二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

十八

「ん？　襟がほころびてるじゃないかい？」

　そしておまけに、袖あたりには

「醤油の染みだってえ？」

　薄紫色の着物ゆえ、余計に目立っている。

　そしてそこに近寄り

「こりゃ取れないねえ。はあー、お気に入りだったのに」

　そう腐りながら、今度は鏡に顔を映している。

「いくら仲間内だからと言ってもねえ、最低の身だしなみだけは」

　しかし

「ク、クマまでこしらえて！　こんな顔、旦那に見られでもしたら……あらら、私としたら何という事を」