す彼は、とても嬉しそうだった。私はそれを「リア充爆発しろ!」なんて言葉を送って、笑った。周りのみんなも、似たような言葉を言っていたと思う。しかし、そのあとは祝福の言葉を送っていた。私も、言わなければと思った。しかし、結局言えずじまいだった。

なぜだかとてもショックだった。彼とそこそこ仲のいい自覚はあったから、せめて教えてほしかった。いや違う。本当は。


そこでようやく、私はこの思いが『恋』であると認めようと思った。祝福の言葉を送れなかったのも、私が、彼に恋をしていたからだ。彼が幸せであれとは願えるけれど、「彼女と」幸せにとは素直に願うことはできなかった。



せめて、もっと早くこの思いに向き合っていたならば。なにか変わったのだろうか。

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