二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

二十九

「さっき浜辺でお爺さんを見かけたんでつが……この島には何軒ばかしが住んでおられまつ？」

「この和井田（わいだ）家の他には、小前田（おまえだ）家だけで」

　だが、ここにお滝さんが継ぎ足してき

「口に出すのも憚（はばか）りますけどね」

「憚る？　あ、仲が悪いんでつか。だからお爺さんも嫌な顔をしたんでつね」

「ああ、弥太爺のことねえ……何しろ、この私が嫁いできた時から犬猿の仲だったんで」

「狭い島なのに窮屈でつね」

　そこに

「小僧。窮屈でも何でもないぞ」