ep7 昇太の過去 前編
今回は、昇太の過去についての話になります。
退屈な回になるかもしれませんが、後々の原作キャラとの
会話に絡んでくるので、できればご覧ください。
昇太「少し長くなります。それに面白い話じゃないですよ。死んだ人の話ですから。」
晴子「かまへん。うち、少し気になってもうたんや。
アンタがあまりにもあっさり話すから。イヤやったら別にええで。」
往人「俺も少し気になるな。同じ旅人として。」
昇太「いや、大丈夫ですよ。」こうして、俺は話し始めた。
昇太「俺の家は、いわゆる一般家庭でした。貧しくも無く、裕福でもなく。
ただ、親父の仕事が異常に忙しかったんです。
しかも、親父は自分を責めるタイプの人でした。
めずらしく、家にいる時もあまり喋らなかったんです。
お袋は優しい人で、親父が自分を責めている時も
励ましていることが多かったです。
そんな二人だったからすぐに結婚したんだとと思います。」
ここで、一度話を切る。
昇太「そうして、しばらくして俺が生まれました。
でも仕事でほとんど家にいなかった親父は
幼い俺の記憶にはいなかったんです。
俺は成長していくうちに親父似の顔になっていきました。
親父はそんな俺を見て、俺のことを『自分の子供』ではなく、
『自分の分身』と考えるようになりました。
自分に厳しかった親父は俺にも同じように厳しくなっていきました。
家にいるといきはひたすら、勉強しろだの体を動かせだの、
好き嫌いはするなだの。俺の相手をしてくれたことも無いくせに。
でも、それだけならよかった。お袋は愛情の裏返しだと言ってたし、
俺もそう思っていました。」
また、話をきる。
昇太「だけど、俺が9歳のとき妹が生まれた。親父は妹を溺愛してました。
俺から見てもかわいかったのは確かだけど、
親父は異常にかわいがっていました。
親父はただでさえ家にいる時間が短いのに、妹をかわいがるのに夢中で、
俺に無関心になりました。
お袋も俺と違って、特に厳しくしていない妹の子育てで手一杯でした。
俺は家で一人になりました。妹に嫉妬したこともあったけど、
無意味だってわかってました。
でも、悔しかったから少しだけ反抗してみたんです。
『これからは飯は一人で作って一人で食うよ。母さん、忙しいだろ?』
本気じゃなかった。これを聞いて少しでも俺に関心を持ってくれればと
思っただけだったんです。
だけど、お袋は『昇太、本当にいいの?助かるわ。』こう言いました。
今更あとに引けなくて、自分で飯を作って食うことにした。
飯を食いながら、三人で楽しそうに喋っているのを見て思ったんです。
ああ、俺がいなくてもこの家は普通に生活していくんだなって。」
往人と晴子さんはなんとも言えない顔をしていた。
でも、俺はかまわず続けた。
昇太「あの日以来、俺は家族を捨てた。自分のことは全て自分でするようにしました。
家族とは、なるべく干渉しないように、友達と遊びに行ったり
一人で出かけたりしました。だけど、あの日から5年後、
三人が死んだ日が来た。その日は朝からおかしかった。
親父が朝から家にいたし、俺に話しかけて来たんです。
『今日は遊園地に行くぞ。』
耳を疑いました。5年間、いや、妹が生まれてからの6年間。
そんな場所に行ったことは一度も無かったんです。
最初は普通に断ってました。でも、その日の親父はしつこかった。
その時点でイラついてたけれど、まだ我慢できた。
だから、聞いてみたんです。どうして遊園地に行くのか。
そうしたら、親父はこう言った。
『優が家族写真を撮りたいって言うんだ。』
その、言葉が俺には我慢できなかった。
俺には何もしてこなかった親父の言葉が。
だから、俺は・・・。」
次回は昇太の回想となります。
次回で過去の話も終わるので、安心してください。
感想お待ちしています。