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第四十話 女王蝉 一
ここは、いつもの橋のたもと。
「ジージー、ジージーって、蝉も今が真っ盛りですねえ」
近くの木々に目をやってる冷奴姐さん。
隣の破近も、つられるように顔を向け
「あら油蝉でんな。油を炒めてる時みたいな鳴き声ですさかい」
「あらま、そうなんですかい。それにしたって、はかなき命ですよねえ」
「とはいっても、それは土ん中から出てきてからの話ですわな」
これに姐さん、額に光る汗を拭いながら
「確か、何年も暮らしてるとか?」
*横溝正史「女王蜂」への、ほんの1%のオマージュ