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五十六

「ギョッ!」

 奇声を上げた探り屋


「びっくりしました。私、てっきりお三枝様の影だとばかり」


「はあ? さっき紹介を受けたじゃないですか、婿養子の又夫だって。そういう貴方も、父上の名を一文字取ったって言ってましたよね?」


「ん?」

 一瞬だけ考え込んだ氷助だったが


「あ、確かに言いました。とんと記憶に残らず、すみませんでした」


「もう、しっかり……」


 だが、これに主がキッパリと


「忘れ去られる、おまえこそが悪いのじゃ!」



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