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六十
一方、こちらの蕾は森の中。
木から木へと飛び移っていると、突然その視野が広がり
「むむ?」
そして、その先には
「あれが、お主だ家ですねえ!」
うろ覚えも甚だしい。無論、小前田家だ。および婆様の忠告なども、すっかり忘れている。
やがて、家の前までやってきたところ
「正面からはなあ」
そこは忍び、屋根までひらりと飛び移って――と、そこに急いでやってきた緑丸、さすがに大声を出すのはまずいと口に手を当て
「ヒューヒュー」
「緑丸ってば? 何か良い薬ないかなあ?」
「伊賀秘伝のがありまつよ」
「それ、所望します」
「はい、これでつ。水もどうぞ」
「さすが神童、気が利くなあ……ゴックン」
「そのうちに、お通じも良くなりまつよ」
「そら万々歳………………って、誰が便秘やねん(泣)」