二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

六十六

　草木も眠る丑三つ時

　屋敷の雨戸が静かに外され、手に小さき提灯を持った者が部屋へと侵入してきた。

　はたしてそこには、布団に包まった豚さんの頭が見えている。

「悪いけど」

　こう一言だけ吐いた賊、続けて懐より小刀を取り出した――その時

　何と豚がいきなり起き上がり、それも二本足で？

「この下手人めえ！」

　こうほざいた豚、おまけに刀まで構えている。

「な、な……」

　そら驚く賊。無論相手は、頭に豚の被り物を付けているだけだが。