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六十四

 これに一瞬だけ眉をひそめた相手だったが、すぐに


「そいつは何よりだ!」


 だが三つ葉が悲しげな顔をし


「でね、月の輪が言うには……襲った相手の顔を見たんだって」


「そ、そうですかい……それをわざわざ言いに、ここまで?」


「そうなんだ。でね、そいつの名なんだけど」


 この時、咄嗟に床より跳ね上がったムササビ。すぐさま、小刀を三つ葉の首筋に当て


「フッフッフ……あんたって、心底親切者だねえ。まあ、頭に馬鹿がつくけどな」


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