865/3502
第十六話 白雪は知っている 一
草木も眠る、まさに丑三つ時。川原では背の高き草々が、折からの強風により横から煽られている。
だがよく見ると、その一ヵ所だけは他とは動きが異なっているが?
「この辺りでいいかな」
その者、むしろにくるんだ物をそこに落ち着かせ、その両手を胸に刺さったままの小刀に添え
「成仏しろよな」
そう言ってすぐに、己も両手を合わせた。
そして、その場を後にしたのだが――その一部始終を、二つのつぶらな瞳が見ていたのは知らない。
*仁木悦子「猫は知っている」への、ほんの1%のオマージュ